「秋扇」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「秋扇」について
【表記】秋扇
【読み方】あきおうぎ/しゅうせん
【ローマ字読み】akiogi
子季語・関連季語・傍題・類語など
・扇置く(おうぎおく:ogioku)
・捨扇(すておうぎ:suteogi)
・忘れ扇(わすれおうぎ:wasureogi)
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季節による分類
・「あ」で始まる秋の季語
・「秋の生活」を表す季語
・「初秋」に分類される季語
月ごとの分類
秋扇を含む俳句例
客は秋扇主は秋団扇/林直入
客は秋扇主は秋団扇/林直入
平生も言葉寡く秋扇/後藤夜半
尼様の男持なる秋扇/下村梅子
直面の白皙にして秋扇/西村和子
石段に忘れ扇や鳳来寺/岡田耿陽
船に忘れし扇憶へば波模様/林翔
公金課一隅くらく秋扇/宮武寒々
秋扇海の中なる能舞台/角川春樹
車又動けばたゝむ秋扇/稲畑汀子
旅心高まり来たる秋扇/村上三良
秋扇男の心はかりゐる/行方克巳
秋扇記憶に残る日々ならず/林翔
友許も三日となりぬ秋扇/下田稔
双棲の年火難あり秋扇/久米正雄
太柱のもとの畳や秋扇/野村泊月
開き見る忘扇の花や月/山口青邨
秋扇や障子の外の縁畳/野村泊月
花よりも鳥美しき秋扇/後藤夜半
鎌倉は舟虫を打つ秋扇/久米正雄
俳句例:21句目~
弄ぶ夢と一字の秋扇/町田しげき
杉高し秋扇もて幹打てば/皆吉爽雨
沖はまだ空の明るさ扇置く/石嶌岳
月山の見え隠れして扇置く/小島健
置きどころ枕の下の秋団扇/下田稔
ことごとを心に刻み秋扇/中村汀女
看取る者同志の話秋団扇/辻井のぶ
熱気満つ会場に出す秋扇/稲畑汀子
秋扇や一消ゆるお僧の死/尾崎迷堂
秋扇や人を教へて五十年/佐川雨人
珍らしく父の遊山や秋扇/鈴木花蓑
秋扇や寂しき顔の賢夫人/高浜虚子
甲信の旅の腰なる秋扇/鈴鹿野風呂
秋扇や淋しき顔の賢夫人/高浜虚子
秋扇観光艇の花卉に触る/宮武寒々
人斬れと帯深くさす秋扇/小林康治
人穽すことの易しさ秋扇/石塚友二
秋扇義民に介の名の多き/宮坂静生
鉛筆にとめし数句や秋扇/野村泊月
神が捨て神の拾いし秋扇/高澤晶子
俳句例:41句目~
秋扇校長室のペン皿に/西村三穂子
従軍を熱望す吏や秋扇/楠目橙黄子
御僧の手籠にのぞき秋扇/河野静雲
俳優は待つのも仕事秋扇/小倉一郎
置ざまと書なぐりたる扇かな/望翠
窓外に黒ずむ山や扇置く/巌谷小波
なか~に月明き夜や扇置/石井露月
断崖に立つ身と思ふ秋扇/久米正雄
秋扇を遣ひつゝ僧上堂す/高濱年尾
秋扇や観客中の劇作者/楠目橙黄子
窓前に大伊吹あり扇置く/今村泗水
晩年はよしといふ相秋扇/小出文子
扇面のをんな艶たる秋扇/高澤良一
秋扇より生れたる風消ゆる/高木晴子
あたゝかき乳房を押へ秋扇/久米正雄
秋扇をひらけば水の豊前坊/黒田杏子
うらみ心に海渡る晴や秋扇/宮武寒々
秋扇をみなは果鋪に脣覆ふ/宮武寒々
見舞客秋扇使ひ止まざりし/高浜年尾
秋扇帯にはさみて背筋伸ぶ/影島智子
俳句例:61句目~
秋扇機上に使ふとき浮上/赤松ケイ子
秋扇置く仕草にも観世流/稲畑廣太郎
秋扇置く短剣を置くやうに/鈴木栄子
笑ふときかなしき顔や秋扇/西島麦南
結納終へおのれに戻る秋扇/高橋佳子
ひと齣を開きしままの秋扇/鷹羽狩行
老い崩る身の楯もなし秋扇/石原八束
返したき言葉呑み込む秋扇/伊東白楊
連れ添うて宝なりけり秋扇/加藤郁乎
オペラ座の序曲始まる秋扇/赤尾恵以
一と山のからまつの秋扇面/和知喜八
開かれし秋扇にも素性あり/山田弘子
人の訃を聞くや静かに秋扇/橋本道子
開きては吾子が遺せし秋扇/中村祐子
はつ秋や団扇の風をひいた人/炭太祇
出稽古の帯はゆるめに秋扇/影島智子
一本の秋の団扇も什器かな/高浜虚子
口紅のあとをとゞめて秋扇/岡本松濱
尼寺や置いては使ふ秋団扇/川崎展宏
山水のたたまれてゆく秋扇/西宮陽子
俳句例:81句目~
秋ならぬ閨の団扇や君と我/高井几董
絵付場の筆立に挿す秋団扇/斎藤朗笛
思ひ出を開いて閉ぢて秋扇/黒川悦子
長雨の骨やはらかき秋団扇/安斉君子
しづかなる男の怒り扇置く/西島麦南
とある日の雨美しく扇置く/西本一都
晝の女故なくかなし秋扇/下村ひろし
ひらひらと忘れ扇や虚子の顔/上村占
板の如き帯にさゝれぬ秋扇/杉田久女
コスモスの四窗の秋や置扇/飯田蛇笏
気安さのなかに礼儀や秋扇/熊沢緑風
一言の忘れ扇に及ぶなき/島村元句集
汗水のごときをあふぎ秋扇/皆吉爽雨
三山の闇に置きたる扇かな/藺草慶子
湖上より投げて追慕の秋扇/春山花郷
牡丹の白粉はげぬ秋扇/阿部みどり女
犬の紳士に猫の貴婦人秋扇/嶋田麻紀
生業のいつか身につき秋扇/山田桂梧
時蔵の忘れ扇でありにけり/大岡龍男
朝雨を情に聞く日や扇置く/三和嘯月