俳句例:201句目～
水を出し菖蒲の芽あり映り居り/高浜虚子
沼の面に大鷭降りて小鷭飛び/為成菖蒲園
流れとも云ふ程でなし菖蒲の芽/高木晴子
浦の舟端午の菖蒲載せて漕ぐ/水原秋櫻子
渡殿の埃に咲きし菖蒲かな/長谷川零餘子
激写避け黄のかがよへる池菖蒲/赤尾兜子
男結びの時間で暮れる菖蒲園/田口美喜江
花びらのてのひらほどの白菖蒲/山口青邨
秋暑し沼の渡舟に乗りこめば/為成菖蒲園
菖蒲して這ふ子の頭くゝりけり/松瀬青々
菖蒲の芽まだ稚なくてさざ波す/細見綾子
菖蒲の芽出て菖蒲田と思ひけり/今瀬剛一
あつてなき順路の混みし菖蒲園/岩佐こん
菖蒲の芽薬師の山の水引きて/藤田あけ烏
菖蒲ひく賤の子すでに乙女さび/飯田蛇笏
菖蒲剪つて盗みめくなり夕日射/石田波郷
菖蒲剪るや遠く浮きたる葉一つ/高浜虚子
菖蒲咲き平らな雲の浮いてをり/岸本尚毅
菖蒲咲けり桶に紫白の遅速無く/渡邊水巴
菖蒲園に草花の咲く径多し/長谷川かな女
俳句例:221句目～
菖蒲売濡れ着をしぼる木陰かな/高田蝶衣
菖蒲実となりたる団扇使ひをり/高橋馬相
沢にあるうちは名だたぬ菖蒲かな/千代尼
菖蒲田に水ほとばしり薄暑来る/巌谷小波
菖蒲田の一隅どこからも行けず/藤岡筑邨
菖蒲田の手入れをさをさ雨の中/山田閏子
菖蒲田の流れも色を待つあはれ/水原春郎
菖蒲見しこころ水輪の如くなり/大内史現
菖蒲見しこころ漂ふばかりなり/藤田湘子
菖蒲見に淋しき夫婦行きにけり/野村喜舟
菖蒲見の手拭かぶる女かな/長谷川かな女
菖蒲見の袖にとまりぬ雨の蝶/高橋淡路女
菖蒲髪して一人なる身の軽さ/田畑美穂女
葉菖蒲の香ごとくるめり新聞紙/高澤良一
藍水に染まりてそだつ菖蒲の芽/岡安迷子
蝌蚪生れ菖蒲は波を抽きにけり/岸風三楼
菖蒲の芽早水垢の来てかゝる/五十嵐播水
遊女の句映し黄菖蒲池菖蒲/長谷川かな女
道の上に菖蒲拾ふを見られけり/石田波郷
鎌の刃も菖蒲も雫してをりぬ/ふけとしこ
俳句例:241句目～
翩翻と舌ひそめゐる夜の菖蒲/鳥居おさむ
雉子啼く浅間がくれに菖蒲の芽/前田普羅
雑草忌やくざ菖蒲や鬱金に咲く/橋本夢道
かかる昼かかる白さの菖蒲かな/今泉貞鳳
青々と髪に結びし菖蒲かな/阿部みどり女
きぬぎぬにとくる菖蒲の枕かな/松瀬青々
まひまひや菖蒲にあさき水車尻/飯田蛇笏
白菖蒲おもひを凝らすとき翳る/鈴木まゆ
まぼろしの藍ただよへり白菖蒲/草間時彦
むらさきに佇てば白恋う菖蒲園/花谷和子
やや遠目なるをよしとす菖蒲園/大橋敦子
上の香に咲き倒れ居り唐菖蒲/吉岡禅寺洞
黄菖蒲に暮れなむとする水の色/高澤良一
黄菖蒲の黄の映る水平らかに/池内たけし
花のなき菖蒲へ石橋架かりけり/柿本多映
人形はお梶菖蒲は二番咲き/阿部みどり女
花の香につづく水の香菖蒲見る/皆吉爽雨
しやうぶをも水巻となす川辺かな/立/圃
介護して菖蒲を結びくれし吾子/市川春蘭
菖蒲田へ青いホースがひきこまれ/岡田史乃
俳句例:261句目～
日の出前にぬれしや菖蒲花ゆたか/渡邊水巴
折れて浮く菖蒲の葉あり水中花/山口波津女
つくばへる石をめぐりて菖蒲の芽/野村泊月
年寄りにやがて菖蒲の咲く時間/宇多喜代子
小舎人があうらに踏みし菖蒲かな/筑紫磐井
菖蒲売社家のさびれをのぞきけり/高田蝶衣
菖蒲ひらき眉間は武士の裔なるか/古舘曹人
寒垢離やはづれんとして車井戸/為成菖蒲園
紙菖蒲持てり端午の市人とて/長谷川かな女
菖蒲の芽くだつ古葉をまとひたる/高濱年尾
菖蒲挿し手もとにのこる風すこし/古舘曹人
菖蒲園かがむうしろも花暮れて/橋本多佳子
菖蒲忌や鳥たちの河口堰かれけり/豊田剣児
ごったがへす菖蒲田の径譲り合ひ/高澤良一
降られても菖蒲に風情添ふるほど/稲畑汀子
咲きいづる花びら左右となる菖蒲/井沢正江
菖蒲人形つきさしてある畳かな/春日部春二
菖蒲引く手もとつめたき健吉忌/善積ひろし
萎えたれば幕を引きける菖蒲園/佐藤美恵子
又も雨がもたらす暗さ菖蒲池/阿部みどり女
俳句例:281句目～
落とす水菖蒲の中を流れけり/長谷川かな女
葉菖蒲の邪気祓ふ気にあやからん/高澤良一
繃帯より目を出して男菖蒲みる/田川飛旅子
一人づゝ菖蒲の中を歩きけり/長谷川かな女
きれぎれの風が吹くなり菖蒲園/波多野爽波
菖蒲園暮れてもひかる雲のこる/鷲谷七菜子
白菖蒲子を恋ひをれば翳りけり/成瀬桜桃子
矢に切つて明治なつかし菖蒲髪/武原はん女
みちみちの土裂け菖蒲咲きにけり/木津柳芽
けぶるまで見つめ菖蒲のかくれ花/手塚美佐
つむる眼の中まで晴れて白菖蒲/櫛原希伊子
うめ水の菖蒲を打つて落ちにけり/大橋宵火
うなぎ屋に冬の菖蒲がさしてあり/細見綾子
白菖蒲とびたたむまで見てをりぬ/木村ふく
菖蒲刈るをとこ水輪をかさねつつ/関戸靖子
白菖蒲過去なくて人生きられず/稲垣きくの
真青に菖蒲芽立ちて移公子来ぬ/石田あき子
青みどろもたげてかなし菖蒲の芽/高野素十
菖蒲田に温泉の香ながるる朝月夜/松村蒼石
額星に菖蒲結はれてくらべうま/加藤三七子
