俳句例:201句目～
病む僧の蒲団のすそに僧一人/高野素十
牛小屋に牛寝て新婚蒲団干す/宮坂静生
分去れも貸蒲団屋の薔薇も秋/田口彌生
初孫を迎へる布団干しにけり/裏木里美
わが夢を娘に遊学の蒲団縫ふ/丸橋静子
干蒲団ラケツトで叩き十八歳/川崎慶子
干蒲団叩いて日暮れ早めけり/阿部静雄
干蒲団叩き叩きてひとり住み/菖蒲あや
干蒲団富士の白妙差しにけり/高澤良一
短夜の蒲団敷く音起りけり/波多野爽波
着なれたる蒲団嬉しや旅帰り/藤原拈華
干蒲団打てば遠山縷のごとし/飯田龍太
寝積や布団の上の紋どころ/阿波野青畝
小夜ちどり加茂川越る貸蒲団/五車反古
山々を枕に敷きぬ三布蒲団/芥川龍之介
山で見た青空が鳴る布団かな/峠谷清広
山駕籠の蒲団の蠅を払ひ乗る/河野静雲
峰に月襟に蒲団の垢さわぐ/加藤知世子
島渡し教師と蒲団のせて著く/香川静香
巡錫の夜毎そぐはぬ蒲団かな/大谷句佛
俳句例:221句目～
脚のみが見えて畦ゆく布団売/工藤義夫
羽根布団とは軽きもの春立ちぬ/岸田稚
肩蒲団したるえり師がいくたりも/洛水
肩蒲団ねむる容色おとろへぬ/飯田蛇笏
愚痴多くなりたる母の背布団/安田孔甫
春闘や荷台に積み上ぐ貸布団/金子佳子
業平忌赤き蒲団のほされけり/高柳重信
膝入れて炬燵布団の紅うごく/京極杞陽
航空便解けば膨らむ羽根蒲団/品川鈴子
船宿の千鳥染めたる布団かな/会津八一
華やかに炬燵布団の歌ぢらし/福田蓼汀
葉畑の日南わづかや蒲団干/生田花朝女
葬りあと湖に向け蒲団干す/宇多喜代子
蒲団かへて又病床の高さかな/高濱年尾
蒲団から頭を出せば春が来た/佐藤紅緑
昼も見るつれなき人の蒲団哉/高井几董
微酔して蒲団の中に謡ひけり/浜田波静
晩年は軽くかるくと羽根布団/加藤燕雨
母病めり蒲団の上に黒き羽織/大野林火
蒲団干す学生だけの留守家族/高間礼子
俳句例:241句目～
年立つとこゑや隣の蒲団より/高澤良一
蒲団干す裏町未だ日あたらず/柳原極堂
待てば来ず雨の夜寒の薄蒲団/正岡子規
蒲団綿の紙包みなる鏡の前/河東碧梧桐
沼の怪想ふ布団に芦鳴りて/栗林一石路
薄き蒲団に誠の母を夢みけり/竹村秋竹
弦切れし思ひの蒲団被ぐのみ/石塚友二
ビルの間に残る一軒布団干す/中村和子
春めきし布団潜つて遊びし頃/矢島渚男
詩腸枯れて病骨を護す蒲団哉/正岡子規
注連の内狂士の蒲団被くあり/尾崎紅葉
幽明のあはひに翅の布団かな/寺井文子
酔うていつしよに蒲団いちまい/山頭火
鍵穴に蒲団膨るゝばかりかな/石塚友二
雛の夜の布団の端を子と重ね/関戸靖子
新らしき蒲団に聴くや春の雨/村上鬼城
風邪の子の布団の中の宝もの/八染藍子
海の日のそよろと渡る干布団/綾部仁喜
鳳凰もくたびれてをる干蒲団/櫂未知子
海光や屋根に干しある縞布団/館岡沙緻
俳句例:261句目～
年わすれ忘寐に着る蒲団かな/松岡青蘿
父の座に母がすわりて負真綿/吉川宙雨
生徒らに知られたくなし負真綿/森田峠
涙顔嗚呼冷えつらん蒲団かな/飯田蛇笏
湖波は家裏のしらべ蒲団干す/大東晶子
負真綿艶を失ないゆくばかり/岩田朝子
干蒲団日和と妻に謂はれをり/高澤良一
湯たんぽに小高くなりし布団かな/篠原
湯治客あるにはありて干蒲団/清崎敏郎
寒さうに母の寝たまふ蒲団かな/正岡子規
美しき布団息あるごとくなり/五十嵐播水
布団より内股見せて応と起つ/榎本冬一郎
寝ごゝろや火燵蒲団のさめぬ内/榎本其角
美しき布団に病みて死ぬ気なく/森田愛子
いとし子を神護ります蒲団かな/増田龍雨
うたたねに矩鮭蒲団の胸ょりは来ず/篠原
布団より出し一生の手なりけり/遠藤梧逸
小蒲団に夜寒の足をちぢめけり/会津八一
尾瀬小屋の布団新しほととぎす/林田潤子
布団より足先のぞく電波の日/杉田さだ子
俳句例:281句目～
灯合を思ひ出しをり布団干す/加倉井秋を
山賤のうすき布団に病みにけり/清原枴童
眉埋めて闇ぞうれしき蒲団かな/増田龍雨
峡の日や干してはなやぐ肩布団/松井恭子
この蒲団わが人生を知つてをり/猪子青芽
灯ともさぬ瞽女の炬燵の厚蒲団/西本一都
この蒲団幾度君を泊めにけり/荻原井泉水
こんもりと妻の蒲団の山かたち/高澤良一
布団たたむ人を去来す栄華かな/飯田蛇笏
しゝむらは水火の夢の蒲団かな/野村喜舟
布団売ぼそぼそ菊をほめて去る/中尾杏子
羽根蒲団空気の如く身に掛くる/安田晃子
翔べよ翔べ老人ホームの干布団/飯島晴子
ため息をとがめられたる布団かな/龍岡晋
無精さや蒲団の中で足袋を脱ぐ/正岡子規
来てゐたることのわかりし布団かな/左右
枕辺にともしび燃ゆる蒲団かな/西島麦南
枯野晴布団の色をはばからず/鳥居おさむ
とある門に蒲団負ひ入り山眠る/皆吉爽雨
どこかに死高階今日も蒲団干す/西川織子
