「稲」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「稲」について
【表記】稲
【読み方】いね
【ローマ字読み】ine
子季語・関連季語・傍題・類語など
・稲田(いなだ:inada_)
・稲穂(いなほ:inaho)
・粳稲(うるしね:urushine)
・うるち(うるち:uruchi)
・うるし(うるし:urushi)
・糯稲(もちいね:mochiine)
・もちごめ(もちごめ:mochigome)
・もち(もち:mochi)
・かばしこ(かばしこ:kabashiko)
・麝香米(じゃこうまい:jakomai)
・陸穂(おかぼ:okabo)
・はるもの(はるもの:harumono)
・のごめ(のごめ:nogome)
・こびといね(こびといね:kobitoine)
・しね(しね:shine)
・田の実(たのみ:tanomi)
・水影草(みずかげぐさ:mizukagegusa)
・富草(とみくさ:tomikusa)
・すめらみぐさ(すめらみぐさ:sumeramigusa)
・たみのはぐさ(たみのはぐさ:taminohagusa)
・稲の秋(いねのあき:inenoaki)
・稲の波(いねのなみ:inenonami)
・稲の秀(いねのほ:inenoho)
・稲葉(いなば:inaba)
・八束穂(やつかほ:yatsukaho)
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季節による分類
・「い」で始まる秋の季語
・「秋の植物」を表す季語
・「三秋」に分類される季語
月ごとの分類
稲を含む俳句例
稲こす水に祠浮きたつ/山店
稲の波はる~と来て枕元/梅室
隅々や稲虫除の護符/寺田寅彦
稲茎に青草のこす冬田哉/宗因
水流に青草浸り稲の秋/林順子
稲太る月夜の手足盆踊/飴山實
稲の香や月改まる病心地/漱石
悉く稲倒れ伏す野分哉/寺田寅彦
国東の二十八谷稲の秋/豊東蘇人
雨雲の夕栄すなり稲筵/子規句集
稲の熱月山空に坐りけり/上村占
稲淵の梟よ日の柞山/藤田あけ烏
城見えて朝日に嬉し稲の中/支考
家高低稲段々に山の裾/正岡子規
稲馬のつゞいて帰る夕かな/篠原
美しき稲の穂波の朝日かな/路通
山四方中を十里の稲莚/夏目漱石
稲主に啄をかくすや小田の雁/毛
稲分けて鶏探す夕かな/福田把栗
稲の丈引ずりながら舁にけり/篠原
俳句例:21句目~
稲の香や束ねて落つる水の音/蓼太
神松や稲も荒穂の冬日和/上島鬼貫
株間四寸畝間一尺豊の稲/西本一都
建ちてまだ住まぬ一棟稲の秋/草城
稲の葉や風左右裏おもて/尾崎紅葉
水門の閉ぢ季稲の水濁す/石川桂郎
豊稲や大黒さまの道祖神/西本一都
蜷のゐる上を流れて稲埃/岸本尚毅
犬の尾に稲が実るぞ弟よ/夏石番矢
大演習出水の稲を踏渡り/増田龍雨
稲の穂や南に凌雲閣低し/子規句集
青立の稲に眼を慣らしけり/斎藤玄
中学生朝の眼鏡の稲に澄み/草田男
翳もなみ耳成山は稲の中/佐野良太
犬連れて稲見に出れば露の玉/鬼貫
稲の穂の胎蔵界は雨の中/角川春樹
稲そして山美しき出羽の国/森澄雄
稲秋や近江は恒の三上山/尾崎迷堂
稲熟れて深大寺道牛臭き/西村公鳳
後朝や袖に飛付く稲の虫/寺田寅彦
俳句例:41句目~
里人は稲に歌詠む都かな/松尾芭蕉
酒になり餅になる稲の穂並哉/呉逸
上気多の段々畑の稲の株/高澤良一
持ち直す稲に雷三日かな/太田土男
稲の秋命拾ふて戻りけり/正岡子規
人買に蝦夷路の秋の稲すゞめ/麦南
短足の胴長稲の束かつぐ/今瀬剛一
稲塚の戸塚につゞく田守かな/其角
稲塚の影おどろ並む衣川/松村蒼石
本合海渡しの向う稲の海/高澤良一
秋晴や蔵持つ農家稲の中/大谷句佛
稲の香や鉄鍋に煮る芭蕉絲/沢木欣一
けふの菊中稲の飯のうまみかな/才麿
海にそふ北に山なし稲百里/立花北枝
渋柿の下に稲こく夫婦かな/夏目漱石
稲の葉の青かりしより案山子哉/月渓
鳥威あらたに土佐の二番稲/西川雅文
音楽は終りぬ稲を見にゆかん/原田喬
それぞれの聲稲の露芋の露/田中裕明
それ程に稲もあらさぬ螽かな/牧/童
俳句例:61句目~
露冷や谷戸へ絞りて風の稲/石川桂郎
霍乱を起して倒る稲あらん/高澤良一
霊棚の稲も大豆も色づきて/高野素十
稲の香は大き安らぎ豊の秋/山下美典
ジパングは黄金の国稲稔る/佐藤知敏
陰々と男ばかりの稲じまひ/平畑静塔
青き穂に千鳥啼くなりひつぢ稲/史邦
稲の香の満るを今宵月の雲/松岡青蘿
稲の香のねざめて近し五位の声/暁台
道道の稲の出来見て山の湯ヘ/上村占
低山も雲居て伊豆の稲の雨/皆吉爽雨
倒れし稲茎の枯色重ね曇る/古沢太穂
倒伏の稲をくぐれる落し水/岡安紀元
八月の行方や稲に波走り/米澤吾亦紅
凶作田焼く棒立ちに稲と人/太田土男
踏切の警報を浴び稲青つ/田川飛旅子
初とんぼ吹かれて稲へ落ちにけり/柏
白鷺の稲にかくるる愁かな/太田鴻村
稲つるみ全幅を見す最上川/高澤良一
稲の穂の日々垂れわが家整へり/林翔
俳句例:81句目~
稲無限不意に涙の堰を切る/渡辺白泉
稲滓火の関東平野雪もよひ/巌谷小波
庄屋殿の棺行くなり稲の中/正岡子規
稲滓火の関東平野雪もよひ/角川春樹
引きまはす襖の外も稲屏風/立花北枝
蓮一葉抽く稲原の朝涼し/金尾梅の門
垂り稲の地平に唸り哨戒機/高井北杜
稲の秋山山進み向ひくる/池内友次郎
志賀の里妹子の村の稲実る/西村雅苑
咳しつゝ歩き来る子や稲埃/高野素十
黒部川わたりて稲の高襖/阿波野青畝
宵々や簾にかぎる稲の波/金尾梅の門
稲の香に溺れたき眼を瞑るべし/耕二
斎田の稔りし稲に鎌入るゝ/竹崎紫泉
新米や土佐はよい国二番稲/浜田波静
盆月夜稲よりも顔あきらかに/森澄雄
夏の日の淡さ矮き稲も穂に/岸風三楼
春風も揃へて麦も稲むしろ/中村史邦
稲束を投げし宙より跳ぶ蝗/鷹野清子
吹く風や稲の香匂ふ具足櫃/上島鬼貫