「外套」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「外套」について
【表記】外套
【読み方】がいとう
【ローマ字読み】gaito
子季語・関連季語・傍題・類語など
・オーバー(おーばー:oba)
・オーバーコート(おーばーこーと:obakoto)
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季節による分類
・「か」で始まる冬の季語
・「冬の生活」を表す季語
・「三冬」に分類される季語
月ごとの分類
外套を含む俳句例
外套や人百態の色一つ/林翔
外套の毛皮鉄砲傷残る/品川鈴子
朝々や外套古き日済貸/尾崎紅葉
外套の肩の断崖孤独かな/不破博
教壇を去りて外套今も黒/森田峠
鶏頭に外套長き毛氏の像/横山房子
玉砂利の初日に帽子外套置く/篠原
外套の士官は乙女社会鍋/岩崎照子
外套や館の出口は横町に/藤後左右
外套や雄を誇れぬ野鳥園/石川桂郎
重さうな外套やその鴎外忌/森田峠
外套の奥の喪服に凍徹る/飯田龍太
箪笥憂し服に外套にわが歴史/林翔
社会鍋守る外套の裾長し/岸風三樓
外套を深々と著て玄関に/高木晴子
なほ壁に外套疲れし姿なす/岸田稚
外套や曾我殿原の痩我慢/尾崎紅葉
外套の嶮しき胸を湖の前/古舘曹人
外套や白き鴎を入江にて/草間時彦
外套が雫だらけの春の雪/右城暮石
俳句例:21句目~
外套も疲れ釦穴瞑らず/田川飛旅子
外套や落魄の肩崩れそめ/小林康治
外套の皺が街ゆくにはか寒む/林翔
外套の裏緋色なる妻の勤/香西照雄
外套に考えし皺残りけり/恒藤滋生
外套や或日物憂き五十肩/石塚友二
外套の肩尖るとき山の音/草間時彦
外套に闇密着す非常線/榎本冬一郎
外套の裾切れ街は春埃/米沢吾亦紅
修道士黒き外套着て若き/大塚千舟
愛恋や外套おもき春と思ヘ/齋藤玄
外套や鬱々として市の裡/河野南畦
外套の重き日のあり軽き日も/永井良
外套の厚地よ父も亡き人に/小口雅広
外套の大人と歩む子供かな/千葉皓史
外套の大股美術館めざす/赤松けい子
外套や語らざること妻知らず/不破博
外套の奥は枯野へ続きけり/鳴戸奈菜
つくろへり我は外套鴉は羽/木下夕爾
外套を翅の如くに着工歩む/萩原麦草
俳句例:41句目~
外套を盾とし過ぐる行者滝/桂樟蹊子
外套や見れば小さく彦根城/岸本尚毅
外套の泥はね一つ灯に戻る/細見綾子
外套を脱ぎて弱気の虫動く/藤井彰二
外套の老いたる父にふと遅れ/三谷昭
喫泉に飲むオーバーの翅ひろげ/林翔
外套を掛けし俥の初日かな/増田龍雨
傷心の外套といふ重きもの/桜木残花
兵たりし父外套を残しけり/榎本好宏
鮟鱇はゆるき外套着用す/安田千枝子
参観の春外套を腕にたたみ/遠藤梧逸
父の世の外套はやる港町/古賀まり子
外套が長くて海は遠すぎて/櫂未知子
外套の胸の底まで荒野かな/草間時彦
外套に天の重さや働ける/徳永山冬子
父と子の外套紛ひ母も老う/吉屋信子
外套は夜更の街を歩み去る/長谷川櫂
外套に沁む月光や言葉なし/中島斌男
外套の脇にかいこむ杖細し/島田青峰
暗がりに外套ならぶ昭和かな/徳弘純
俳句例:61句目~
外套に荒ぶる魂を包みゆく/長谷川櫂
坂登る黒き外套は吾が世界/細見綾子
外套を四円に売るや春寒し/河野静雲
戦傷兵外套の腕垂らしたり/加藤楸邨
外套に風少し出て夜店の灯/島田青峰
外套の衿立てて人許さざる/鈴木まゆ
外套のその儘通る夜更かな/尾崎紅葉
外套と持物ひとつが革命家/筑紫磐井
都府楼址一外套のたゝずめる/森田峠
奇蹟なし外套の脚地に生えて/三谷昭
外套をしつかと抱へ納得す/猿山木魂
出船あり春外套に夕日沁む/草間時彦
外套重し何起るとも驚かず/津田清子
外套を車窓に吊つて日本海/藺草慶子
生き難く生きて外套裏も黒/中村明子
外套の下は僧衣の足袋白し/島田青峰
外套を脱ぐ胸白く旗模様/池内友次郎
玉羅紗の外套着たる冬の蝶/久米正雄
白き手に外套托し軽き疲れ/田中冬二
外套の中手がもえる朝の城/大井雅人
俳句例:81句目~
外套やさゞめき後に街頭へ/島田青峰
外套の重きに減りて靴悲し/橋本鶏二
月光の外套のま.ゝ歩み入る/中島斌雄
東道の心ゆるめず外套著る/保田白帆子
あをぞらに外套吊し古着市/阿波野青畝
毛皮すてゝ外套かろく空蒼し/渡邊水巴
深夜来て不明の外套富士裏に/攝津幸彦
聖堂のミサや外套着しままに/山田尚子
脱ぎ捨てし外套の肩なほ怒り/福永耕二
薔薇色の肺に外套を黒く着る/日野草城
被つて袖通す外套農夫の旅/田川飛旅子
また一人外套掛けに外套を/成瀬正とし
わがゐしは外套の中雪まつり/矢島渚男
裏返しせし外套も着馴れけり/相馬遷子
裸婦像は暗し外套群がりて/加藤三七子
風邪の夢さめて外套壁に垂る/岸風三楼
ダブ~の外套引つかけ水見舞/清原枴童
オーバーに出際に抱きし吾子の毳/篠原
オーバーの裾長にして老教授/田村了咲
ルージュ濃く外套黒く霧はしり/三谷昭