「旱」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「旱」について
【表記】旱
【読み方】ひでり
【ローマ字読み】hideri
子季語・関連季語・傍題・類語など
・旱魃(かんばつ:kambatsu)
・夏旱(なつひでり:natsuhideri)
・旱続き(ひでりつづき:hideritsuzuki)
・大旱(たいかん:taikan)
・旱空(ひでりぞら:hiderizora)
・旱天(かんてん:kanten)
・旱年(ひでりどし:hideridoshi)
・旱畑(ひでりばたけ:hideribatake)
・旱草(ひでりぐさ:hiderigusa)
・旱雲(ひでりぐも:hiderigumo)
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季節による分類
・「ひ」で始まる夏の季語
・「夏の天文」を表す季語
・「晩夏」に分類される季語
月ごとの分類
旱を含む俳句例
碧空に山充満す旱川/龍太
洛南は山国どこも大旱/妹尾健
金魚玉空傾けて大旱/石塚友二
遠景に人馬動いて旱川/桂信子
鶏頭の紅しんかんと旱村/黛執
犀磧旱雀が嘴磨げる/西本一都
旱天の夜雲の白き盆の唄/森澄雄
波除に旱雀の痩せにけり/森田峠
仲悪しく旱の畑を嗤ひ合ふ/念腹
追腹の守敏も降らす旱かな/蕪村
正座して薪割る旱の一老婆/澄雄
大旱や泥泉地獄ふつふつと/誓子
昇天寸前旱老婆の白日傘/森澄雄
芋畠旱りの雲の高きかな/木母寺
旱雲飯盛山は尖りたる/宮武寒々
竪戸樋の中は旱の時雨かな/士丸
旱天に蜆掻く音のみ遺る/斎藤玄
大旱の棺板反つて釘浮かす/源二
朝夕瓜もみ食ふ旱かな/前田普羅
真白なる猫によぎられ大旱/楸邨
俳句例:21句目~
一滴も水無し近江旱川/山口誓子
地獄見て憤ろしも大旱/山口誓子
旱雲坐る善丁の瓜畑/築城百々平
日傘みな沼へ傾く芋旱/小林康治
干梅の紅見れば旱雲/河東碧梧桐
旱鶏の一羽大股関ケ原/吉田鴻司
大旱の蟻はしるその影の上/楸邨
瓜蠅旱天の暾を愉しめる/西島麦南
この旱むしろ清しと鳶鴉/村越化石
水を堰く石動かすや旱村/石井露月
しらしらと明けて影濃し旱雲/普羅
百町の芋畑持ちて旱かな/会津八一
石投げて石の音する旱谷/新島艶女
旱雲ひとひらの蝶のぼりつめ/原裕
種蒔いて幾日雨なき春旱/菅原師竹
旱野に崑崙の雪遥かなり/小林碧郎
絶壁の苔厚うして大旱/佐野まもる
ひろしまを縦断今も旱川/辻田克巳
桟橋を足して旱の続く湖/伊藤凉志
栴檀の大樹影濃き旱かな/大谷句佛
俳句例:41句目~
英世の地るつぼとなりし旱雲/原裕
茂り合ふ草に旱の埃かな/尾崎紅葉
一枚の戸板のごとき旱村/藤田三郎
蝶去つて重み加はる旱石/朝倉和江
一筋の道となりたり旱川/下村梅子
丑寅の風や旱の空を吹く/小澤碧童
赤ん坊を尻から浸す海旱り/飴山實
身一つの漂ひ歩く旱かな/山内山彦
車窓より拳現われ旱魃田/金子兜太
昼旱鉄軌綯ひ交ふ陸橋下/石塚友二
健児の足を揃へる旱みち/筑紫磐井
口に乗る春歌や旱の狐立つ/斎藤玄
向日葵の瞠る旱を彷徨す/野澤節子
旱害に遠く消耗病院あり/藤木清子
旱天や軒端甜め飛ぶ蝶ひとつ/松浜
地下一尺蟻の卵の旱かな/野村喜舟
墓の水旱川より運びをり/益田月石
墓原や松風たかき旱り空/角川源義
引とり手なき古本の旱山/高澤良一
旱魃や子の傷を舐め口甘し/岸田稚
俳句例:61句目~
大旱の夜風に鳴きて枝蛙/石原舟月
大旱の掃苔水を惜むなく/亀井糸游
大旱の獣らにまた餌時来る/徳弘純
旱魃の草に溺るる水位標/中村翠湖
旱雲犬の舐めたる皿光る/原子公平
大旱やめし屋汚き煤の町/森川暁水
大旱や強酒を売る煤の町/森川暁水
大旱や長き脚見せ浮御堂/芳賀雅子
旱天の百姓何も持たず歩く/上野泰
大旱鈴蘭は実を結びゐる/木村蕪城
天広く湖青々と旱かな/東洋城千句
天水も乾上り隠岐は大旱/勝部秀峰
海賊の村に水汲む旱かな/正岡子規
龍舌蘭咲きて大きな旱来ぬ/多佳子
流木のかゝりしまゝに旱簗/土山紫牛
水なくて泥に蓮咲く旱かな/正岡子規
つぶやきつ畦ゆく老や大旱/西山泊雲
てらてらと百日紅の旱かな/正岡子規
ねむたさの車窓の白き旱なり/有働亨
旱魃の閻魔大王口裂けし/藤平静々子
俳句例:81句目~
昼顔のとりつく草も旱かな/菅原師竹
一片の薔薇散る天地旱の中/西東三鬼
旱田の水口に佇ち畦に佇ち/堅田春江
旱の夜おんなじ貌の鰈焼く/寺田京子
旱田にからむ捨花外しけり/香西照雄
新幹線試走車が行く旱魃田/皆川白陀
掃苔や手をついて引く旱草/後藤夜半
姥捨の旱雲から岩つばめ/大峯あきら
浦上は愛渇くごと地の旱/下村ひろし
大旱の芋の葉裂けつ癩園も/中島斌男
渡岸寺観音立たす旱かな/大峯あきら
大旱や滝の絵かけし百姓家/前田普羅
灯の海の旱り無限の鎮魂歌/石原八束
悪鬼ゐて地獄たぎらす大旱/山口誓子
旅は紙コップの歪み大旱/千代田葛彦
百姓の大煙立てゝ旱畑/阿部みどり女
大旱や乾坤憎まれたる如し/野澤節子
大旱の川幅に水急ぐなり/千代田葛彦
地の旱閾を越えて乞食来る/成田千空
大旱や墓場もありて煤の町/森川暁水