「無花果」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「無花果」について
【表記】無花果
【読み方】いちじく
【ローマ字読み】ichijiku
子季語・関連季語・傍題・類語など
・とうがき(とうがき:togaki)
・ほろろいし(ほろろいし:hororoishi)
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季節による分類
・「い」で始まる秋の季語
・「秋の植物」を表す季語
・「晩秋」に分類される季語
月ごとの分類
無花果を含む俳句例
無花果や垣は野分に打倒れ/史邦
青無花果の日蔭の重さ父の郷/原裕
頬赤い山無花果を童子仏/和知喜八
無花果や薬を刻む縁の先/寺田寅彦
無花果の暗き水あり菖蒲園/遠藤梧逸
青無花果生る後頭に陽の強き/中拓夫
金色の無花果籠に盛る老人/金子皆子
蝙幅の柄かけ無花果盗る男/福田蓼汀
無花果や淵へ淵へと女の眼/齋藤愼爾
無花果や四谷寺町谷なせる/三原清暁
無花果に向けし坐業の目幼し/徳弘純
無花果や広葉にむかふ夕涼/広瀬惟然
無花果摘むべき地より広葉/喜谷六花
無花果に水鏡して水急ぐ/百合山羽公
無花果を食べ荒海の上にあり/岸田稚
無花果を食ふ身辺を風急ぐ/右城暮石
無花果を食ふ百姓の短き指/山口誓子
いちじくの葉蔭に遠く耕せる/桂信子
無花果を手籠に旅の媼どち/飯田蛇笏
月明の無花果食みに鼠かな/太田鴻村
俳句例:21句目~
失恋の後無花果を買い戻る/寺井谷子
黒板塀無花果多き小道かな/正岡子規
無花果の少し色ある二つ哉/星野麦人
無花果の葉ずれ歓ぶ赤ん坊/柿本多映
無花果をもぐや動力線跨ぐ/下村槐太
麦どきの無花果の木は婆の形/中拓夫
いちじくが甘し良寛最後の地/高木良多
無花果くらし子守唄なほ昏し/神戸周子
無花果で始まる森の小道かな/郷/絹子
無花果や妓のものを夜干して/遠藤梧逸
無花果の熟れし田舟の棹の先/小早川恒
無花果の飴煮素朴に三時の花/遠藤はつ
無花果の門の格子や水を打つ/飯田蛇笏
無花果に隠れ産声なりや急/殿村莵絲子
いちじくの甘露煮も菜飯熱し/石川桂郎
無花果の樹蔭の童女秋暑の日/飯田蛇笏
無花果の軒場の駕籠の埃かな/西山泊雲
無花果のなかの不覚や薬指/渡辺誠一郎
いちじくも九月半ばの影つくる/桂信子
無花果の一つ大きが愚に甘き/野澤節子
俳句例:41句目~
無花果の葉の面の黴や秋の風/西山泊雲
いちじくをもぐ手に伝ふ雨雫/高浜虚子
無花果食べ妻は母親ざかりなり/堀内薫
無花果の軒に吊せし駕籠二挺/西山泊雲
無花果の口あけて今日始まりぬ/樋笠文
口中でつぶす無花果母の手経て/桂信子
呆けたりや熟無花果の脳を食ふ/森澄雄
無花果の蘂を啜りて無頼作家/齋藤愼爾
無花果割る親指根元まで入れて/小澤實
無花果を丸煮す秋日しみじみと/及川貞
客人は青無花果を見てをられ/岸本尚毅
無花果を食ふ唇を厚くして/殿村菟絲子
日本海黒無花果に無言なり/黒田桜の園
乳牛に無花果熟るゝ日南かな/飯田蛇笏
無花果の実青き二百十日かな/高濱年尾
無花果爛熟冷凍鯨肉半ば溶け/吉野義子
無花果の腹の底より笑ひけり/蛭田大艸
無花果の日にとぶ蠅や水見舞/西島麥南
六白の無花果嫌ひ通しけり/榎本冬一郎
無花果の腸も盛りや遠い午砲/桑原三郎
俳句例:61句目~
物足るや葡萄無花果倉ずまひ/永井荷風
無花果を押し潰しみる薄疲れ/横光利一
泳ぎ子が無花果の深き蔭怖る/内藤吐天
無花果を喜ぶほどの貧しき膳/山口誓子
いちじくに唇似て逃げる新妻よ/大屋達治
無花果食ぶ死ぬ話など少しして/中村苑子
いちじくに母の拇指たやすく没す/桂信子
無花果や人形の声あぐるまで/増田まさみ
いちじくの大き落葉が墓を打つ/中嶋秀子
いちじくの実にぞのぞかれ鶏つるむ/篠原
いちじくの広葉潮来の走り梅雨/井本農一
煮つめたる無花果昼を深くして/大場康子
いちじくの枯葉が乗つて僧の下駄/井上雪
いちじくの樹の高みまで露の領/福永耕二
いちじくの濃紫から喪があける/植田次男
稲扱くや無花果ふとき幹のかげ/飯田蛇笏
蛇のぼる無花果の木の向ふ側/榎本冬一郎
青空に無花果奇声上げて割れ/和田耕三郎
いちじくや寺に遊べる智慧おくれ/有働亨
いちじくや昭和倦くなき媼の邑/和田悟朗
俳句例:81句目~
駕籠かきの無花果の家教へられ/西山泊雲
しづかなる雨無花果に妻を得し/杉山岳陽
もがれゐて無花果の木の寂然と/水内鬼灯
わが死後に無花果を食ふ男ゐて/下村槐太
人の死へ無花果の粒煮つめつつ/加藤耕子
日静か落ちいちじくに群るる蜂/細見綾子
朝露の無花果を食ふ寡婦となり/中山純子
梅雨しげくして無花果の青き翳/内藤吐天
歳月や無花果の辺を過ぐるより/村沢夏風
汝が家に躯はこべば無花果あり/岡井省二
無花果にゐて蛇の舌みえがたし/飯田蛇笏
無花果のかげに洗へる障子かな/野村泊月
無花果の一色は先づのがれけり/野澤凡兆
無花果の中はいくさの火種かな/瀧/春樹
無花果の岸へ着きたる渡舟かな/西山泊雲
無花果の暗き深紅を煮つむべし/黒田杏子
無花果の木や雪降れば雪かかり/細見綾子
天地に無花果ほどの賑はひあり/永田耕衣
無花果の爛熟するを疎みをり/千代田葛彦
無花果の神ながらなる青さかな/右城暮石