「冬菫」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「冬菫」について
【表記】冬菫
【読み方】ふゆすみれ
【ローマ字読み】fuyusumire
子季語・関連季語・傍題・類語など
・冬の菫（ふゆのすみれ：fuyunosumire）
・寒菫（かんすみれ：kansumire）
–
季節による分類
・「ふ」で始まる冬の季語
・「冬の植物」を表す季語
・「晩冬」に分類される季語
月ごとの分類
冬菫を含む俳句例
樟脳の匂ひの父や冬菫/林桂
唇のはや色失せぬ冬菫/龍岡晋
冬菫校舎の上に海展け/宮津昭彦
冬菫咲く万貫の巌を割り/藤井亘
冬菫絶壁となる乳房かな/杉田桂
冬菫少年拳で嗚咽せり/齋藤愼爾
冬菫水透明に発光し/長谷川かな女
語尾甘き親を日向に冬菫/栗林千津
わが齢わが愛しくて冬菫/富安風生
若き死を悼み尽せず冬菫/水原春郎
白墨の匂かぎいる冬菫/宇多喜代子
渓空に仰ぐ日疎し冬菫/下村ひろし
風呂敷に形見を包む冬菫/伊藤敬子
冬菫外浜の砂の荒れ易き/八十島稔
冬菫少女は歌を紡ぎ居り/石崎素秋
墓を守る歪なクルス冬菫/尾田明子
冬すみれ雲白き日は雲を恋ひ/大串章
離宮田の畦のひとつに冬菫/根岸善雄
さびしさの冬菫買ふ墓参帰途/及川貞
陽に遠く機屋の端の冬菫/梶山千鶴子
俳句例:21句目～
言霊の熊野の山の冬すみれ/高須ちゑ
藁葺きの王妃の館冬すみれ/三国眞澄
又会ふ日確かめぬまま冬菫/高橋静子
ゆがみたる須恵器の口や冬菫/久保寥
わが影に添ふ光あり冬菫/秋元草日居
わが影のさして色濃き冬菫/右城暮石
冬菫買ひて明るき日の中へ/丹羽啓子
篠原やおもひのままに寒菫/木津柳芽
笑顔もておのが盾とす冬菫/旗/こと
一臂折れ一茎全し冬すみれ/西本一都
冬すみれ搾乳へ牛連れ啼いて/及川貞
冬すみれ本流は押す力充ち/齋藤美規
冬菫母の句集に母生きて/岡田晏司子
昔より病む天なりき冬菫/河原枇杷男
冬すみれ石垣は波音に慣れ/山崎正枝
冬すみれ遺品の杖の土乾く/仙田洋子
冬菫空に瑕瑾のあるごとし/齋藤愼爾
貌おもひ出さぬ日もあり冬菫/谷口桂子
雲と鳥みることもなき冬菫/大木あまり
ひとり来て墓のうしろの冬菫/勝又一透
俳句例:41句目～
やがてみ墓に冬菫咲くを思ふ/松村蒼石
イマージュの内出血の冬すみれ/高岡修
ハンカチをていねいに折り冬菫/桂信子
三面鏡に部屋中うつる冬すみれ/岡本眸
仮の世のほかに世のなし冬菫/倉橋羊村
冬すみれ吾子に聖句を口うつし/長田等
冬すみれ心の張りに慧可断臂/西本一都
冬すみれ永久保存の詩篇あり/川本洋栄
冬すみれ汝も平家の裔として/津田清子
冬すみれ長者ケ原の高みかな/伊藤通明
冬菫厨子玉虫のひかりあふ/岡部六弥太
冬菫かけがへなき受苦もあり/友岡子郷
冬菫草にまみれて濡れてをり/瀬在苹果
勝ち牛も負け牛も踏む冬すみれ/石寒太
城山に間道のあり冬すみれ/佐藤八百子
声にせば失ふごとし冬すみれ/中村汀女
妻に現れわれには隠れ冬菫/相蘇としお
帯ほどに暖流が見え寒すみれ/本宮鼎三
帯織るや中庭に咲く冬菫/長谷川かな女
憩へと亡父のこゑする冬菫/つじ加代子
俳句例:61句目～
火の国へ赴任の友や冬すみれ/橋本瑞枝
石垣に冬すみれ匂ひ別れけり/室生犀星
空谷に岩の声あり冬すみれ/伊丹さち子
胸に湧く別れの曲や冬すみれ/仙田洋子
色深し朽葉のもとの冬すみれ/遠藤はつ
冬すみれ濃し人妻となりしのち/嶋田麻紀
しやがむとき女やさしき冬菫/上田五千石
寒すみれ地球がゆるぶねと瞠る/古沢太穂
寒すみれ摘まれ来しこと誕生日/後藤夜半
石ころの相倚りむつみ冬すみれ/山口青邨
絵硝子の一色の寒すみれ買ふ/神尾久美子
冬菫この世四五日離れたきに/河原枇杷男
冬菫かたまつていてどれも毒/宇多喜代子
磐石の割れ目に咲きて冬すみれ/津田清子
井戸堀の地響き浴びし冬すみれ/鈴土郁子
歩くこと好きで楽しく冬すみれ/石川文子
母の歩の小さくなりぬ冬すみれ/川野洋子
海の日が眠たさ誘ふ冬すみれ/五所平之助
ひとや先われや先なる冬すみれ/橋石和栲
冬菫集めカシミール地方を思う/中北綾子
俳句例:81句目～
犬より荒き少年の息冬すみれ/鍵和田釉子
輝いて煮ゆるひじきや冬すみれ/山西雅子
いかを干す手のひらひらと冬菫/国武十六夜
少女期の尾が見えており冬すみれ/寺井谷子
冬すみれ濃しサーカスの天幕の中/内藤吐天
冬すみれ手に採りもせず山ぬくし/内藤吐天
冬すみれ小さき影濃くなげかるる/内藤吐天
冬すみれ富士が見えたり隠れたり/川崎展宏
冬菫フォッサ/マグナはここから海/原田喬
冬すみれ嬉しき言葉秘めきれず/野田ゆたか
ふり向けど風のこゑのみ冬すみれ/吉岡好江
冬菫しゃがむつもりはないけれど/池田澄子
遠ざかる人のにはかや冬すみれ/上田日差子
大和の土となるそれもよし冬菫/小澤満佐子
いちまいの雲のあかるさ冬すみれ/伊藤敬子
子を生まぬこと冬菫愛さぬこと/夏井いつき
ありしと思ふところにありし冬菫/勝又一透
冬菫みつけしことは秘めておかむ/成瀬桜桃子
病衣脱ぎ留守居のつもり冬すみれ/阿部千代子
ふるきよきころのいろして冬すみれ/飯田龍太
