季語/花火(はなび)を使った俳句

俳句例:101句目~

浮舟や花火落ちゆく闇のかた/太祇

歳月のように崩れる遠花火/冬木喬

落つかぬ晝の花火や人心/正岡子規

冬花火うち重なつて崩れけり/関正

花のごと花火ひらくや黴の中/楸邨

短日の碧空たたく揚花火/石原舟月

潮曇松の根方の花火殼/文挟夫佐恵

小屋涼し花火の筒のわるる音/其角

夕曇遠くの花火音もなし/正岡子規

方角の錯覚知れり遠花火/萩原正章

夕栄や昼の花火の打終り/子規句集

夕涼み子供花火音すなり/正岡子規

夕涼み花火線香の匂ひ哉/正岡子規

夕涼小供花火の聞ゆなる/正岡子規

脳天を唐竹割りの大花火/丸山嵐人

夕花火虹の浮橋碎きけり/正岡子規

朝花火海水浴の人出かな/高浜虚子

花火見る旅も山下清めく/高澤良一

手花火に二人子の影しなひをり/原裕

海峡に色をこぼして揚花火/岩崎慶子

俳句例:121句目~

手花火に浮ぶ母屋の大庇/菅野あたる

海埋めて一島生まる揚花火/青木重行

揚花火消えゆくときの火は涙/根岸操

揚花火筑紫次郎に屑こぼす/井山幸子

あらぬ方に両国を見し花火かな/麦人

花火揚がるは島の港か夜の秋/中拓夫

手花火のあと深閑と病家族/尾崎光尋

花火打ち了る大川の雨上る/黒田杏子

揚花火表六玉もあがりけり/高澤良一

波打際空にもありて揚花火/都筑智子

おとうとの吃音つづく遠花火/仁平勝

おとといの花火へ戻る姉妹/坪内稔典

花火待つまで美しき警察官/対馬康子

波の音聞ゆる浜に花火待つ/長田一男

手花火のその翌朝の庭の屑/高浜虚子

暗闇に帰らなむいざ大花火/中山蒼楓

花火屑日の衰へに墓小さき/田中裕明

ぎん色の橋となりけり花火ちる/正雄

水樓や欄干によれば遠花火/寺田寅彦

手花火の殻滲まする朝の芝/石川桂郎

俳句例:141句目~

水暗し花火やむ夜の幌俥/芥川龍之介

ご赦免花火の島六島従へて/巌谷小波

花火尽て美人は酒に身投げけん/几董

昼花火空威張して終りけり/藤田湘子

花火尺玉東京湾を凹まする/高澤良一

水摶つて湖さびしうす遠花火/岸田稚

花火垂る夜の泉が声あげて/小林康治

すさまじき長月ころの花火かな/蓼太

手花火の中国産の濃き模様/高木晴子

水底に映れるごとし遠花火/長谷川櫂

花火会城の樹木が障るなり/津田清子

揚花火遠のきてゆく海の空/石原八束

揚花火闇に浮く山恋ひにけり/及川貞

暁紅に花火うちあげ猟解禁/富安風生

だんだんと幼き顔に遠花火/有馬朗人

花火上るはじめの音は静かなり/立子

江山の秋はも昼の花火かな/尾崎迷堂

手花火の火は水にして迸る/山口誓子

水虫や昼の花火の空乾き/村上一葉子

手花火の孫に口数多き夫/桐山/ミヨ

俳句例:161句目~

花火散るとき鉢形城現前す/石原八束

水に消ゆ港花火よ春の夕/佐藤惣之助

花火果て女が痩せて帰りゆく/長田等

花火果て故郷の闇深かりし/佐藤なか

花火果て闇抱え込む雄物川/高澤良一

花火殻落ちて浮べり鯔の暗/前田普羅

花火の夜人の頭の重くして/柿本多映

花火筒馬につけゆく芒かな/吉田冬葉

花火の下潮淙々と流れをり/高澤良一

花火筒馬につけゆく薄かな/吉田冬葉

花火終へ踊りの方へ人動く/森田公司

花火舟良暹法師はしらざりけん/鉄丸

手花火の煙もくもく面白や/川崎展宏

花火船かへり来れり鯔の暗/前田普羅

花火遠く木隠の星見ゆるなり/泉鏡花

花火なし厨の芋のうす赤き/横光利一

花火音立て込む家に谺して/高澤良一

ぱんぱんと鼠と鼠花火かな/攝津幸彦

花火高し遺族の折に鮭一片/中島斌雄

萩叢の鼠花火に足とられ/石田あき子

俳句例:181句目~

萩薄一ツになりて花火散る/正岡子規

萬人の聲に散り來る花火哉/正岡子規

手花火の玉より大き焼夷弾/高澤良一

手花火の男を襲ふ夜の巒気/村越化石

萬人の聲に散り落つ花火哉/正岡子規

行く夏の死花の遠花火かな/坂戸淳夫

西東天下をわかつ花火かな/会津八一

西風に火の流れたる花火哉/正岡子規

話す事なき時の眼に遠花火/吉田俊女

誕生日夜は浜木綿の白花火/吉野義子

花火して頭うごめく橋の上/正岡子規

手花火の童むらがる救急車/三嶋隆英

警察の舟も漕ぎ行く花火哉/正岡子規

やや永く人生はあり冬花火/矢島渚男

花火こだまする深い山肌/栗林一石路

谷深し人の残せる花火殻/田川飛旅子

母のこゑ鼠花火のおしまひに/井上雪

足許の闇濡れてをり遠花火/平賀扶人

身の上や風に流るる揚花火/池田澄子

軍艦も父も写真や花火の夜/脇本星浪