俳句例:101句目~
吾子の作文妻の胼の手かなしめり/伊東宏晃
煮こぼれし乳さへ胼にぬりて婢よ/皆吉爽雨
なつかしむなり胼の手に夕日あて/村越化石
みちのくに棲みたり殖やす顔の胼/児玉小秋
湯に入るや胼の手足を天ンに哭き/尾崎迷堂
バイブルの天はくれなゐ胼の手に/山口青邨
亡骸の胼の手さすりをりにけり/長谷川竹籠
仏手柑に擬らふわが掌胼もなし/山田みづえ
胼の手をあはせて拝むほとけかな/橋本鶏二
傷つきつ紡ぎつ癒えゆく十指の胼/井上順子
夫とわれ胼児較べてわれ勝てり/山口波津女
夫の手とわが胼の手と触るとき/山口波津女
妻の手のいつもわが邊に胼きれて/日野草城
子は明眸母は胼の手かなしまじ/柴田白葉女
胼ぐすり胼がよろこびさゝやける/河野静雲
胼の血を授乳の母に見せにくる/川島彷徨子
長病むや夫の手の胼見てしまふ/小林紀代子
胼かなしからず愛する夫あれば/山口波津女
胼薬ぬりつゝ明日のつもりごと/岡本無漏子
胼かなしからず雑巾かたくしぼる/吉野義子
俳句例:121句目~
胼の手をこすりつ三子得て貧す/猿橋統流子
あかぎれをかくそうべしや今年妻/前田普羅
胼の娘の頬すこやかにほてりけり/西島麦南
胼の手を盗み見られつ話し居り/松本たかし
身の冬の胼あかぎれの薬かな/久保田万太郎
田の胼に風しむ夜なり一茶の忌/伊藤三十四
しめやかにあり胼早き妻の夜見るよ/喜谷六花
榾明り読み耽ける胼手こはゞりぬ/金尾梅の門
胼ふえてますます光る指輪かな/竹下しづの女
胼の手を見せてしかとは伸びぬなり/皆吉爽雨
ほてる皸眠らんと手をゆるくひらき/安藤正一
空風にかなしき胼のきれにけり/阿部みどり女
胼切れし妻の両手にみとらるる/佐々木太刀男
手の胼の癒ゆる間もなし牛を飼ふ/手塚すすむ
胼すこし幸せに似てすぐ消えぬ/きくちつねこ
胼の手に飲みこぼす乳のながれけり/松澤鍬江
胼ぐすり雨の来し夜はなほざりに/奥田とみ子
筍を洗ひ入日に胼の手をかざす/竹中九十九樹
あかぎれ膏貝詰なるがたのもしき/水原秋桜子
修道女のその胼の手を吾が見たり/竹下しづの女
俳句例:141句目~
われら胼切らすものわれらわれらの父祖/林原耒井
胼の手に文庫ワシレエフスカヤの「虹」/佐藤鬼房
さかなやは胼をきらしてひがんかな/飛鳥田れい無公
あかぎれをきらしたる手やおもひもの/久保田万太郎