「遍路」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「遍路」について
【表記】遍路
【読み方】へんろ
【ローマ字読み】henro
子季語・関連季語・傍題・類語など
・遍路宿(へんろやど:henroyado)
・善根宿(ぜんこんやど:zenkonyado)
・遍路道(へんろみち:henromichi)
・遍路笠(へんろがさ:henrogasa)
・遍路杖(へんろづえ:henrozue)
・四国巡(しこくめぐり:shikokumeguri)
・一国巡(いっこくめぐり:ikkokumeguri)
・島四国(しましこく:shimashikoku)
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季節による分類
・「へ」で始まる春の季語
・「春の行事」を表す季語
・「三春」に分類される季語
月ごとの分類
遍路を含む俳句例
養花天鏡一面遍路宿/黒田杏子
老遍路寺の厠を心あて/小澤實
雲辺の寺へ遍路の鈴二つ/岡崎伸
秋遍路瓦一枚寄進せる/室谷幸子
延命水遍路杖にも一雫/手塚美佐
舷の子遍路の手やはらかし/麦草
獄中の畳を歩く秋遍路/角川春樹
兄自殺母水死吾夢遍路/星野石雀
遍路杖こまごまと物固結び/林徹
同道に仙薬頒つ秋遍路/山縣輝夫
失明の夫労り冬遍路/常石いつ子
同宿は会津訛の老遍路/西岡栄子
白遍路番外終へて一切終ふ/秋を
磴登る足軽々と秋遍路/高市幸子
逆縁に秋の遍路を志す/辻口静夫
夕遍路雨もほつほつ急ぎ足/素十
透明の合羽に遍路衣かな/小澤實
童顔の残る遍路と道連に/森白象
先ぶれは遍路の鈴や仏舞/林和子
布浅黄女人遍路の髪掩ふ/草田男
俳句例:21句目~
遍路宿海の入日に波斯猫/山本源
塩田に遍路の鈴の遠音あり/舟月
潮臭き宿毛の雨に徒遍路/高澤良一
堂縁に離れて座り夏遍路/川口茂子
塩田を雲とへだてゝ遍路ゆく/青畝
夏遍路四万十川に足浸す/塚本弘満
夕ぐれを仏貌して秋遍路/大庭星樹
百畳に善男善女遍路宿/武内婦美子
松籟や撞木の揺れと秋遍路/飴山實
笠をとり女となりし秋遍路/山本允
大山の沢で浄めし遍路杖/河相瑛子
麦踏みの大足がゆき遍路みち/原裕
海近き遍路寺なり夕詣り/岡井省二
白皙の青年なりし遍路笠/松島千代
お遍路が一列に行く虹の中/渥美清
風通しよき山門に夏遍路/上崎暮潮
我も亦秋の遍路の心もて/高濱年尾
鈴音の谺しみ入る秋遍路/黒木幸子
野の風に念仏申し秋遍路/佐野八洲
遠ざかる遍路の鈴や捩花/有馬朗人
俳句例:41句目~
お遍路に一歩の力花槐/河野多希女
遍路笠脱ぎて仰げり山桜/沢木欣一
むすめ遍路に雪割櫻夕櫻/黒田杏子
椿咲く岬遍路の撞く鐘か/田中千恵
方言を違へて次の遍路衆/湯川河南
お遍路の後姿の父に似し/河野久栄
遍路宿蒟蒻桶の水凍る/栗田やすし
遍路宿小学生のとびだせり/小澤實
遍路一団睡り落つ後の月/黒田杏子
遍路一人落花一幹明星来/黒田杏子
秋遍路声を低めて物語/成瀬正とし
一日の遍路疲れの杖洗ふ/佐藤灯光
一枚はお遍路さんの花筵/南冨美子
三状の寺一白の遍路の衣/高橋柿花
極月の遍路に灯る長珍屋/黒田杏子
方丈に帷子積んで遍路寺/氷川殉子
二階まで軋む階段遍路宿/塩野邦江
装束を雲より白く秋遍路/鷹羽狩行
宿賃の宵勘定や遍路宿/合田丁字路
袋より袋を出せり秋遍路/和久利甫
俳句例:61句目~
俳遍路東風三丁の廻り道/中野三允
元日にかはいや遍路門に立つ/一茶
先達の腰鈴やさし遍路坂/村上洋子
先頭の遍路が海の入日見る/桂信子
蜩やてんでに洗ふ遍路杖/稲荷島人
桑青し秩父遍路も蜂起跡/佐藤佳郷
私有地を通す接待遍路道/石河義介
舷窓に白らむ濤音秋遍路/伊藤敬子
春風や遍路飯くふ仁王門/正岡子規
甲板の月光に立つ秋遍路/豊田蕗花
波音を同行として秋遍路/芳西兌子
島遍路干潟歩きて近道す/芳野正王
木の情石のこころに秋遍路/岡本眸
川尻の冬枯ここも遍路道/角田独峰
残生の躬一つ支ふ遍路杖/伊東宏晃
磯鵯に秋の遍路の影法師/飯田龍太
名水に屯して秋遍路かな/宮内春燈
君たちや俄か遍路の秋日傘/岸田稚
黒潮や渓に沿ひ来る夏遍路/林晴美
あまりにも波打際を遍路行く/大牧広
俳句例:81句目~
渦潮の橋渡り来る島遍路/池内けい吾
大風に花蘂降れり夕遍路/大石香代子
大食堂遍路が砂を零しけり/伊沢/恵
渡り来て海へ合掌島遍路/江頭けい子
涸滝に遍路数珠揉み経唱ふ/石原栄子
おのが曳く影をだいじに秋遍路/黛執
笈摺もみな手作りと老遍路/久住文子
姦しき浪花の人と遍路かな/京極杞陽
笈の荷の風に重たき冬遍路/堺/昭治
窓占めて夏山迫る遍路宿/長戸ふじ子
稀にあふ逆の遍路や室戸道/高浜虚子
泣かむには遍路の袖の袂無し/岡本眸
格好の母に似てゐし秋遍路/保坂伸秋
秋遍路跼みて恵まるる何か/黒田杏子
お遍路に路傍の石も仏顔/山本くに子
子遍路の叱られてゐる夕蛙/吉野桜午
子遍路の杖に雨泌む結願寺/神谷翠泉
秋遍路泊めて流転の話など/森本久平
秋遍路日暮は潮の匂ひする/児玉輝代
秋遍路急がぬ杖を磴につき/高濱年尾