季語/朝寝(あさね)を使った俳句

俳句例:101句目~

気まゝなる旅の朝寝を許されし/井桁蒼水

熊の糞見に連れ出さる朝寝かな/茨木和生

胎内もかくなん朝寝ありがたし/黒鳥一司

脳神経外科医朝寝の階下に父/相原左義長

うぐひすを夜るにして聞朝寝哉/横井也有

うやむやの朝寝の中の約なりし/筑紫磐井

花屋のはさみの音朝寝してをる/尾崎放哉

くさまくら旅の朝寝のゆめの/稲垣きくの

この頃のことに捨身の朝寝かな/井沢正江

ちちははの朝寝の富士の美しく/勝又一透

ならはしの朝寝に疲れ花の露路/石塚友二

よき家や朝寝の襖隙もなし/長谷川かな女

ミサの鐘すでに朝寝の巷より/阿波野青畝

投句して何もかもなき大朝寝/小原菁々子

誇などそんなものなき朝寝かな/下村梅子

三光鳥山の朝寝はゆるされず/下村ひろし

二の腕の裏白し朝寝の土工らし/香西照雄

象頭山詣でし朝寝のふくらはぎ/高澤良一

六根の濁り果てたる朝寝かな/小島千架子

吾子ら来て朝寝の我に挙手の禮/京極杞陽

俳句例:121句目~

夫留守のわれの朝寝を雛は知る/下村梅子

山鳩のくぐもり鳴ける朝寝かな/中/憲子

川音の切なくなりぬ朝寝覚め/雨宮きぬよ

惜命といふいくぢなき朝寝かな/西本一都

雛の間の闇うつくしき朝寝かな/原コウ子

旅にあることも忘れて朝寝かな/高浜虚子

朝寝してせはし~は口ぐせに/田畑美穂女

朝寝してをんなの齢いみじけれ/大石悦子

霜くすべ終へたる父の朝寝かな/皆川盤水

朝寝して体内ふかき鍵ひとつ/能村登四郎

朝寝して句会は午後の一時より/鈴木花蓑

朝寝して吾には吾のはかりごと/星野立子

ものの音聞き分けてをる朝寝かな/野中亮介

松の内こゝろおきなき朝寝かな/高橋淡路女

梅咲いて朝寝の家となりにけり/貴志沾州/

みちのくの旅長かりし朝寝かな/深川正一郎

はづかしき朝寝の薺はやしけり/高橋淡路女

なきがらや大朝寝しておはすかに/長谷川櫂

どんたくの疲れもありし朝寝かな/高濱年尾

朝寝もし久し振りなるわが家かな/稲畑汀子

俳句例:141句目~

朝寝して精一ぱいに生きてをり/大塚鶯谷楼

子の親のつとめをへにし朝寝かな/麻田椎花

あめつちの中のひとりの朝寝かな/村越化石

朝寝しておのれに甘えをりにけり/下村梅子

われとわが虚空に堕ちし朝寝かな/永井龍男

朝寝していま極楽にゐたりけり/片山鶏頭子

蝶追ふや朝寝の枕ふり上げて/長谷川零餘子

寝くたれて朝寝いよいよ起き難し/石塚友二

朝寝せり木を挽く音と思ひつゝ/千代田葛彦

朝寝して旅のきのふに遠く在り/上田五千石

朝寝して花鳥の世に目覚めける/上田五千石

大いなるもくろみありて朝寝かな/鈴木花蓑

六感のどれかが覚めてゐる朝寝/山下しげ人

電燈に笠の紫布垂れ朝寝かな/長谷川かな女

馬車ゆききしてゐて町の朝寝かな/田村了咲

カーテンの透けて紅来る朝寝かな/山口青邨

鳶の輪の屋根めぐるらし朝寝よし/福田蓼汀

朝寝して授かりし知恵ありにけり/片山由美子

かへらざるものに執する愚の朝寝/稲垣きくの

朝寝して夢のごときをもてあそぶ/山田みづえ

俳句例:161句目~

朝寝して世に問ふこともなかりけり/下村梅子

世にありしわが名を呼ばれ朝寝覚む/井沢正江

温泉の宿の窓の低きに朝寝かな/長谷川かな女

溶けてゆく星座のための朝寝かな/水野真由美

フィアンセが来るてふ朝寝してをれず/藤丹青

旅に馴れニューヨークにも馴れ朝寝/星野立子

もの憂しとにはあらぬ花の朝寝かも/清水基吉

物の芽のほぐれほぐるる朝寝かな/松本たかし

朝寝の朝朝の洗面器の白さに水張る/大橋裸木

薄氷の寄るべなく泛き朝寝ぐせ/鍵和田ゆう子

みどり児もともに朝寝の足りにけり/千原草之

朝寝して可き日やくやしく覚めてゐる/奈良文夫

野あがりの日まちとなりし朝寝の戸/長谷川素逝

世にまじり立たなんとして朝寝かな/松本たかし

花ちるや朝寝の窓のしづけさに/五十崎古郷句集

ものの芽のほぐれほぐるゝ朝寝かな/松本たかし

蚊帳ごしに日のさして居る朝寝かな/河東碧梧桐

朝寝してスペースシヤトル飛ぶがまま/京極杞陽

朝寝児の乳さぐらざる生ひ立ちよ/『定本石橋秀野句文集』