「冬の雲」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「冬の雲」について
【表記】冬の雲
【読み方】ふゆのくも
【ローマ字読み】fuyunokumo
子季語・関連季語・傍題・類語など
・冬雲(ふゆぐも:fuyugumo)
・寒雲(かんうん:kanun)
・凄雲(せいうん:seiun)
・蝶々雲(ちょうちょうぐも:chochogumo)
・富士の笠雲(ふじのかさぐも:fujinokasagumo)
–
季節による分類
・「ふ」で始まる冬の季語
・「冬の天文」を表す季語
・「三冬」に分類される季語
月ごとの分類
冬の雲を含む俳句例
禅林の冬雲動く潦/高澤良一
冬雲や毎日通る肥車/前田普羅
一塊の冬雲巌より重し/乃木楚人
坐禅堂上を粛々冬の雲/高澤良一
大空に飛石の如冬の雲/高浜虚子
冬雲は静に移り街の音/高濱年尾
巌石の如き冬雲日をかくし/上野泰
戦艦の如く冬雲進みけり/本居三太
黒雲の冬雲を見て牛怒る/萩原麦草
明暗に山肌分けし冬の雲/杉田竹軒
壁穴や内外もなき冬の雲/栗生純夫
冬雲を截るや庭師の大鋏/山田健弘
倒木が沼に落ち込む冬の雲/斉藤節
冬雲を隕つるひかりに櫟原/瀧春一
伊吹嶺や風の象に冬の雲/辻恵美子
人遠く思へる時よ冬の雲/高木晴子
大食の粗食冬雲日を匿す/右城暮石
ほんやりと峰より峰の冬の雲/惟然
冬の雲生後三日の仔牛立つ/飯田龍太
冬雲や峯木の鴉唖々と啼く/飯田蛇笏
俳句例:21句目~
冬の雲透かせて洗う試験管/対馬康子
冬雲の厚き手ざはり朴落葉/渡辺恭子
冬雲や父軍艦に朱を掲げ/宇多喜代子
冬雲や磔像のごと特攻碑/八牧美喜子
冬雲の明るさに照り勝る梢/高澤良一
冬雲や竹のまなかに担ぐ人/小川軽舟
冬雲を背に垂訓のおん姿/下村ひろし
冬雲の蓋豊岡にかかりをり/京極杞陽
雲動いても動いても冬の雲/稲畑汀子
冬雲の穴の青空移りゆく/猿橋統流子
移転の荷冬雲載せて傾きて/津田清子
馬子唄に冬雲あそぶ浅間山/岡澤康司
冬雲に錦帯橋のとどきけり/荘所亀子
冬雲のはなやぎに充つ初老びと/原裕
冬雲におしつけられし山の線/京極杞陽
野に赭らむ冬雲誰の晩年ぞ/堀井春一郎
隠れ田の水冬雲を遊ばする/鷲谷七菜子
灯るまで冬雲まみれ常夜燈/大峯あきら
東京の上の冬雲襤褸のごと/松本たかし
覆ひ来る塚の名残りや冬の雲/立花北枝
俳句例:41句目~
傾山と祖母山と連なり冬の雲/後藤緒峰
冬の雲一箇半箇となりにけり/永田耕衣
冬雲を踏まへ帆桁を洗ひをる/石田勝彦
ぼんやりと峯より峯の冬の雲/広瀬惟然
葬列に見知らぬ身内冬の雲/赤松けい子
冬雲に溢るる精気見たりけり/高木喬一
海見えて芙美子流転の冬の雲/岡澤康司
冬雲や釣り上げ鯛の眼の光/東洋城千句
冬雲の三日月の金つゝみ得ず/野澤節子
冬の雲捨田の水の黝みたる/豊長みのる
冬雲の大きしじまに歩み入る/古沢太穂
冬雲の折々星をかすめけり/石島雉子郎
冬の雲土手築く町の果さびし/富田木歩
或時やフハリと遊び冬の雲/松根東洋城
冬雲の行方を誰が知りませう/三橋鷹女
冬雲の隣雲なすはただならね/太田鴻村
大山の吹き飛ばし居る冬の雲/引田逸牛
冬雲をぬぎし一とき遠浅間/寺島きよ子
其大を比すべきものに冬の雲/松瀬青々
屋根に干す煎餅冬の雲に隣る/田川飛旅子
俳句例:61句目~
卵黄のごとくに日あり冬の雲/阿波野青畝
日をつつみ己れ寒むがる冬の雲/西本一都
ビル巨体冬雲遠く寄らしめず/細木芒角星
中年や冬雲に光りこもらせて/柴田白葉女
冬雲がつきはなしたる兵士の墓/熊谷愛子
冬雲が翳抱く故郷乳房さがす/伊丹三樹彦
冬雲の北のあをきをわが恃む/橋本多佳子
冬雲の池にうつりて魚動かざる/寒川鼠骨
冬雲や波郷が詠みし山毛欅峠/牛山一庭人
いそがしや脚もやすめぬ冬の雲/斯波園女
かへりみる墓ぬく~と冬の雲/佐野青陽人
あつまつて来て冬雲となる伊吹/山田松寿
ペンさしてインキ壺あり冬の雲/福田蓼汀
一生の負ひ目とならむ冬の雲/金箱戈止夫
呼びあえる冬雲生きて走られず/寺田京子
すべすべの師の手吾の手冬の雲/斉藤夏風
父の忌の冬雲動くこともなし/津田汀々子
遠に冬雲夫の域には入り行かず/中村明子
冬雲をわれは日暮にばかり見る/下村槐太
実のあるカツサンドなり冬の雲/小川軽舟
俳句例:81句目~
ちぎれても厚き冬雲みちのくは/八牧美喜子
コンパスの一肢がおどり冬雲刺す/小暮洗葦
熔岩をゆき冬雲厚き日なりけり/山口波津女
この橋を駈けたら逢える/冬の雲/松本恭子
冬の雲舞ひたはむれて暮れにけり/石原龍人
妹手拍つ冬雲切れて日が射せば/中村草田男
冬の雲那覇はかなしきことばかり/河野静雲
冬雲は薄くもならず濃くもならず/高浜虚子
冬雲を山羊に背負はせ誰も来ず/百合山羽公
だしぬけにわたされしビラ冬の雲/木下夕爾
冬の雲その後は杖も冷えしまま/宇佐美魚目
山羊なども気荒き日なり冬の雲/百合山羽公
冬雲に機音何処かしのび寄る戦火/山岡敬典
わたつみを抱く陸めける冬の雲/阿波野青畝
冬雲のまばゆきをつつみ空暗し/川島彷徨子
冬雲に眼が乗りてゆく樹林を出て/桜井博道
病む窓の日射しさへぎる冬の雲/並松生代女
一日ゆれ冬雲たたくヘリコプター/桜井博道
バルセ口ナの冬雲よごれた旅の髪/小木ひろ子
冬雲負いうごめくは丸太の皮を剥ぐ/古沢太穂