「鰯」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「鰯」について
【表記】鰯
【読み方】いわし
【ローマ字読み】iwashi
子季語・関連季語・傍題・類語など
・鰯引(いわしひき:iwashihiki)
・鰯船(いわしぶね:iwashibune)
・鰯見(いわしみ:iwashimi)
・真鰯(まいわし:maiwashi)
・秋鰯(あきいわし:akiiwashi)
・鰯売(いわしうり:iwashiuri)
・鰯干す(いわしほす:iwashihosu)
・鰮(いわし:iwashi_)
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季節による分類
・「い」で始まる秋の季語
・「秋の動物」を表す季語
・「三秋」に分類される季語
月ごとの分類
鰯を含む俳句例
陽炎に干鰯や宿はづれ/巴流
壁の蔦隣は鰯たく香哉/成美
小鰯や一口茄子藤の門/其角
松原に富士置く浦や鰯引/迷堂
掬ひ出す船の鰯の無尽蔵/暮石
西日して薄紫の干鰯/杉田久女
鰯やく煙とおもへ軒の煤/犀星
此浦の人ありたけか鰯引/寫妙
道端で乾く鰯か弟か/坪内稔典
江の島の灯の早き鰯引く/秋を
太りたる鰯々の曲りかな/篠原
旗を振る浜の槽や鰯引/野田道三
鐘楼に犬出て鰯引きはじむ/計次
椿咲き干鰯の上の鳥威し/瀧春一
捨鰯浜に夕日の裏日本/大野林火
この後は五風十雨と鰯引/上村占
としの夜の鰤や鰯や三の膳/去来
一本の鰆提げ立つ鰯舟/後藤夜半
三銭の鰯包むや竹の皮/正岡子規
飯時をねらふてくるや鰯船/呼丁
俳句例:21句目~
水揚の声それだけか鰯売/薫松/
路地裏に昔の佃鰯干す/秋山花笠
買初の持ち重りして浜鰯/堤京子
舟宿に鰯さしたる夕哉/松瀬青々
看板は鰯のように酔う娘/仁平勝
麦秋や子を負ひながら鰯売/一茶
鰯汲む夜は妻子も脛ぬらす/鬼房
鰯網鰯の中の小鯛かな/正岡子規
鰯網陸近づけば潮騒ぐ/高浜虚子
鰯引く人鳶舞ふ浦日和/浜田波静
いわし寄る波の赤さや海の月/桃首
交りたる鯖の紫鰯汲む/前島たてき
八方に鰯が立って秋の道/坪内稔典
残してや家路を急ぐ鰯売/藤野古白
甲板に鰯干したり島通ひ/松藤夏山
鰯干す風に磯の香綯ひまぜて/鍛治
国引きし神神の裔鰯引く/丸山/遥
鰯干す日に秋あつき浜鴉/石原舟月
鰯干す宮も藁屋も温かし/前田普羅
鰯ひく親船子船夕やけぬ/石田波郷
俳句例:41句目~
夕焼や鰯の網に人だかり/正岡子規
夕膳に鰯の煮つけや冬籠/小澤碧童
海光の一村鰯干しにけり/日野草城
海光をあつめて糶の鰯樽/渡辺恭子
鰯の海赭く天皇立ち給ふ/萩原麦草
大漁旗鰯の山のてっぺんに/森田峠
曳き聲に鴉翔たせぬ鰯網/石塚友二
海猫憑くは漁良き證鰯網/井尾望東
鰯食ふほつほつ城下灯をともし/旭
妻は渦潤目鰯を擂りつづけ/小田亨
東西に砂丘冷たき鰯曳/百合山羽公
婿倅来たりや卒爾の鰯鮓/岩木躑躅
鰯群来舟下三寸ひかり過ぐ/川北豊
松原の松のちいさし鰯引/松藤夏山
小豆粥鰯肴のせちぶかな/玉越琅々
柊に鰯の頭留守らしき/佐々木六戈
白砂青松磯に群がる鰯引/寺田寅彦
九十九里に女と生れ鰯引/丸島弓人
鰯船火の粉散らして闇すすむ/誓子
鰯来る一村羽根を突きやめし/麦草
俳句例:61句目~
鰯来ると声ゆき渡る浦々に/原柯城
鰯来て濃紺膨る湾の沖/殿村莵絲子
鰯引く親船子船夕やけぬ/石田波郷
男らは沖に女らは鰯干す/下村梅子
離島には離島の歴史鰯引/山内一甫
年神に小さき鰯過疎盆地/稲垣陶石
戻りくる波より低き鰯舟/堀本婦美
田を追はれきし雀らに鰯干す/森田峠
秋晴やあをき鰯の一夜干/竹森登美恵
秋風や炭になりゆく鰯の尾/三橋敏雄
うつくしや鰯の肌の濃さ淡さ/政二郎
糶市へ運ぶ鰯の跳ね止まず/名倉花子
網あけて鰯ちらばる浜辺哉/正岡子規
すずしさや折つて見せたる生鰯/臥高
蜑の家は砦構へに鰯干す/鈴鹿野風呂
たて横にこぼれ鰯の漂へる/松藤夏山
海荒れて膳に上るは鰯かな/高濱虚子
誕生日安き鰯を買ひにけり/鈴木花蓑
ぶちまけし鰯の渦や雁渡し/橋本榮治
雪催ふ巷ゆ干鰯得てかへる/石塚友二
俳句例:81句目~
骨に指添はせて捌く鰯かな/赤澤新子
鰯売る坂逆光に照り出さる/巌谷小波
鰯干す下にいちにち猫眠る/松本敦子
鰯引き見て居るわれや影法師/原石鼎
一ト塩の鰯焼きけり十三夜/野村喜舟
一合を愉しむ潤目鰯かな/山崎ひさを
鰯引千鳥も飛んで九十九里/松藤夏山
鰯汲む隣の舟の灯を借りて/明石八重
鰯漁すみて瓦を焼きはじむ/水谷晴光
月が出て足もと明し鰯引く/足立堂村
鰯焼く妻と云ふ名の五十年/武田光子
冷やかに鰯浦りたる網洗ふ/萩原麦草
鰯網の上や鴎の群れて飛ぶ/野田道三
口の中汚れきつたり鰯喰ふ/草間時彦
鰯網船かたむけて敷き競へり/原石鼎
鰯舟祭具浄むる波に着く/米沢吾亦紅
夕市にその日の鰯樽で着く/北澤瑞史
鰯買ふポセイドンてふ屋に/吉村玲子
鰯食ふ大いに皿をよごしては/林之助
鰯焼いて吾を励ます女かな/岸本尚毅