季語/蒲団(ふとん)を使った俳句

俳句例:101句目~

死神を蹴る力なき蒲団かな/高浜虚子

死神を蹶る力無き蒲団かな/高浜虚子

母が家の布団の重き朴落葉/森賀まり

法窟といひて煎餅蒲団干す/竹中弘明

少年の日の友と寝る蒲団かな/上村占

流し行く新内我は絹蒲団/東洋城千句

生臭き布団の中やいさな取/野村喜舟

疲れし身横たふ薄き坊布団/高木晴子

山影の迫りてゐたる干蒲団/池田秀水

秋簾布団の上に日のかけら/高澤良一

山里に家々に足る蒲団かな/尾崎迷堂

籾量を胸算用や蒲団かぶり/大熊輝一

絹蒲団重ねても猶旅寝かな/尾崎紅葉

綴糸の萌黄凹みし布団かな/吉屋信子

炬燵なき蒲団や足ののべ心/正岡子規

繚乱の花柄布団風邪ひけり/能村研三

美しき蒲団かけたり置炬燵/村上鬼城

川の渦光る裏窓布団干す/加藤知世子

美しき蒲団干したり十二欄/内藤鳴雪

一人寝の蒲団たたみて牧閉す/森田峠

俳句例:121句目~

聖人に夢なしと聞く厚蒲団/有馬朗人

肩蒲団まで賜わりし湖の宿/鈴木泰子

肩蒲団渓声耳になれにけり/西島麦南

肩蒲団肩に馴れたる夫婦哉/向野幽水

背蒲団狆に著せ紐長く持ち/高浜虚子

胸布団あて裸漁夫網たぐる/高濱年尾

丹前もかけて艶めく布団哉/小澤碧童

腰布団身にあて念ふ母の恩/宮下翠舟

腹這ひて語るも旅の蒲団かな/鞍悦子

布団一重十万億土距たりぬ/西山泊雲

今も重き蒲団を好む宗易忌/鈴木鷹夫

舌垂れし如くに窓の干蒲団/山田凡二

蒲団ほす家の暮しのみられけり/麦南

蒲団まく朝の寒さや花の雪/斯波園女

蒲団まで凍てし固さの狩の宿/檜紀代

蒲団叩けば団地に谺開戦日/奈良文夫

蒲団屋の長女は風を孕みけり/仁平勝

蒲団干され人間臭き船溜り/高橋流石

蒲団干すや旭今輝く城の鯱/鈴木花蓑

蒲団干す小庭を覗く鴉かな/会津八一

俳句例:141句目~

光氏と紫と寝る布団かな/松根東洋城

布団干す名畑の山を渡り鵙/前田普羅

蒲団敷てくれる女や不言/石島雉子郎

布団畳む囚人体温封じ籠め/香西照雄

内海に鱶泳ぐ日の蒲団干し/江里昭彦

布団皺直して布団干せる妻/高澤良一

蒲団盤石疼痛地獄涯しなく/西本一都

原爆忌むき出しに干す布団綿/木田千女

あけくれの布団重たし冬の蠅/石橋秀野

田水落つ母の蒲団の固きまま/永田耕衣

わびしさや旅寐の蒲団数をよむ/炭太祇

厄病神付いて離れぬ布団干す/篠田吉広

厚布団一夜の恩やいとまごひ/岩木躑躅

立職に更けし布団はわが母港/後藤綾子

秋の夜や蒲団をしきに男来る/高浜虚子

一人寝の蒲団の見ゆる牧閉ざす/森田峠

いばりせし蒲団ほしたり須磨の里/蕪村

一宿の恩弥陀に謝し蒲団著る/右田百女

一枚の紅葉こぼるゝ布団敷く/山口青邨

木綿一家展べ餅重ね布団めく/香西照雄

俳句例:161句目~

おもひやめて足のばしたる蒲団かな/占

古人かくて逝きしと想ふ布団かな/碧童

一生一泊布団の跡にぬくき畳/香西照雄

縁に干す蒲団の上の落葉かな/子規句集

上海に背負ひて来たる蒲団かな/日原傳

古綿の腰萎え蒲団干さずんば/石塚友二

古蒲団かぶりだまつて弟病む/菖蒲あや

大兵のかり寝あはれむ蒲団哉/與謝蕪村

さよちどり加茂川越ゆる貸し蒲団/無腸

父の死や布団の下にはした銭/細谷源二

玉子酒僧の炬燵の派手布団/五十嵐播水

せぐくまる蒲団の中や夜もすがら/漱石

干してある蒲団に菊の虻とまる/上野泰

喧嘩して布団離せど遠からず/福永直子

干し布団厚きは稀の客のため/右城暮石

拵へてくれし蒲団に甘え寝る/鈴木花蓑

家中の蒲団を干して海が見ゆ/野木桃花

夜鷹鳴く山小屋蒲団配り終へ/西村梛子

布団干し親子の絆膨らます/竹村幸四郎

信天翁殺して母の羽根蒲団/鳥居美智子

俳句例:181句目~

どの家もみな仕合せや干蒲団/鈴木花蓑

神経科を見舞う脳天蒲団干す/寺田京子

墓地に向き花柄蒲団干せる家/高澤良一

干蒲団ほど新しきものはなし/宮坂静生

ひさびさの旅路草家の干布団/太田鴻村

干布団綿の謀議のふくれゆく/金丸敬子

ひねもすや遠山かくす干蒲団/鈴木花蓑

夜具蒲団かむりしよりの我の闇/上野泰

白鳥の湖畔に泊てて羽根蒲団/品川鈴子

干布団荒磯の潮つぶやける/水原秋桜子

ほととぎす猪牙の布団の朝じめり/抱一

冬の果蒲団にしづむ夜の疲れ/飯田蛇笏

またたきの音静かなる蒲団かな/原月舟

冬物出す妻がもこもこ布団陰/高澤良一

虫眼鏡ころがり出たり蒲団干す/岡猪走

竹秋や蒲団干し居る榛名駕/島村はじめ

むらさきの大紐つけぬ腰布団/鈴木薊子

めつた打ち百花の柄の干し布団/檜紀代

夜具蒲団かむり聞きゐる子守唄/上野泰

布団干す雲の行方を追ひ乍ら/稲畑汀子