「稲刈」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「稲刈」について
【表記】稲刈
【読み方】いねかり
【ローマ字読み】inekari
子季語・関連季語・傍題・類語など
・秋師(あきし:akishi)
・秋女(あきおんな:akionna)
・刈稲(かりいね:kariine)
・田刈(たかり:takari)
・小田刈る(おだかる:odakaru)
・秋田刈る(あきたかる:akitakaru)
・夜田刈(よるたかり:yorutakari)
・収穫(とりいれ:toriire)
・稲車(いねぐるま:ineguruma)
・稲積む(いねつむ:inetsumu)
・稲舟(いなぶね:inabune)
・刈上の節供(かりあげのせっく:kariagenosekku)
・刈上餅(かりあげもち:kariagemoch)
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季節による分類
・「い」で始まる秋の季語
・「秋の生活」を表す季語
・「晩秋」に分類される季語
月ごとの分類
稲刈を含む俳句例
一むらの刈安に声稲雀/飴山實
片岡の萩や刈ほす稲の端/猿雖
里々の田刈祝ふや猿廻し/杉風
稲車前後月光匂はしむ/近藤一鴻
秋の田の刈穂の庵は米屋哉/之也
立山に初雪降れり稲を刈る/普羅
騒音は稲を刈る音峡部落/関秀子
水揺れて来て稲舟の現るゝ/耿陽
誰かいま押せる気配や稲車/駝王
南に海八月の稲を刈る/岡井省二
稲車積み終る頃来る女/高野素十
秋の田を刈るや白鷺人に近く/青邨
尼寺を裸に稲を刈り終る/右城暮石
瓦窯一日休み稲を刈る/中戸川朝人
稲舟の沈まんばかり漕ぎ来る/孤山
秋の田の刈りつめられし鶉哉/夕桜
千刈の田をかへすなり難波人/一鷺
刈かけし田面ラの鶴や里の秋/芭蕉
玄武洞前を稲舟下りつゝ/京極杞陽
刈干しの晩稲吹立つ山颪/大熊輝一
俳句例:21句目~
街中の須磨国道を稲車/五十嵐播水
蚯蚓死す野に傾けて稲車/古館曹人
国道を無事横切りし稲車/甘中房恵
蛇多き山田の稲や刈らである/虚子
墓原のまはり音なく稲を刈る/白虹
稲車娘に綱を曳かせつゝ/大谷句佛
藺田刈て水鶏に遠き寝覚かな/蓼太
女出て山田の稲を刈りゐたり/綾子
蒼き喰ひ晩稲を刈りにゆく/本宮哲郎
田隣へ早稲刈るじぎの日和かな/正秀
芦刈の鎌もて田舟引寄する/稲荷島人
三株はや手握りあへぬ稲を刈る/篠原
谷川岳霧立ちのぼる裾田刈/西村公鳳
鎌一丁身一つ老の稲を刈る/鈴木定代
高稲架に刈田と湖と水平ら/高濱年尾
すれちがひ月光こぼす稲車/近藤一鴻
冠雪の白山なりき稲を刈る/中西舗土
田舟ひきわかれ~に稲を刈る/坂田勇
菅刈つて沼風広く渡りけり/稲畑汀子
水走る鳰に稲舟はや遠し/五十嵐播水
俳句例:41句目~
温泉の町の朝灯りをり稲車/原田青児
刈稲に降り沁む音に目ざめをり/篠原
湖沿ひの闇路となりぬ稲車/飯田蛇笏
稲束を投げし宙より跳ぶ蝗/鷹野清子
稲束を抱き学童に声をかけ/西村和子
稲舟が芋煮帰りを拾ひゆく/細谷鳩舎
稲舟に棹とり馴れぬ女かな/正岡子規
夕空に身を倒し刈る晩稲かな/零余子
稲舟のくゞりし橋を稲車/天野微苦笑
稲を刈る音思ひ出のなかにあり/龍太
稲舟のごとんと音す鵙高音/高野素十
稲舟の浪に逆らふ音のして/京極杞陽
稲舟の通りしころの稲の露/木村蕪城
稲舟をしりへに緩く上総線/石塚友二
稲車世捨小路にさしかかり/藺草慶子
山田とて稲を刈り干す岩多し/秋櫻子
稲車押すこと厭きてぶらさがる/蓼汀
稲車老もきほひて従帰る/阿波野青畝
積みかけて雨に濡れをり稲車/岩本章
我は少年刈穂の稲の夕闇に/高柳重信
俳句例:61句目~
紗のごとき霧の月代稲車/柴田白葉女
老醜のすがりきつたる稲車/杉山岳陽
茎赤き草のまじれる晩稲束/大熊輝一
隠し田を刈るや日曜農夫婦/皆川白陀
日本海流るる音の稲を刈る/中島双風
時忠の墓守稲を刈りゐたり/井上玉枝
夜田刈や行灯をおく庵の前/松瀬青々
月山を空に祀りて稲を刈る/鈴木太郎
木賊刈終へしより庭一巡り/稲畑汀子
萩を刈る働く五人見る二人/稲畑汀子
山陰の田植見まふや藻刈舟/立花北枝
さっぱりと晩稲も刈られ残る畦/及川貞
稲舟も舟唄も失せ雪しまく/文挾夫佐恵
稲舟や夫婦の棹のよく揃ふ/鈴鹿野風呂
夕づけば帆のごと日浴ぶ稲車/大熊輝一
稲車畦のあをくさにじり出づ/原田種茅
浮塵子出て一枚の田を早刈す/粟賀風因
倒伏の稲に顔入れ刈りいそぐ/西本一都
刈りし芝梅雨に又伸び放題に/稲畑汀子
刈りどきの稲や畷を猫歩く/猪俣千代子
俳句例:81句目~
刈る程に山風のたつ晩稲かな/飯田蛇笏
刈る稲のしめり夕づく日に増しぬ/篠原
稲舟に童もまこと棹させり/米沢吾亦紅
道問へばこの稲舟に乗れといふ/泉浄宝
稲車うしろさらさら穂ずれの妻/草田男
稲車三瓶山のぞめる坂へ出づ/宮津昭彦
噴煙の低くながるる黍を刈る/稲島帚木
大利根の夕日に稲を刈り急ぐ/山田弘子
太陽は十燭だ稲を刈る俺に/山本仁太郎
栴檀に結ぶ稲舟きまりをり/中戸川朝人
稲舟の棹さしつらね十二橋/鈴鹿野風呂
姨捨に晩稲を刈りて畳みおく/古舘曹人
孕れば腰立て勝ちに稲を刈る/福田紀伊
子を乗せて均衡とれし稲車/在間さとる
山脈に何か光りし稲を刈る/百合山羽公
嵐の跡深田の稲を刈りてをる/滝井孝作
稲車押し青空についてゆく/大木あまり
嫁むすめ袖入替えて田刈かた/水田正秀
夜田刈の一燈見ゆる湖尻かな/近藤一鴻
草のごと凶作の稲つかみ刈る/山口青邨