俳句例:101句目～
美しき奈良の菓子より春兆す/殿村菟絲子
春めくを語り見舞に居すごしぬ/荒井正隆
熟睡子へ春めく夜半の遠汽笛/猿橋統流子
春めくとますほの貝のこと起草/大橋敦子
浮雲といふは春めくさまのもの/中村芳子
春めくやまんばうの絵の防波堤/高澤良一
春めくや鳩も夜ふかしして駅に/半澤正子
春めくや繭のごとくに朝月は/つじ加代子
空も星もさみどり月夜春めきぬ/渡邊水巴
春めくや先づ研ぎに出す花鋏/古賀まり子
春めくや抱く子の素足やはらかき/及川貞
春めくや大きかりける伊豆の星/山本歩禅
春めくやもののはづみの指の創/遠藤はつ
ビル街の日替りランチ春めきぬ/伊東白楊
会心の景色なりしが春めきぬ/相生垣瓜人
春めきし山河消え去る夕かげり/高浜虚子
春めくやどの家も灯を消さずある/瀧春一
春めくは美しき人でありにけり/島田青峰
春めくと雲に舞ふ陽に旅つげり/飯田龍太
春めきてものの果てなる空の色/飯田蛇笏
俳句例:121句目～
春めくと言ひたるのちの風の音/那須乙郎
春めくと覚えつゝ読み耽るかな/星野立子
犬の失踪以後や春めく月そだつ/下村槐太
春めきて大芦刈のある日かな/吉岡禅寺洞
むしろ夜半の月のいろなり春めくは/及川貞
實朝忌春動かなとしてためらふ/松本たかし
巡邏船春めく水に漕げりけり/久保田万太郎
訪ね見ん春めく野路をかくい行き/高木晴子
春めくや鸚鵡のこゑとひとのこゑ/細川加賀
水音のつれづれに春うごきけり/東條陽之助
風さへも春めくものとなりにけり/稲畑汀子
春めきのほの一とすぢを歯の痛む/細見綾子
大枯木雲の春めきゆるしけり/久保田万太郎
春めくといへば暮色も春めきて/相生垣瓜人
枯葎やうやく刈られ春めきし/長谷川かな女
春めきて雲にひかりのよみがへる/廣瀬直人
春めく夜高声のひとを湯にのこす/村越化石
春めくといへば暮色も春めきて/相生垣瓜人
春めくといふものに闇ありにけり/茨木和生
春めきやつけて身に添ふ割烹着/稲垣きくの
俳句例:141句目～
春めく夜の西瓜のたねたべてゐる/栗林一石路
春めきぬ既にとろんとせる木あり/相生垣瓜人
春めくと障子をしめて机にもどる/長谷川素逝
日もめっきり春めき並木の木偶ノ坊/高澤良一
いちまいの切符からとは春めく語/後藤比奈夫
三日に一度春うごくいろありにけり/川戸飛鴻
春めくと探りを入るゝごとき日差し/高澤良一
春めくと指をよごしぬ土塊に/吉武月二郎句集
熱あるはやや春めくに似たりけり/相生垣瓜人
春めくを冬田のために惜しむなり/相生垣瓜人
春めくやじぶじぶ煮立つかるめ焼/彦根伊波穂
春めくや真夜ふりいでし雨ながら/軽部烏頭子
昼休みの職工出てゐて春めく水の辺/大橋裸木
くらがりに尾のごときもの春めきぬ/金田咲子
春兆すものあはあはと時雨れをり/鈴木しげを
雨だれのるんるんるんと春兆す/いのうえかつこ
春めくといふ言の葉をくりかへし/阿部みどり女
春めきて人の心はうかぶうかぶ/木曾塚女-つや
まじりするおはじき下手で春めく夜/長谷川かな女
米磨ぐ音の春めく日ざし慕ひ寝る/飛鳥田れい無公
