俳句例:101句目~
初夢のなかをわが身の遍路行/飯田龍太
初夢のなほしんがりに蹤きゐたり/鴻司
初夢のぬきさしならぬ絵踏かな/長田等
初夢のはかなくたのし古衾/高橋淡路女
初夢のひとりでたどる熊野道/黒田杏子
初夢のゆめの深さに溺れをり/村沢夏風
初夢の一断片のほのと赤し/九鬼あきゑ
初夢の中に一句を忘れきし/岡田みす子
初夢の中の密会には触れず/村田緑星子
初夢の二階より師に呼ばれけり/岡本眸
初夢の何に泣きしか忘れたる/今瀬剛一
初夢の何やら美しく寝過しぬ/武石佐海
初夢の出口のあたり行き戻り/山田弘子
初夢の初めの顔をしていたり/永末恵子
初夢の夢にはあらじ記念館/稲畑廣太郎
初夢の大きうねりの中にあり/池田秀水
初夢の大波に音なかりけり/鈴木真砂女
初夢の奉公の身に戻りけり/山崎和賀流
初夢の思ひ出せずにゐる科白/高澤良一
初夢の扇ひろげしところまで/後藤夜半
俳句例:121句目~
初夢の抱ききれぬほど毬拾ふ/山本馬句
初夢の更に娶りて同じひと/高田風人子
初夢の母若かりしことあはれ/高橋睦郎
初夢の漠々たるを吉とせむ/下村ひろし
初夢の終り明るくありにけり/脇田隆一
初夢の続きは獏に食はれけり/青柳薫也
初夢の茄子やまこと小さかり/小林輝子
初夢の覚えのなきを吉とせり/川井城子
初夢の走りつづけて重たかり/宮坂静生
初夢の途中駄目だと思ひけり/高澤良一
初夢の金粉を塗りまぶしたる/高浜虚子
初夢の釘うつところ探しゐて/熊谷愛子
初夢の陳腐に腹を立てゝをる/川崎展宏
初夢の音なき山河きらめけり/松本美簾
初夢の鯤の目玉にこだはりぬ/大石悦子
初夢の鱗まみれとなりにけり/櫂未知子
初夢は亡き妻とゐてエーゲ海/内山泉子
初夢もなき少年にマニラ陥つ/萩原麦草
初夢もなく穿く足袋の裏白し/渡邊水巴
初夢もまた平凡でありにけり/岩岡中正
俳句例:141句目~
初夢や「緘」の彼方の二十代/櫂未知子
初夢やおのれの首に頭陀袋/藤田あけ烏
初夢やみんなかかれる草の罠/宮坂静生
初夢や兵たりし日は遠く近し/古市狗之
初夢や夜逃げ支度の姉と逢ふ/角川春樹
初夢や富士飛び越えて花に月/藤野古白
初夢や幼く逝きし子と遊ぶ/菱田トクエ
初夢や故国を恋ひし兵のころ/三浦誠子
初夢や源義のうすきうしろ髪/角川照子
初夢や連歌鎖のごとつなぐ/佐々木久代
初夢を見よといひつゝ子守唄/星野立子
告ぐべくもなく初夢のみじかさよ/汀女
土佐つぽの卒寿初夢すらなくて/及川貞
忘れたる初夢何か今朝たぬし/新田郊春
こんこんと親子の眠り獏枕/高橋淡路女
槍もちて走る初夢さめて雪/長谷川秋子
潮満ちて貝の初夢まだ醒めず/渡辺恭子
亡き母の背なの温みを初夢に/福永鳴風
初乗りののち初夢のビアズリイ/仁平勝
初夢と話しゐる間に忘れけり/星野立子
俳句例:161句目~
覚めがちの初夢さびしかりけるよ/梅子
初夢に大き背中を見たりけり/安東次男
初夢に硝子の靴をはいてみし/朝倉和江
初夢に花の落ちたるけはひなし/原和子
初夢に落ちし奈落の深かりき/鷹羽狩行
鯉に呑まれて初夢の醒めにけり/志解樹
はつゆめの半ばを過ぎて出雲かな/原裕
初ゆめの枕ならべて灯を消しぬ/上村占
初夢の辻褄合つてしまひけり/片山由美子
初夢のはじめに谷の日差あり/藤田あけ烏
初夢の忘れやすさの目出度けれ/高木晴子
思ふことある身なりけり獏枕/高橋淡路女
息触れて初夢ふたつ響きあふ/正木ゆう子
初夢のなかに亡父母会しけり/百合山羽公
初夢の短かけれども浅けれども/山田弘子
初夢の母死なさじと手を握る/山口波津女
初夢の死者なかなかに語りけり/綾部仁喜
初夢に蟹は甲羅をゆるめたり/宇多喜代子
ただようてゐし初夢の青の中/恩賀とみ子
初夢のいくらか銀化してをりぬ/中原道夫
俳句例:181句目~
初夢のあまり美事に悪夢なる/山田みづえ
初夢の中まで風邪をひいてをり/半谷洋子
初夢の父は牛追ういでたちで/相原左義長
初夢の杜甫と歩いてゐたりけり/吉田鴻司
初夢の一句を得たるところまで/稲荷島人
初夢に見たり返らぬ日のことを/日野草城
獏枕なみのりふねの音聞かな/窪田佳津子
初夢に枕のひくきホテルかな/山口波津女
獏枕わりなきなかのおとろへず/飯田蛇笏
初夢の何かわびしきことなりし/富安風生
初夢のわが顔こちら向きにけり/細川加賀
初夢も見果てぬゆめの他になし/小林鱒一
初夢に夢でよかりしものを見し/有賀芳江
髪も稍々白初夢などは嘗て見ず/加藤楸邨
初夢の辻褄こはぜ掛けながら/ふけとしこ
初ゆめのあとにて暗き壺の口/三田きえ子
初夢をわすれ戦火をわすれざる/仙田洋子
初ゆめのゆめの深さに溺れをり/村沢夏風
なか~に寐つきかねたる獏枕/高橋淡路女
初夢やもの云へばみな字余りに/玉城一香