「稲妻」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「稲妻」について
【表記】稲妻
【読み方】いなずま
【ローマ字読み】inazuma
子季語・関連季語・傍題・類語など
・稲光(いなびかり:inabikari)
・稲の殿(いねのとの:inenotono)
・いなつるび(いなつるび:inatsurubi)
・いなたま(いなたま:inatama)
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季節による分類
・「い」で始まる秋の季語
・「秋の天文」を表す季語
・「三秋」に分類される季語
月ごとの分類
稲妻を含む俳句例
電に今年の竹の美しき/成美
稲妻や隣の蔵も修履時/几董
蘇る水の稲妻枯尾花/斎藤玄
竹深し稲妻薄き夜明哉/几董
稲妻や刈草にほふ厩口/麦南
哨兵の後姿を稲光/寺田寅彦
稲光一遍上人徒跣/黒田杏子
稲光大きな雲の蟠り/上野泰
稲妻や梟の臥ところまで/李遊
稲妻や昨日は東今日は西/其角
糸引女夜は稲妻の臥し処/綾子
稲妻に色失へる灯かな/上野泰
水打つて稲妻待つや門畠/一茶
稲妻の門で髪梳く女かな/存義
炭竃や稲妻走る山の腹/森鴎外
稲妻や要塞地帯第幾標/森鴎外
稲妻や芒がくれの五十貌/一茶
稲妻の光の中の釣荵/藤井紅子
稲妻の度々蟇の歩みかな/樗堂
稲妻やよわり~て雲の果/太祇
俳句例:21句目~
顔ふりむきし雄鶏や稲光/重信
梁上の君子危し稲光/寺田寅彦
水面に表裏あり稲光/池田澄子
稲光西にしきりや風の盆/柏禎
蘇る海馬の記憶稲光/柴田奈美
美しき稲妻したり与謝の海/青邨
稲妻が走るもつとも遠き空/吐天
六郡を稲妻すなり草枕/石井露月
稲妻に盗人走る野末哉/寺田寅彦
稲妻や闇の方行く五位の声/芭蕉
稲妻にへな~橋を渡りけり/一茶
稲妻や提灯多き野辺送/正岡子規
稲妻の行處なき月夜哉/寺田寅彦
稲妻や裏葉萋たる麻畑/会津八一
稲妻にこぼるゝ音や竹の露/蕪村
神々の戦稲妻二打三打/柴田奈美
稲妻の明暗雲の裏走る/高濱年尾
一本は岐れる前の稲光/久保純夫
稲妻や波もて結へる秋津島/蕪村
トラムプの独り占稲光/星野立子
俳句例:41句目~
稲妻のする時雲の形哉/正岡子規
稲妻やからくり花火夕芝居/黄吻
稲妻や石油浮ぶ池の面/会津八一
稲妻やきのふは東けふは西/其角
稲妻や波に抛つ普門品/寺田寅彦
稲妻や海の面をひらめかす/史邦
稲妻やされば夜来る杉の間/百池
稲妻や浪もて結へる秋津島/蕪村
稲妻の一網打つや伊勢の海/蕪村
枯萩と遠稲妻を一に見し/斎藤玄
稲妻の巨き翼ぞ嶺を打てる/篠原
稲妻にインカの民は灯さず/素十
しんしんと肉の老いゆく稲光/玄
天草の稲妻遠し松の宿/内田百間
はら~と稲妻かゝる芭蕉哉/樗堂
干草の山なす庭や稲光/松藤夏山
東京も友も遠しや稲光/石塚友二
いな妻や風情を乱す月の雲/鼻紅
稲妻の銀の眼を沖合に/高澤良一
稲光顔の山脈瞳の海よ/高原耕治
俳句例:61句目~
稲光り走る鏡の暗き中/三好潤子
佛壇に鼠さわぐや稲光/寺田寅彦
稲妻に並ぶやどれも五十顔/一茶
稲妻は矢口の言の光かな/森鴎外
稲光畠の上に田の上に/本田和男
稲光蝙蝠岳は闇に没し/福田蓼汀
新院の陵ありて稲妻す/寺田寅彦
羅の肩をおほへる稲光/中村汀女
一角に稲妻光る星月夜/高浜虚子
稲光一商人として旅へ/山中麦邨
稲妻を遮る雲のいろの濃き/森鴎外
稲妻の翼が吾を羽交締め/三好潤子
稲妻や蹠死すとも癩治れ/村越化石
稲妻を浴せかけるや死ぎらひ/一茶
稲妻に玉を捜るや龍の腮/寺田寅彦
稲妻に悟らぬ人の貴さよ/松尾芭蕉
稲妻を夜毎の街に見失ひ/中村汀女
稲妻を吸ふて太るや青狐/久米正雄
稲妻に近くて眠安からず/夏目漱石
稲妻に道きく女はだしかな/泉鏡花
俳句例:81句目~
稲妻に遠くの棗実りけり/萩原麦草
稲妻に障子の骨の現るゝ/前田鳴仙
稲妻や吾子の墓辺の眼に浮ぶ/耒井
稲妻のあおき翼ぞ玻璃打てり/篠原
稲妻や荒野の果の一軒屋/寺田寅彦
稲妻のあをき翼ぞ玻璃打てる/篠原
稲妻や芦江にひそむ鯰船/宇野犂子
稲妻のこぼれて赤し蕎麦の畑/可有
よみ懸し戦国策や稲光り/井上井月
稲妻のしまらで秋を果しけり/乙州
稲妻や耳なし山の峰はづれ/碧梧桐
よこがほを淋しとおもふ稲光/斌雄
稲妻や稲の山辺の法隆寺/松瀬青々
こめかみは鱗のなごり稲光/秋月玄
湖に稲妻のする静けさよ/中島曾城
電の山を出かぬる夜あけかな/嵐青
雷は好き稲妻は嫌ひなり/高木晴子
稲妻や獄門の首我を見る/正岡子規
稲妻や湯船に人は玉の如/寺田寅彦
稲妻や淀の与三右が水車/上島鬼貫