「衾」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「衾」について
【表記】衾
【読み方】ふすま
【ローマ字読み】fusuma
子季語・関連季語・傍題・類語など
・掛衾(かけぶすま:kakebusuma)
・敷衾(しきぶすま:shikibusuma)
・古衾(ふるぶすま:furubusuma)
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季節による分類
・「ふ」で始まる冬の季語
・「冬の生活」を表す季語
・「三冬」に分類される季語
月ごとの分類
衾を含む俳句例
頭へやかけん裾へや古衾/蕪村
稚き仏ぞ被まし菊衾/石塚友二
独寝も肌やあはする紐衾/梅盛
枯蓮や寐つかぬ鴛の古衾/斑象
春の門隠者めかするつり衾/奇淵
郡内の衾重さよ紅薊/島村元句集
消燈後も市井の明さ冬衾/渡辺幻
吾はただ酒に死すべし古衾/暁台
年々の同じ衾に宿下り/松村蒼石
隼を見したかぶりの夜の衾/蕪城
ごつごつと咳する人や紙衾/闌更
雲暗き幾日衾に顎埋め/石田波郷
蕗をとる二足三足衾雪/飯田蛇笏
天竺の案内をせよ古衾/正岡子規
縮緬の紫さめし衾かな/正岡子規
そのかみの伊吹颪や紙衾/斎藤梅子
ひとりねや畳むもかろき紙衾/蝶夢
辻君の衾枯れたる木陰哉/正岡子規
衾被て木の眠る深雪かな/鈴木貞雄
一日を心に描く衾かな/池内友次郎
俳句例:21句目~
下京の一客となる麻衾/上野さち子
巡礼や笈の衾を取り出し/尾崎迷堂
衾引けば独語の息の顔蔽ふ/岸田稚
水鳥や蘆もうもれて雪衾/鈴木花蓑
行悩む身も世も露の粗衾/石塚友二
鶴を聴く衾のすこし臭し/古館曹人
蜉蝣と一つ衾や避暑の宿/大石悦子
藪柑子の彩る落葉衾かな/高田蝶衣
古衾悪魔に黒髪掴まれぬ/藤木清子
兎角して命あればぞ革衾/高浜虚子
冬衾生き身の温さ抗へり/内藤吐天
かしらへやかけん裾へや古衾/蕪村
繕うてやっとさげたる衾かな/杉風
巨燵なき衾や足ののべ心/正岡子規
古衾古人の夢もなかりけり/原抱琴
雨漏や風邪の衾の裾あたり/清原枴童
あをみたる古潭の蕗に衾雪/飯田蛇笏
いたつきや庵春さむき白衾/西島麥南
うそ寒くふぐり匿ふ衾の中/小林康治
かぶり居て何もかも聞く衾かな/樗堂
俳句例:41句目~
ことごとく樹影斜めに衾雪/行方克己
とかくして命あればぞ革衾/高浜虚子
旅衾温もれば想ふ河鹿の音/林原耒井
並び寝の我より低き彼の衾/栗生純夫
二児あればある煩ひや黴衾/石塚友二
亡骸をうづめて寒き衾かな/山本洋子
冬衾終の日までは花鳥被て/野澤節子
古衾寝覚寝覚に句をかゝん/山口鶯子
夏寒き衾や障子明けそむる/石川桂郎
夏衾玉の緒絶えし大き頭よ/巌谷小波
夏衾陥ちたるは腰の力かな/斎藤空華
寒菊の花の衾に寝まりまし/石塚友二
嵩低き病まれし母の衾かな/中嶋昌子
幾夜かは胸凍ばれたり旅衾/松村巨湫
廓ただよべの衾を欄に干す/後藤夜半
御姿は夢見たまへる衾かな/正岡子規
旅の夜の大足投げし衾かな/萩原麦草
足袋脱いで旅寝の衾短かり/萩原麦草
春暁やうちかづきたる古衾/後藤夜半
止利仏師衾裾を刳り春の宵/和田悟朗
俳句例:61句目~
温石や衾に母のかをりして/小林康治
病む秋や衾の裾に妻の重み/石川桂郎
病よし日がつよすぎる夏衾/飯田蛇笏
着てたてば夜の衾もなかりけり/丈草
祖母をたのみの子等が厚衾/松村蒼石
秋霜の降らむばかりの衾かな/原石鼎
絵を見ての倉敷どまり厚衾/北野民夫
著てたてば夜の衾もなかりけり/丈草
薄衾頤のせて待つものもなし/森澄雄
衾中命冱てつゝせぐくまり/高浜虚子
起されてたゝむ衾や去年ことし/素山
身ひとつのさうざうしさよ紙衾/蓼太
こおろぎのわやわや這入る衾かな/一茶
久闊や風邪の衾を出でゝ逢ふ/清原枴童
なつかしむ衾に聞くや馬の鈴/夏目漱石
矢衾の豆腐かなしき針供養/金子伊昔紅
身の衾海のおもての夜寒かな/椎本才麿
初夢のおどろ衾に寝がへりて/石橋秀野
夜の衾心にはかにとらへかね/中村汀女
啓蟄の衾あまらずわけあひぬ/清水基吉
俳句例:81句目~
朝日影衾にとどききりぎりす/下村槐太
初夢のはかなくたのし古衾/高橋淡路女
降る雪に老母の衾うごきけり/永田耕衣
肩衾母にならひて着る夜かな/金子翠羽
脱ぎ給ふ御衣は天下の衾かな/服部嵐雪
夏衾をし鳥の画もなかりけり/子規句集
体おもくねぬくもりたる春衾/飯田蛇笏
木犀や屋根にひろげしよき衾/石橋秀野
霜葉の明日にまどろむ旅衾/百合山羽公
藷蔓を衾ちちろの鳴けるなり/高澤良一
虚実なく臥す冬衾さびしむも/野澤節子
人吉の雨にわびしき衾かな/阿波野青畝
亡父亡母深夜衾に入れば見ゆ/高室呉龍
ありあれば鴛鴦の衾に恨かな/大塚羽山
わが衾明けつつ霜の積りゐぬ/西村公鳳
衾の肩抱けば柔か母死なせじ/中村金鈴
衾ふんで霜の宿せうきりす/加舎白雄
旅衾狐狸の裾野も思ひ寝る/百合山羽公
寐まらんとすれど衾の薄くして/夏目漱石
秋の夜の身になれそめし衾かな/西島麦南