俳句例:101句目～
庫裏の戸に鮨桶干して鯊の秋/石川桂郎
石垣のこの家あの家や鯊の潮/永井龍男
沙釣れでかの糞舟を憎みけり/野村泊月
駄菓子屋の裏に舟寄る鯊日和/塙三千男
我が鯊や六峯の鯊や混りけり/会津八一
渡り板いくりをつなぐ鯊日和/永作火童
寝るだけの畳を拭くや鯊日和/春日一枝
鯊の汐寄せて七里の渡しかな/鈴木敏子
鯊の汐高々と橋架りけり/長谷川かな女
鯊の潮さゞめき来り沖は雨/石田ゆき緒
寒鯊を山茶花よりも高く干す/木村蕪城
短艇に尖る川波鯊を釣る/梅島/くにお
鯊の潮芥たゝへて満ちにけり/高濱虚子
鯊の竿粗末な方が釣れにけり/小島延介
鯊を釣る突堤伸びて渦潮へ/今井千鶴子
子持鯊滅法釣れてあはれなり/白井冬青
鯊待つや空高々と舟の中/長谷川かな女
江東にビルふえにけり鯊の秋/富岡桐人
鯊縄にかかりし鯒の愚かさよ/岸風三樓
鯊舟にひろげ朝刊匂ひけり/小森白芒子
俳句例:121句目～
日曜につゞく旗日や鯊の秋/五十嵐播水
沙釣や画にかゝれても知ぬ顔/中野三允
砂蹴つて鯊の子姿くらませり/高澤良一
鯊舟をへな～漕いで戻りけり/矢野蓬矢
秩父丸鯊のうしほに聳えたり/日野草城
大淀のこゝらまでさし鯊の汐/高濱年尾
大仙陵照らず曇らず鯊釣るゝ/前田普羅
鯊釣に行くといふなる宵寝哉/尾崎紅葉
鯊釣の出がけの書翰竈の上に/宮武寒々
沙にげて燈心草のゆらぎけり/寺田寅彦
職なくて真菰隠りに鯊釣るも/細川加賀
海坂や見えてはるけき鯊の舟/山口誓子
鯊釣の数でいくらか夫を抜く/北村仁子
波止先にかたまれる舟鯊日和/藤田静古
鯊を釣る舟が出てゐる大日向/高澤良一
同舟の向きそれぞれに鯊の秋/木内怜子
鯊釣や不二暮れそめて手を洗ふ/秋櫻子
沙釣やすそをかゝげて蘆の中/寺田寅彦
桟橋に船をらぬ間の鯊を釣る/松村柳浦
冬鯊ものこる紅葉も片瀬川/水原秋櫻子
俳句例:141句目～
鯊釣や片手に柿をたべながら/西山泊雲
朝に釣り夕ベに釣りて鯊の汐/鈴木花蓑
冬凪や橋の上から鯊釣って/鈴木真砂女
鯊釣りに一天の藍しづかなり/小川敏子
鯊釣りの女に負けて戻りけり/橋石和栲
鯊釣りの水に光のあるばかり/有角正巳
鯊釣りの父子のうしろ姿似る/中村純代
曇りしがそのまま日暮鯊の潟/橋本風車
橋桁に嵌まる風景鯊を釣る/加藤三七子
鯊釣れず水にある日のうつくしく/青邨
遡り来る鯊の潮先見えそめし/清崎敏郎
鯊釣れば雨の神社に犬跳ねて/永田耕衣
武蔵野の低き家並が鯊を焼く/萩原麦草
鷺あそび沙釣の潮おちにけり/木津柳芽
割り込みし鯊釣竿の長きかな/増成かつじ
鯊つりを埋めてそよぐ蘆荻かな/飯田蛇笏
唐辛子はづして鯊を吊りかふる/伊丹丈蘭
夕汐の冷ゆるに滅法鯊釣るゝ/篠塚しげる
子持鯊よくかゝるとて誘はるゝ/村野蓼水
鯊の潮さし来る早さあなどれず/小島梅雨
俳句例:161句目～
子持鯊塩をふられて啼きにけり/橋本花風
子持鯊見舞ごころにもたらせし/池田季陽
子持鯊間遠ながらも釣りたまる/中村汀女
小名木川冬の鯊釣ゐたりけり/鈴木しげを
少年の電球をかへをる鯊の秋/大木あまり
鯊の舟漕ぎちらばりて相倚らず/湯浅桃邑
鯊を釣るうしろ原つぱ犬駆けり/富安風生
岸壁に沙釣る阿呆講和の日/長谷川かな女
島住みになれて鯊釣たのしめり/芹沢江村
怨み顔とはこのことか鯊の顔/能村登四郎
戦争を知らざる如く鯊を釣る/大場白水郎
鯊竿をしらべる楽屋らく近し/中村吉之丞
捌かれる鯊の目海を見てをりぬ/乙武佳子
校長の鯊釣りと言ふついて行く/原田耕二
沙飛んで船に食たくゆふべかな/椎本才麿
沙の目にうつりてとほし秋の雲/会津八一
沙焼くや深川晴れて川ばかり/長谷川春草
沙釣に槌のひゞきは佃かな/長谷川零余子
鯊船や入江の凪に日もすがら/水原秋桜子
沙釣や牡蠣田にほそき舟のみち/木津柳芽
俳句例:181句目～
鯊釣つておいてけ堀の真晝かな/筑紫磐井
沙釣るに蘆の穂風のわきめぐる/太田鴻村
沙釣るや噂に高き江の娼家/長谷川零餘子
渡舟しまひて鯊焼く軒の煙かな/島田青峰
鯊釣に籠といふものなかりけれ/田中裕明
沙釣にがぐ～な艪を佗びにけり/籾山柑子
鯊釣の夢おもしろく揺られけり/中尾白雨
焼跡に鯊釣りゐたり憂かりけり/石田波郷
空罐にきよとんと鯊の眼がありぬ/下田稔
鯊の潮一連よぎる小河豚かな/五十嵐播水
筧流れに鯊のぼりきつ秋涼し/金尾梅の門
考へる岩を鯊の子吸ひに来る/殿村莵絲子
腹すりて岩をのぼれり坊主鯊/滝沢伊予次
舟下の鯊のあそび場照り曇る/藤田あけ烏
艪を押すや片手に鯊を釣ながら/梅沢墨水
蒼天を切つて釣りあぐ鯊小さし/鈴木松山
潮さして鰭よろこべり籠の鯊/水原秋桜子
裏木戸を開けて舟出す鯊の潮/岡嶋田比良
見て居るは皆旅人なり鯊釣れる/西山泊雲
見渡して鯊を釣る舟ならぬなし/清崎敏郎
