俳句例:101句目~
秋蝉も泣き蓑虫も泣くのみぞ/高浜虚子
秋蝉やいつも静かな母の家/松藤/三鶴
秋蝉やうばすて山に姥を捨て/三橋鷹女
秋蝉やなきやむ幹を横あゆみ/飯田蛇笏
秋蝉や板戸に古りしあらし除/古沢太穂
秋蝉や片谿のみが日をうけて/古沢太穂
秋蝉や言の葉もどかしく祈り/藤田直子
草長ける長けて雨沁む残る蝉/野澤節子
かいまみの草花赤し秋の蝉/金尾梅の門
命しぼる声の一途に秋の蝉/古賀まり子
秋の蝉阿難ゆくゆく雲がくる/飯田蛇笏
団欒の網戸にとまる秋の蝉/相河美智子
地球の芯に水流るるや秋の蝉/寺井谷子
妻見るや吾子見る妻に秋の蝉/杉山岳陽
秋蝉や御室は人の来ぬところ/高濱年尾
また九月一日来る秋の蝉/久保田万太郎
山々へ遁げゆく風に秋の蝉/山上樹実雄
椨抱えこゑふりしぼる秋の蝉/高澤良一
生涯は文字を書くこと秋の蝉/田中裕明
禿筆を束ね捨てけり秋の蝉/波多野爽波
俳句例:121句目~
秋蝉に見かわすまみは夫婦のまみ/三谷昭
秋の蝉翅のひかりに啼きやめし/萩原麦草
なほ翔びて縋るものなき秋の蝉/高澤良一
秋の蝉蘆にとまりてゆれにけり/岸本尚毅
秋の蝉蟹にとられて鳴きにけり/飯田蛇笏
秋の蝉鐘にあたりて墜ちにけり/中川宋淵
木洩日に鳴きつまづきて秋の蝉/稲畑汀子
秋蝉にまひるの風もみづ~し/鈴鹿野風呂
秋蝉に午後はわびしき雲あかり/飯田蛇笏
秋蝉をまぶしみ子らと歩みけり/臼田亞浪
秋蝉やまたの渾名をからす寺/藤田あけ烏
秋蝉やこころの杖が欲しくなる/加藤三陽
秋蝉のひしと身をだく風情かな/飯田蛇笏
秋蝉のひとこゑ瑞巌寺に入れり/鈴木節子
温泉ちかき霽れまの樺に秋の蝉/飯田蛇笏
濯ぐ瀬の疾くゆたかにて秋の蝉/飯田蛇笏
鳴きいでて秋蝉となる松の皮/水原秋櫻子
顔拭きて秋蝉のすさまじきかな/岸本尚毅
藪の樹や見られて鳴ける秋の蝉/飯田蛇笏
秋蝉や風が持ち去るわが匂ひ/鷲谷七菜子
俳句例:141句目~
啼きながら蟻にひかるる秋の蝉/正岡子規
子の部屋の網戸に鳴けり秋の蝉/泉とし子
秋蝉の鳴きをり間なく墓を辞す/松村蒼石
啼きやめてばた~死ぬや秋の蝉/渡辺水巴
地に墜つも草にすがりて秋の蝉/飯田蛇笏
秋蝉の鳴きやみし野の虹短かし/内藤吐天
一書より叱咤湧く日や秋の蝉/馬場移公子
戸隠や灯をとりに来る秋の蝉/鈴鹿野風呂
秋の蝉ひたすら野面ゆくごとし/栗林千津
秋蝉の声のたまりしぼんのくぼ/高井瑛子
秋蝉や父を一灯として生くる/長谷川秋子
かしましと憎しみ受けぬ秋の蝉/尾崎迷堂
飛びかひて一つ日に透く秋の蝉/久米正雄
秋の蝉子にとらるるもあはれ也/正岡子規
秋の蝉屋根の向ふは日があるか/原田種茅
秋蝉のむくろ吹かるゝ石の上/篠田悌二郎
七百年のみなげき今に秋の蝉/鈴鹿野風呂
ひっひっと聞こえて遠の秋の蝉/高澤良一
秋蝉や少しづつ我ほろびゆく/能村登四郎
秋の蝉疲れをさそふごと睡る/古賀まり子
俳句例:161句目~
そのままに秋蝉の木となりて立つ/藤陵紫泡
ふと死を思ひたるは秋蝉と関連なし/安住敦
社家灯り秋蝉今も鳴き止めず/長谷川かな女
秋蝉に転げ込まれし夜もありし/相生垣瓜人
秋蝉のけふは今日はと母訪はず/山田みづえ
吹く風や鳴きとぎれたる秋の蝉/高橋淡路女
秋の蝉たかきに鳴きて愁ひあり/柴田白葉女
秋の蝉よく啼き木瓜は実となりぬ/渡邊水巴
とび交ひもしげくて木々の秋の蝉/皆吉爽雨
とけてゐるアイスクリーム秋の蝉/木下夕爾
秋蝉ややがておのれも一基の墓/鈴木真砂女
手の届くところに鳴けり秋の蝉/森下きぬゑ
秋蝉の鳴くひきしほのごとくなり/三橋鷹女
暮れがたは低きに鳴けり秋の蝉/成瀬桜桃子
鳴きほそりつつ秋の蝉をゝしけれ/高浜虚子
秋の蝉梵鐘にあたりてひゞきけり/中川宋淵
秋の蝉鳴き継ぐ勢ひありにけり/稲畑廣太郎
死ぬかとてしばしながめつ秋の蝉/藤野古白
糠雨のいつまでふるや秋の蝉/久保田万太郎
その日暮れなほ秋蝉の泣きじやくり/福田蓼汀
俳句例:181句目~
ひと言はのたまへ秋蝉鳴きしきる/徳永山冬子
秋の蝉たかぶる癇をおさへけり/久保田万太郎
木の間なる水照りひとひら秋の蝉/鷲谷七菜子
秋蝉や朽葉はやちる碑のおもて/長谷川零餘子
秋の蝉ひそかに香扇つかひけり/長谷川かな女
背を前へ押さるるごとし秋の蝉/長谷川かな女
かまくらをいまうちこむや秋の蝉/久保田万太郎
秋の蝉死は恐くなしと居士はいふ/長谷川かな女
カンバスに木々のほむらや秋の蝉/阿部みどり女
秋蝉ぢいぢい鳴いて病む身起されてゐる/大橋裸木
しやんしやんと秋蝉雨に負けず鳴く/長谷川かな女
秋蝉の終の敷寝の一葉哉/一茶/文化五年戊辰