俳句例:101句目~
煖房なき車中毛糸を編みつゞく/右城暮石
煖房にいよいよ風邪を意識せる/内藤吐天
煖房車黙せばいつも冨士があり/加藤楸邨
暖房車富士を見しあと子は眠り/渡会昌広
暖房に子笑みてのむコゝアかな/高木晴子
護謨の葉の一葉一葉に煖房利く/右城暮石
スチームの甚だ熱し蜜柑むく/市川東子房
税務署の暖房暑からず寒からず/相馬遷子
スチーム寒し光の雨の降る映画/宮坂静生
暖房車青年チエロを立てて坐す/大山さちを
暖房やされど珠江の水の荒レ/久保田万太郎
暖房の椅子にねむたきぬひぐるみ/西村和子
あやとりの川がゆれをり暖房車/本多ちづ子
暖房のよくきくエスペラントなり/松澤雅世
暖房のすぐ利き過ぎてしまふ部屋/小川立冬
煖房や造花生花のわかちなく/阿部みどり女
煖房車わが旅昨日よりはじまる/山口波津女
ポケットベル隣で鳴り出す暖房車/寺岡棲子
暖房に日比谷公園みゆるかな/久保田万太郎
抱きし子を取り落しさう暖房車/片山由美子
俳句例:121句目~
暖房車に子の泣声の湧きて醒む/田川飛旅子
組む脚をほどく煖房利いて来し/今井日記子
暖房がどかんと入れりぎっくり腰/高澤良一
暖房車爪先触れてチェロ/ケース/鈴木栄子
暖房や造花生花のわかちなく/阿部みどり女
カタコトとスチームが来る室の花/富安風生
放送のなき気易さに酔う暖房/長谷川かな女
屋根に雪のせて煖房車すれちがふ/内藤吐天
更けて帰れば煖房甘し二階住み/平井さち子
暖房完備つまらぬ家となりにけり/那須淳男
煖房のソファーに吾が輩は猫である/星野紗一
煖房にホテル夜更けの事務をとる/山口波津女
更けゆく夜暖房の奥に海鳴りす/阿部みどり女
手をこすりつゝ云ふ暖房入れやうか/高澤良一
スチームにともに凭るひと母に似し/石田波郷
スチームに向けばうしろ姿となる/加倉井秋を
スチームのほどよく通り夜の汽車/高木/桐舎
暖房車に髪膚饐えつゝ旅果てず/竹下しづの女
暖房や聞くともなしに司書の私語/片山由美子
暖房効きバネ抜けしソファをも使ふ/津田清子
俳句例:141句目~
薄給や汽車のスチームに足掛けて/猿橋統流子
コール/ボタンゝと紅くして煖房たり/富安風生
暖房にビールの酔のいまださめず/久保田万太郎
スチームのパイプのかすかなる曲り/加倉井秋を
岩波文庫といへども煖房の書肆に漁る/石田波郷
スチームを入るゝ老吏の手順かな/三浦/まさゑ
スチーム熱し眼だけ拭へる車窓のくもり/原田種茅
スチームとまりし夜の壁の厚さひしと負ふ/原田種茅