俳句例:101句目~
ゆらゆらと舟をつなぎて冬の川/星野椿
峡の冬川昼は流れて夜は激ちぬ/森澄雄
人体のどこかで冬の川に寄る/津根元潮
冬の川しづかに天を隔てつつ/徳本映水
棲家とづ閑の冬川あきらかに/飯田蛇笏
冬の川はなればなれに紙ながる/桂信子
冬の川励み流るゝ瀬あるかな/尾崎迷堂
冬の川寝覚の床を裂き流れ/野見山朱鳥
冬の川己れにひびき流れをり/辻恵美子
石抛り冬川すこし目覚めさす/石川文子
糸引いて石這ふ蜘蛛や冬川原/鈴木花蓑
冬の川曲がりしあとは光のみ/仙田洋子
冬の川流れゐるとも思はれず/小山白楢
金管楽器冬川に水足らざりき/吉井幸子
冬の川潮うすうすと上りつめ/松村蒼石
鶏毟るべく冬川に出でにけり/飯田龍太
鹿の出て冬川寥とゆきにけり/古舘曹人
夜はふかく地に沁み冬の川曲る/近藤実
冬河に誰呼びおるや谺なし/石橋辰之助
巻尺を出し切り冬の川に沿う/和田悟朗
俳句例:121句目~
師のもとへ冬川の破橋わたる/石川桂郎
渡り石踏み濡れてあり冬の川/岩木躑躅
渦解きて荒瀬のり越す冬の川/前田普羅
鉱山の町や舟著く冬の川/長谷川零餘子
猪裂きし手を洗ひをり冬河原/角川春樹
すべて打消す冬の河逆波立ち/津田清子
あをあをと冬川底の藻がうごく/中拓夫
冬の河ふたつ渡りて旅となる/石井薔子
冬の河崖より芥投げ捨てられ/沢木欣一
やすき瀬や冬川わたる鶴の脛/高井几董
日ざしつつ冬の河幅現はるる/松村蒼石
冬川といのちの間の滾ちけり/齋藤愼爾
冬河の辺にて戦車を童ら囲む/伊東宏晃
流れ来るもの一つなき冬の川/五十嵐播水
沿ひ行けば夜の雲うつる冬の川/山口誓子
神田川冬川にしてなほよどむ/吉田北舟子
みづからの音に暮れゆく冬の川/米山露女
木を挽いて音あを~と冬の川/秋元不死男
捨てられて菊なまなまと冬の川/古舘曹人
我が胸に流れて歇まず冬の川/石田あき子
俳句例:141句目~
大原女に鼬逃げゝり冬の川/長谷川零餘子
冬川の流れにこころ合はせつゝ/秋田裕弘
冬の川身を脱けゆくは婚の燭/長谷川秋子
冬川に沿ひ生きてをり死んでをり/秋澤猛
冬の川誰もが己が影を捨てに/長谷川秋子
冬川に鯊釣る死相かがやかせ/殿村莵絲子
冬川原広やかに建ちぬ芝居小屋/鈴木花蓑
冬川の葦に憑かるることもあり/保坂敏子
冬川の底流れゐて亡父泛かぶ/新谷ひろし
人を焼くほのほがたたく冬の河/黒田杏子
冬の河さびしき過去の翳もてる/伊東宏晃
冬川につきあたりたる家族かな/千葉皓史
冬の河われに嗅ぎより犬去れり/加藤楸邨
院事妻事抜け醫師冬の川を跳ぶ/藤後左右
冬の河浅みの澄みのけふも暮る/松村蒼石
冬の河渡舟に犬を立たせ来る/岡部六弥太
冬川の末はひかりとなりにけり/谷野予志
冬川の家鴨よごれて集ひけり/河東碧梧桐
冬河原故人はバスからも降りず/今長谷蘭山
こころの北側とは冬川の流れかな/齋藤愼爾
俳句例:161句目~
孔子像みたびたしかめ冬河越ゆ/久保田慶子
冬川に音して舟の投げ釣瓶/吉武月二郎句集
森ふかく入り来ぬ冬の川とわれと/木下夕爾
冬河のきらきらきらわが没主体/小川双々子
冬の川腰くだけたる石の橋/閻魔/河野静雲
冬の川見るための眼をつかひけり/藤岡筑邨
亡きひとの名を呼び捨てに冬河原/福田甲子雄
孤児わらうわらう冬河あるばかり/石橋辰之助
冬の川キンキンたればふところで/富澤赤黄男
冬河へ突き出し寒き一枚の耳にうつし身すがり眠れる/谷井美恵子