「秋の蚊帳」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「秋の蚊帳」について
【表記】秋の蚊帳
【読み方】あきのかや
【ローマ字読み】akinokaya
子季語・関連季語・傍題・類語など
・蚊帳の果(かやのはて:kayanohate)
・蚊帳の名残(かやのなごり:kayanonagori)
・蚊帳の別れ(かやのわかれ:kayanowakare)
・九月蚊帳(くがつがや:kugatsugaya)
–
季節による分類
・「あ」で始まる秋の季語
・「秋の生活」を表す季語
・「三秋」に分類される季語
月ごとの分類
秋の蚊帳を含む俳句例
暁の寝姿さむし九月蚊帳/暁台
秋蚊帳の枕に通ひ噎ぶ潮/石塚友二
秋もはや蚊帳に筋違ふ天の川/許六
天井の高しと思ふ別れ蚊帳/河本遊子
今朝秋や白蚊帳ごしに佐渡淡く/林翔
秋蚊帳に痩骨どかと横へし/島田青峰
秋の蚊帳吊れば僧上嬉ばれ/上野静作
骨壺の白きを秋の蚊帳に見つ/瀧春一
画同窓を怖る励精蚊帳の秋/久米正雄
秋蚊帳や墨東綺譚後記長し/内藤吐天
秋蚊帳に仔猫も家の人の員/石塚友二
蚊帳ごしに鬼を笞うつ今朝の秋/蕪村
後朝や顧みすれば秋の蚊帳/尾崎迷堂
秋の蚊帳蓬の風を炎えたゝす/萩原麦草
さす月もあな冷じの九月蚊帳/高井几董
赤ん坊の片目大きく秋の蚊帳/川崎展宏
秋蚊帳の白きところは白き継/村尾梅風
風呂敷に包みて蚊帳の別れかな/上野泰
誰彼を泊め申しけり別れ蚊帳/岡田静女
蚊帳出づる地獄の顔に秋の風/加藤楸邨
俳句例:21句目~
方寸に瞋恚息まざり秋の蚊帳/石塚友二
秋暁の枝の影さしくる蚊帳に/松村巨湫
はやありし台風二夜蚊帳の秋/皆吉爽雨
蚊帳の別れ釣手は残る廿日程/佐藤紅緑
秋の蚊帳半分吊つてわづらへる/林克己
合宿を解きて別れの蚊帳を干す/米谷孝
灯して影をつくりぬ別れ蚊帳/原コウ子
別れ蚊帳吊りて繕ひよく畳み/高浜虚子
疑へばわが世の地獄秋蚊帳に/石塚友二
別れ蚊帳上体月の中に覚む/馬場移公子
別れとも宵は思はで庵の蚊帳/浜田波静
秋蚊帳に踊聞えて寐入りけり/大谷句佛
湖に雨降る蚊帳の別れかな/五十嵐播水
恙ある家人と寝たり蚊帳の果/小澤碧童
蚊帳の別れ溲瓶に遠き心かな/子規句集
秋蚊帳を堤防に干し拡げあり/岩崎健一
秋の蚊帳夫に抱かれゐて寂し/木田千女
秋の蚊帳涙涸れたる妻臥さす/皆川白陀
朱の緒のなほ艶めくや別れ蚊帳/前田普羅
今一夜名残の蚊帳に読書かな/筏井竹の門
俳句例:41句目~
ふるさとの暗き灯に吊る秋の蚊帳/桂信子
喪の家の二階に見える秋の蚊帳/南雲/夏
蚊帳の果変らぬ日本が吾を包む/原子公平
香煙のしみつく蚊帳の別れかな/松村蒼石
山の戸やふる妻かくす秋の蚊帳/飯田蛇笏
干草のごとく押し込み秋の蚊帳/菊池緑蔭
日あたりて覚めし女や秋の蚊帳/日野草城
日三竿あるじが寐たる秋の蚊帳/子規句集
母ときてふるさとに吊る秋の蚊帳/桂信子
母へ垂る真水のごとし秋の蚊帳/坂巻純子
毛のぬけしお岩の顔や秋の蚊帳/岡本綺堂
炉辺よりこたふる妻や秋の蚊帳/飯田蛇笏
秋の蚊帳まさをく病軽からず/依田由基人
秋の蚊帳もぬけし妻が濯ぎをり/萩原麦草
枕辺の障子しめけり秋の蚊帳/高橋淡路女
秋の蚊帳夜明けず遠く鐵を打つ/中島斌男
秋の蚊帳夜明待たるゝ気の弱り/高田蝶衣
長病の僧に吊り垂れ秋の蚊帳/久我清紅子
音もなく妻は入り来む秋の蚊帳/村沢夏風
秋蚊帳にねざめもやらず大逝す/飯田蛇笏
俳句例:61句目~
秋蚊帳に子菩薩となり寝落ちけり/赤松子
秋蚊帳に寝返りて血を傾かす/能村登四郎
ねざめよき児が透く秋の枕蚊帳/飯田蛇笏
夜々の夢秋蚊帳畳むころほひぞ/石塚友二
櫃に湧く虫にして甲ふ蚊帳の秋/久米正雄
生れ子の顔日々変る蚊帳の秋/楠目橙黄子
産衣裁ちしが紅に酔ふ蚊帳の秋/久米正雄
蚊帳の中に見てゐる藪や今朝の秋/たかし
蚊帳は秋にして仏具磨ぐ美妙音/久米正雄
蚊帳やめて妻子明るし秋の雨/大谷碧雲居
行く秋をぶらりと蚊帳のつりてかな/史邦
俯せり寝の此頃の癖を蚊帳の果/内田百間
別れ蚊帳真白き繭ぞつきゐたる/加藤楸邨
宿直憂し蚊帳の別れはいつのこと/森田峠
あすありや六ヵ所村の秋蚊帳は/安藤五百枝
水中花咲きたるまゝや蚊帳別れ/長沢/六郎
吊らでもの秋蚊帳なるを一夜なほ/石塚友二
疾風沐雨ひとりの灯消す秋の蚊帳/石塚友二
来る秋のことわりもなく蚊帳の中/夏目漱石
ふと揺れる蚊帳の釣手や今朝の秋/夏目漱石
俳句例:81句目~
くゞる時髷佗びし蚊帳も別れかな/高田蝶衣
うすばたの水の匂へり蚊帳の秋/金尾梅の門
郁子いけて白蚊帳秋となりにけり/飯田蛇笏
いちじくのいつまで青き別れ蚊帳/細川加賀
うらぶれて釣るや雨夜の九月蚊帳/日野草城
おとゞいの語りあかしや名残蚊帳/矢野蓬矢
病みをれば蚊帳の別れも知らぬ間に/原菊翁
看取りより解かれし蚊帳の別れかな/手塚金
月の蚊帳に影法師吹かれ秋来たり/渡辺水巴
ねんごろに妻とたゝみぬ別れ蚊帳/池田紫酔
次の間の燈のさしてゐる秋の蚊帳/大野林火
ふるさとの名残の蚊帳に父と寝る/橋本花風
蚊帳の別れ萩むら虫を悲しとも/岡本癖三酔
九月蚊帳吊られて一夜波郷が辺に/石塚友二
九月蚊帳天気はよしと思ひ寝る/大場白水郎
秋の蚊帳吊りたる旅の一夜かな/鈴木灰山子
帯解いて蚊帳に這入らず秋扇/阿部みどり女
たちまちに秋蚊帳となる風吹けり/萩原麦草
鐶鳴らし鳴らしたためり別れ蚊帳/細見綾子
頼りなく垂れし重さに別れ蚊帳/御堂御名子