俳句例:101句目~
諸鳥の止まれる春の朝ぼらけ/三橋敏雄
貌見ゆるまで鳶近く春来る田/西村公鳳
身かはすとき翼平らや春の鳶/吉野義子
そらそこの紅らむ枝に春の鵙/高澤良一
近々と鳥のまなこや春の風邪/酒井絹子
わが墓を止り木とせよ春の鳥/中村苑子
金髪に染めてみやうか春告鳥/森川恭衣
春がすみ鳥より高き山に立ち/太田寛郎
丹の欄にさへづる鳥も惜春譜/杉田久女
地は緩く回りにけりな春の鳥/今坂柳二
青年に春の鳥きて名告りけり/鳴戸奈菜
飛ぶ鳥を飛ぶ鳥越ゆる春の昼/太田紫苑
月山へつばさをまはす春の鳶/黒田杏子
飢ゑも春のどかに鳥の話をかく/中勘助
春愁の鳶かも知れず沖めざす/勝又民樹
明らかに鳶の尾楫や春の風/大峯あきら
春たつ日庵にまづくる鳥は誰そ/中勘助
鳥つぶてつぎつぎ放ち春の山/有吉桜雲
春の鵙常盤木ばかり森をなす/下村槐太
鳥ないて春のたまりし山わかな/中勘助
俳句例:121句目~
浅春や田に来て白き海の鳥/篠田悌二郎
春の鵙声あやまたず定まらず/野沢節子
海坂に貌しげしげと春の鳶/猪俣千代子
鳥の全身描ききれずに春の雲/対馬康子
日の入るを忘れて伊勢の春の鳶/中拓夫
小野の鳶雲に上りて春めきぬ/飯田蛇笏
春暁やいの一番の美しき鳥/津曲つた子
片肺が春まつ鍋色の鳥がとび/寺田京子
鳥飛んで鳥の如くに春立つ日/今井竜蝦
春の鵙くせみ那須ケ嶺雪霞/小松崎爽青
鳶の背を縁どる春の光りかな/高橋馬相
春はあけぼの鳥の子の襖にも/岡井省二
春陰や鉛筆立てに鳥の羽根/宇佐美蘇骸
鵙のゐし木をまじまじと春の昼/上村占
春の鵙濡れたる石が曇りけり/加藤楸邨
春禽にふくれふくれし山一つ/山田みづえ
春禽の散り翔つ王子稲荷かな/深見けん二
春の鳶が覗きしブイヤベースかな/岸田稚
春鳥きて鳴けり衰弱も花のよう/金子皆子
春鳥のうすむらさきを哭いてでる/松澤昭
俳句例:141句目~
春の鳥あけぼの楠をはなれたり/幸田露伴
空に拡がりしとき春禽と思ひけり/大串章
荒谷を降り春禽となりにゆく/鳥居おさむ
羽根二枚つかいきるとき春の鳥/永末恵子
鴛鴦をそのまゝ春の鳥なりけり/尾崎迷堂
春耕のひとりは鳶に掠はれん/大谷碧雲居
臆しつつ賦役にたてば春の鵙/百合山羽公
春の鳶寄りわかれては高みつゝ/飯田龍太
しほからき断崖を巻き春の鳶/正木ゆう子
憑かれたるものまね鳥よ春の暮/柿本多映
微苦笑の山のあたまを春の鳶/山田みづえ
孟春や鳥影須臾もとゞまらず/光岡朶青子
天馬駆く春暁の夢朱鳥の訃/阿部みどり女
昨日の声たれにゆづりし春の鵙/野澤節子
春嶺の気流に孤独の鳶乗れり/渡邊日亜木
枝の鳥春の言葉を選りてをり/櫛原希伊子
春昼の音に啼く鳥をきく墓か/稲垣きくの
春昼やちよと来いと鳴く山の鳥/石塚友二
鳶のかげ笠にかかるや春の空/吉田ひで女
臆しつゝ賦役にたてば春の鵙/百合山羽公
俳句例:161句目~
長々と蛸も伸びする春の海/大サカ-附鳥
牛乳を飲ませてあげる春の鳥/渡辺誠一郎
春の鳶木ッ端の如く落ちにけり/行方克巳
春陰や玩具の鳥のよく啼ける/中西徳太郎
春澄にとへ稲負鳥といへるあり/榎本其角
春禽の瑠璃の羽立てて嘴曲ぐる/水原秋桜子
赴任して春禽の名をまだ知らず/金箱戈止夫
おのがこゑに溺れてのぼる春の鳥/飯田龍太
つちくれに歩きかくれて春の鳥/吉岡禅寺洞
ドルメンの火焚きしあとに春の鳥/下村槐太
一と日啼き暮れて狂はず春の鳥/青柳志解樹
木々涵したる春の空ほろほろ鳥/千代田葛彦
春の鵙しづかに水のわくところ/夏井いつき
春暁の鳥叫び玻璃戸かゞやかし/金尾梅の門
春の鵙こんな日もあるこんな日も/高澤良一
春荒れて鳥のちぎれてながれけり/平井照敏
情絶ちてをんな生きよと春の鵙/稲垣きくの
目かくしの木にまつさをな春の鳥/三橋敏雄
鳶の笛島おだやかに春暁くる/阿部みどり女
春の鳥くればもてなす用意あり/夏井いつき
俳句例:181句目~
山河春二羽の鳶を目のあたり/阿部みどり女
鵙のこゑひびきてこの世暮春なる/濱田俊輔
子をよびて尾をひろげたる春の鵙/飯田蛇笏
「又こいよ」と目にゆく春の鳥辺山/橋本夢道
いっしゅんの鳥いっしゅんの春の翳/酒井弘司
春鳥や軒去らぬ事小一日/一茶/寛政十一年己未
春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外の面の草に日の入る夕/北原白秋
鳥/けもの。遊べる園に入り来たり、けうとくゐたりー。春すぐるなり/釈迢空