俳句例:101句目~
うち晴れて家の夫婦も袷かな/岡本松浜
袷着て唐招提寺まで来たり/松根東洋城
袷着て律義に腰を掛けてをる/京極杞陽
おのづから心したがふ袷かな/奈良鹿郎
お形見の袷著る折なかりけり/森川暁水
けふよりの袷に著かへにけり/森川暁水
しまりくる後の袷や三日四日/加藤郁乎
つれ立つて両国わたる袷かな/角田竹冷
二日三日身の添ひかぬる袷かな/千代尼
亡き母の袷の似合ふ歳となり/川口咲子
仁和寺に入る稚子二人袷かな/塩谷鵜平
初袷ひと日の皺をたゝみけり/奈良鹿郎
袷著て仮の世にある我等かな/高浜虚子
袷著て女房ぶりやちりはらひ/森川暁水
袷著て花柚の下の匂ひかな/岡本癖三酔
襤褸袷赤大名の曼珠沙華/久保田万太郎
初袷仕立て祝にはべらばや/佐藤ともえ
初袷老梅いまだ葉に出でず/佐野青陽人
強弓を引きしぼりたる袷かな/子規句集
旅したき思ひそゞろに初袷/高橋淡路女
俳句例:121句目~
松風をうつつに聞くよ古袷/芥川龍之介
楚々として飄々として袷著て/稲畑汀子
頑なに情うすからず袷人/阿部みどり女
楼棄てゝ園林踏める袷かな/東洋城千句
母老いぬ袷の肩のほそく落ち/田中冬二
袷着て牡丹にむかふあしたかな/松岡青蘿
袷著ててんてんうごく女房かな/森川暁水
行李の底の忘じ果て居し袷かな/尾崎迷堂
袷縫ふ明日より僧となる夫に/豊田いし子
聟定まりし大商人の袷かな/長谷川零餘子
けふよりの袷病衣やきりん草/深川正一郎
袷着て狂ほしきものわれになし/井沢正江
市人恋うて街歩くなり絹袷/長谷川かな女
天の蒼さ人に染む思ひ袷かな/大谷碧雲居
初袷訪ふべき誰彼思ひ見る/阿部みどり女
袷人盲ひてありぬ子に読ます/楠目橙黄子
袷古りぬ妻と故郷を同じうし/佐野青陽人
袷着て身ハ世にありのすさび哉/蕪村遺稿
袷着ててんてんうごく女房かな/森川暁水
初袷夕映ゆる樹を押して見たり/中島月笠
俳句例:141句目~
水に見るものなくて去る袷かな/渡辺水巴
袷着て照る日はかなし曇る日も/三橋鷹女
木々の芽や素袷真白き宮大工/石島雉子郎
星々と子には着せたる袷かな/高橋淡路女
素袷やぶらりと出でてすぐ戻る/谷口和子
今宵乗る船見て歩りく袷かな/楠目橙黄子
人なつくあはれ身にそふ袷かな/飯田蛇笏
袷著て照る日はかなし曇る日も/三橋鷹女
ひさ~に角帯しめし袷かな/久保田万太郎
一年の重荷おろせし袷かな/久保田万太郎
芳野をも見ずにことしも袷かな/横井也有
芸ごとに身のほそりたる袷かな/下田実花
我が肩のこの頃肥えし袷かな/高橋淡路女
古袷着かへし栄えもなかりけり/高橋淡路女
取り出だすたたう古りたる袷かな/松藤夏山
袷着て来た彼の言ふことを肯はず/喜谷六花
あさつきに酢みそと出たる袷かな/立花北枝
たまに着て袷なじまぬ母の忌なり/菖蒲あや
ほころびをつゞくりて着ぬ古袷/高橋淡路女
夜あるきの雨落ちそめし袷かな/金尾梅の門
俳句例:161句目~
思ひ切つて五分に刈りたる袷かな/夏目漱石
後ろより髪ほめてゐる袷かな/吉武月二郎句集
ひるまへに用かたづきし袷かな/久保田万太郎
袷きて踏む砂の降り固まりや/飛鳥田れい無公
飴ン捧横に加へて初袷/一茶/享和三年癸亥
おりかけの縞目にかゝる初袷/一茶/文政年間
さかなにくちづけるため袷着こんでいる/四ッ谷龍
泣虫と云れてもなく袷哉/一茶/文化十一年甲戊
袷きる度にとしよると思哉/一茶/文化四年丁卯
よき袷はしか前とは見ゆる也/一茶/享和三年癸亥
としよれば犬も嗅ぬぞ初袷/一茶/文化十二年乙亥
三間の木太刀をかつぐ袷かな/一茶/文政二年己卯
初袷やせて美しとは絵そらごと/『定本石橋秀野句文集』
はつ袷にくまれ盛にはやくなれ/一茶/文化十三年丙子
たのもしやてんつるてんの初袷/一茶/文化十三年丙子
肩の凝り消え去る如し初袷/蘇子句集/木下蘇子、吉田冬葉/松本翠影編