俳句例:101句目～
ちちぶさの山また山の紫雲英かな/三嶋隆英
とぶ鮒を紫雲英の中に押へけり/水原秋桜子
げんげ野に寝てふるさとの山と空/稲葉光音
げんげ野に枯れてげんげの首飾り/諸岡直子
げんげ野を来て馬市の馬となる/下村ひろし
ままごとの花屋に紫雲英高値なり/上田春日
げんげ野を行くバス車体丸出しに/右城暮石
タラップを降りて紫雲英の風の中/西村和子
一服の茶をげんげ田にかしこまる/太田土男
三十路駈け来てげんげ田に息制す/伊藤敬子
切岸へ出ねば紫雲英の大地かな/中村草田男
吉野郷雲ふかく紫雲英いまだなり/黒木野雨
安達の子の紫雲英を添へて雛流す/宮津昭彦
泥地獄虚ろに紫雲英咲きにけり/軽部烏帽子
海で紺なり紫雲英の上の疾風は/八木原祐計
睡る子の手より紫雲英の束離す/橋本美代子
紫雲英咲き土ほのぼのと安堵村/古賀まり子
往くさ来さ曲るげんげの畦いくつ/下村槐太
紫雲英咲き諸子の入江ここに伸ぶ/大島民郎
紫雲英咲く小田辺に門は立てりけり/秋櫻子
俳句例:121句目～
紫雲英編むなるほど恋に後れたる/大石悦子
紫雲英草まるく敷きつめ子が二人/田中裕明
くれなゐの薩摩げんげ田馬車通る/佐川広治
童女摘むげんげに吾が摘み足せり/塩川雄三
げんげんの畦みちゆけば古墳あり/橋本鶏二
げんげんを見てむらさきの遠雪嶺/大野林火
げんげ摘みて花びらを吹く女かな/渡辺水巴
げんげ束白混れるをよしとせり/五十嵐播水
踏み込んで大地が固しげんげ畑/橋本多佳子
げんげ濃き野なり耶馬台国はここ/品川鈴子
風の吹くまゝに紫雲英を蒔きにけり/小松水花
げんげ田を庭のつづきにして足れり/影島智子
げんげ摘む子等にも出会ひ旅つゞけ/星野立子
余念なく紫雲英を摘むとひとは見む/大島民郎
紫雲英野や虹消えし空まだ濡れて/市ヶ谷洋子
げんげ田のくつがへりあり色のこし/高浜年尾
げんげ田へ膝より降りる菩薩あり/摂津よしこ
ひかり撒くごと父祖の田に紫雲英蒔く/塘柊風
げんげ田やかげれば布團しまはれし/田中裕明
げんげ褥の香もなつかしや疲れ臥し/高田蝶衣
俳句例:141句目～
げんげ田や地に鳥を呼ぶ農夫の鍬/磯貝碧蹄館
げんげ野に夕日の海を見てゐたり/伊藤いと子
見下すや紫雲英あふれて田をわかず/原田種茅
げんげ田に鉄の性器のけぶりをり/小川双々子
げんげ田にくれなゐ暗き彼方あり/赤松ケイ子
げんげ束足下に置きてミサ始まる/加藤かけい
げんげ田に下駄さがすうち月が出た/青木健作
げんげ鋤いて代掻く頃の風雨かな/大須賀乙字
蛇籠あみ紫雲英に竹をうちかへし/水原秋櫻子
ましぐらに汽車が来た下の田げんげ/北原白秋
げんげ田を沖へ向つて行くごとし/橋本美代子
げんげ田の母が泣き出す火のやうに/栗林千津
臥したきを耐へ来し日々ぞ紫雲英風/香西照雄
げんげ田に息ひそめたる子を捜す/岡原美智子
亡き父母にあふ日はいつぞ紫雲英咲く/堀口星眠
みづうみにみづあつまれる紫雲英かな/千葉皓史
血の気なくなりし老父と紫雲英摘む/百合山羽公
げんげの朝風の中のががんぼよ/冬の土宮林菫哉
紫雲英に雲、子と離る日は思ふまじ/成瀬桜桃子
げんげ田に新妻おけば夕日匂う/赤城さかえ句集
俳句例:161句目～
共同耕耘を慾りげんげ田実となつた/吉岡禅寺洞
げんげ摘んで戻りしに病児寝てゐたり/野村泊月
げんげ田や一蝶もゐず花ざかり/五十崎古郷句集
げんげ田の鋤かるる匂ひ遠くまで/阿部みどり女
げんげ田の降りきし羽織かつぎゆく/金尾梅の門
げんげ田や花咲く前の深みどリ/五十崎古郷句集
げんげ田のうつくしき旅つゞけけり/久保田万太郎
げんげ田を鋤けとつばめにせかされて/長谷川素逝
わがゆけばわが朝日影げんげ田に/五十崎古郷句集
げんげ田やかわずは湖の蘆の中に鳴く/荻原井泉水
紫雲英野の閉ざせどせんなきごとき門/加倉井秋を
紫雲英田に摘むは紫雲英を踏みしこと/藤原比呂子
げんげ田のつゞきて名古屋ちかきかな/久保田万太郎
紫雲英摘みたりあなたの胸に投げようか/鈴木しづ子
紫雲英に転がる忠誠ともあれ愛棄つまじ/磯貝碧蹄館
寂しきものを紫雲英は花の盛りに苅れ/冬の土宮林菫哉
遠い日もだつた頬擦りげんげのこの冷たさ/伊丹三樹彦
