俳句例:101句目~
破魔矢手に生田の森を出で来たる/千原叡子
あだ守る筑紫の破魔矢うけに来し/杉田久女
いつ帰り来しや破魔矢は卓の上/今井千鶴子
破魔矢挿し夜は白妙の睡りかな/ほんだゆき
なほもつて余生働く破魔矢うく/鈴木真砂女
わが門に戻りつきたる破魔矢かな/高浜年尾
破魔矢白し今日いまだ客に触れず/渡邊水巴
一団の誰も破魔矢を手にしたる/久保ともを
三日はや破魔矢をつつむ旅ごころ/古舘曹人
上の字の袋きせ置く破魔矢かな/阿波野青畝
九人目の比古なる孫に美き破魔矢/後藤夜半
今年また破魔矢を挿して壷古りぬ/吉屋信子
児の握る破魔矢の鈴の鳴りどほし/藤田郁子
冷込んで来たる破魔矢をいただきぬ/岸田稚
向妙の破魔矢たづさへ男の子なき/草村素子
新幹線の棚の破魔矢の飛ぶごとし/鈴木栄子
子が持ちし破魔矢の鈴を探しけり/角川春樹
翠張につらぬきとめし破魔矢かな/飯田蛇笏
師を神と畏敬すこころ破魔矢うく/鈴木白祇
船上に破魔矢の鈴の鳴りにけり/大木あまり
俳句例:121句目~
幸矢とて袖をあてがふ破魔矢かな/後藤夜半
摩多羅神破魔矢を放つ天に向け/岡崎泊葉子
月山の月さす破魔矢受けにけり/勝山/耕南
江ノ島の浪と真白き破魔矢かな/佐野青陽人
谷雲にそれてながるる破魔矢かな/飯田蛇笏
海人の子に真紅の破魔矢にぎらしむ/原田喬
海沿ひに破魔矢の鈴の行くことよ/川崎展宏
鈴鳴つて鞍馬を越ゆる破魔矢かな/鈴木鷹夫
電車待つ人の手に手に破魔矢かな/吉屋信子
電車降り月明らかに破魔矢持ち/深見けん二
青き目の舸子海神の破魔矢受く/野中/春艸
瀬戸内の一夜に荒れし破魔矢かな/古舘曹人
一本の破魔矢受けたり軽きかな/稀音家塔九
破魔矢手に今年を恃むこころ切/稲垣きくの
森の冷え破魔矢もつ手に及ぶなり/稲垣きくの
赤ん坊の手のつかみたる破魔矢かな/細川加賀
破魔矢受く子は父となり母となり/長谷川史郊
運ついてまはる破魔矢をうけにけり/山本蓬郎
破魔矢持ち膳所で降りたる夫婦かな/高澤良一
破魔矢持つ人のうしろに鉛筆もつ/小檜山繁子
俳句例:141句目~
授かりし破魔矢の火山灰を払ひけり/梶原宇良
破魔矢挿して一隅寧きくらしあり/稲垣きくの
此の書屋美しと定まる破魔矢かな/阿波野青畝
手に持てる白羽破魔矢に海荒るる/野見山朱鳥
破魔矢うけて帰路八方のわが一路/稲垣きくの
戒名は「雄魂」亡き子の破魔矢受く/香西照雄
年々の破魔矢立てたり高麗古壺/長谷川かな女
孫のやうな巫女に礼して破魔矢受く/和田春雷
破魔矢など天に射れどもむなしさや/山口青邨
破魔矢買ふ母の白息触れしものを/橋本美代子
ひとところ羽離れ深き破魔矢かな/加倉井秋を
壺中なほ去年の闇あり破魔矢挿す/肥田埜勝美
子に破魔矢持たせて抱きあげにけり/星野立子
破魔矢の鈴路ゆづるとき鳴りにけり/山部栄子
破魔弓ややまびこつくる子のたむろ/飯田蛇笏
嫁ぐべき娘に持たせたる破魔矢かな/永井龍男
破魔弓の白矢をたとふ一矢かな/安斎櫻カイ子
人のくれし破魔矢長押に病み通す/稲垣きくの
破魔矢一矢貧しき書架に禅されたり/石田波郷
一壷あり破魔矢をさすにところを得/高浜虚子
俳句例:161句目~
破魔矢受くちひさき生命片抱きに/岡本差知子
歩にあひて鈴のよく鳴る破魔矢かな/山口峰玉
買ひてすぐ羽をいたはる白破魔矢/橋本美代子
おみくじをにぎり破魔矢をかざしゆく/高木晴子
教へ子の巫女より享くる破魔矢かな/松本三千夫
掌に享けて鈴の止みたる破魔矢かな/加倉井秋を
抱きし子に持たせて長き破魔矢かな/松本たかし
破魔矢の巫女なかに一人の眸の大き/和久田隆子
バス揺れるたびに破魔矢の鈴が鳴り/松本穣葉子
金色の一トすぢはしる破魔矢かな/久保田万太郎
破魔矢受く手に手が触るる臨時巫女/竹中碧水史
ぞろぞろとふるさと動く破魔矢かな/甲斐多津雄
受けもどる破魔矢にはつしはつしと日/皆吉爽雨
灯を消してなほ確かとある破魔矢かな/永井龍男
たてかけてあたりものなき破魔矢かな/高濱虚子
生意気小僧忘れてゆきし破魔矢かな/八木林之介
をりからの雪にうけたる破魔矢かな/久保田万太郎
わが句碑は破魔矢かざして詠む句碑ぞ/後藤比奈夫