俳句例:101句目~
寒星にどの夜もどこかに雲白し/篠原
天狼の光りて豆腐凍りけり/野木与情
冬銀河歳月をもて測る距離/辻美奈子
塵芥の捨場寒星かゞやけり/右城暮石
冬の星足もとに犬来て息す/廣瀬直人
冬銀河畑菜の青を感じつつ/佐野良太
墳山の天狼父にまぎれなし/角川春樹
墳山の真上天狼またたけり/佐川広治
創いたむ風の彼方の冬の星/小林康治
庇合に一つ見ゆるや冬の星/日野草城
窓ぬれて寒星下りて来つつあり/柏禎
東京の悪に触れたる冬銀河/新城杏所
自転車を漕ぐ寒星の宙の中/相馬遷子
極めたる色の白なり冬の星/高石幸平
星冴ゆる歩いて居れば心足る/石昌子
荒星の冷え野天湯に女どち/大橋敦子
荒星の掴む近さや初薬師/曽根原幾子
荒星や深くは眠れざる男/夏井いつき
星冴ゆる枚を銜んで六百騎/寺田寅彦
上蔟や荒星ひとつ森を出づ/岩永佐保
俳句例:121句目~
冬銀河青春容赦なく流れ/上田五千石
金属のスクスク育つ冬銀河/三浦北曲
青貝の櫛買うて出づ寒昴/文挾夫佐恵
面上の星はいのち火冬銀河/井沢正江
吹き晴れてくらき大地と寒の星/篠原
黒天にあまる寒星信濃古し/西東三鬼
冬銀河まっすぐ届く声を持つ/二村典子
冬銀河何處ぞとあふぐ千鳥足/高澤良一
冬銀河山影かむる和紙の里/柴田白葉女
冬銀河巌より暗く海ありぬ/田中ひろし
冬銀河患者の一語残りをり/岩永のぶえ
冬銀河映して凪げりエーゲ海/毛塚静枝
冬銀河時間過ぎゆくときの音/石田郷子
冬銀河母あることを恃みとす/館岡沙緻
冬銀河真つ向に墓標歩かせる/蔦愁花女
冬銀河紙で切りたる指うづく/平井照敏
冬銀河肩にまはる手真白なる/仙田洋子
冬銀河藁足して馬睡らしむ/木附沢麦青
冬銀河言葉で殺し合ふことを/櫂未知子
凍星の鋲を打ち込む木地師谷/中村翠湖
俳句例:141句目~
友越して半年過ぎぬ冬銀河/矢口由起枝
君寄らば音叉めく身よ冬銀河/藺草慶子
土佐沖の星冴ゆるなり漁始/綿谷ただ志
大吠えて氷湖天狼を真上にす/福田蓼汀
天幕を畳むサーカス冬銀河/小田実希次
天鳴りて寒星青き火を散らす/相馬遷子
女盛りのマチ子と仰ぐ冬銀河/青木重行
寒北斗死にはじめたる後頭部/栗林千津
寒星となるらし土橋は肉の響き/遠藤煌
寒星とまたたき交す受験苦よ/平畑静塔
寒星に懐中燈を向けて照らす/右城暮石
寒星のひとつを引きてわが燈火/岡本眸
寒星の近々と地のぬかるめり/右城暮石
寒星やいのちの果ての北枕/佐藤きみこ
寒星や亡き師の叱咤高きより/池田秀水
寒星や仰げばすでに声は無き/相馬遷子
寒星や北の血脈継ぐために/渡辺誠一郎
寒星や神の算盤たゞひそか/中村草田男
寒星をあほぐ癖つき一周忌/柴田白葉女
寒星をつかむ仕ぐさの子の拳/対馬康子
俳句例:161句目~
寒星をぶちまきし下浮浪がり/平畑静塔
寒星を近々と地のぬかるめり/右城暮石
寒星動きて喪の家に淡き影/加藤瑠璃子
寒昴いま少年にくらい智慧/中尾壽美子
寒昴フルートの音は続きをり/冨田弥生
少年をさかしまに抱き寒昴/増田まさみ
干柿に宇陀の荒星今宵より/大峯あきら
手を洗ひ寒星の座に対ひけり/山口誓子
星冴ゆる窓やワインの杯重ね/吉村容子
母恋し逝きし子恋し冬銀河/清水きよ子
水に浮くもの透かし見ぬ寒昴/石川桂郎
煙突掃除夫が寒星を弾き出す/野中亮介
犬吠えて氷湖天狼を真上にす/福田蓼汀
玉はじけては集ひけり寒昴/市村究一郎
癌病棟夜は凍星にのぞかるゝ/岸風三樓
冬の星屍室の夜空ふけにけり/飯田蛇笏
神の馬目覚めんとして冬銀河/佐野典子
空ふかく凍星月を待ちにけり/松村蒼石
空澄みて光り増したる冬銀河/中村仏船
冬の星明王の眼のごとく燃え/大西淳二
俳句例:181句目~
蜂飼いの友いて冬の星うごく/大西健司
窯火守る傾ぎて大き冬北斗/日比野里江
立ち止まるとき寒星の無尽蔵/木村敏男
美しき名の船が出る冬銀河/池田琴線女
見舞ふたび母遠くなる冬の星/成田清子
足音に追ひつかれさう冬の星/高木晴子
舟よこげよ億光年の冬銀河/岸本マチ子
荒星と吹かるる河豚の一夜干/片田千鶴
ちかぢかと命を燃やす寒の星/相馬遷子
荒星のいま大寒に入るひかり/相馬遷子
月光のあまねくわたり寒の星/松村蒼石
死をもつて消息わかる寒の星/能村研三
淋しさのきはみの寒の星ひとつ/近藤愛
くに唄に母が寝に入る冬銀河/山田諒子
荒星を風が磨くよ棺づくり/大木あまり
さらす身の十七文字寒北斗/吉田三千子
たましいを蹴りつつ還る冬銀河/須藤徹
どの木にも木霊生まるる寒昴/美野節子
一通の投凾函忘れ星冴ゆる/脇本良太郎
鉄道員の襟に届きし冬の星/稲岡巳一郎