「秋の蚊」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「秋の蚊」について
【表記】秋の蚊
【読み方】あきのか
【ローマ字読み】akinoka
子季語・関連季語・傍題・類語など
・別れ蚊(わかれか:wakareka)
・残る蚊(のこるか:nokoruka)
・蚊の名残(かのなごり:kanonagori)
・後れ蚊(おくれか:okureka)
–
季節による分類
・「あ」で始まる秋の季語
・「秋の動物」を表す季語
・「三秋」に分類される季語
月ごとの分類
秋の蚊を含む俳句例
残る蚊の痩せてあはれや施餓鬼棚
秋の蚊の人を尋ねる心哉/与謝蕪村
秋の蚊を掴み損ねし山男/辻田克巳
秋の蚊の見えてとまりし襖かな/篠原
人混みに秋の蚊払ふ金色堂/横山房子
残る蚊の侮りがたき力かな/石井露月
残る蚊や筆先狂ふ喪の記帳/伊東白楊
秋の蚊を払ふや人事異動の日/土生重次
あぶれ蚊や去り難くゐて翁塚/見市六冬
残る蚊や更けて物書く老の耳/青木健作
秋の蚊や寄木作りの御本尊/深見けん二
秋の蚊の声を秘仏の声かとも/鷹羽狩行
殿上の土足おそるる秋蚊鋭し/古舘曹人
秋蚊出て暮るゝ泉の端濡らす/小林康治
秋の蚊に網戸ほつれし日吉館/大島民郎
秋蚊鳴く夢を引用する吾れに/齋藤愼爾
突然の訃に秋の蚊を叩きけり/磯崎美枝
別れ蚊や瓜割の井に立ちつくす/石川桂郎
国宝の庫裡の秋蚊に喰はれもし/行方克巳
秋蚊大きく柱めぐりて失せにけり/原月舟
俳句例:21句目~
残る蚊の法蓮華経に脚掛けて/佐々木六戈
残る蚊を墨にすりたる麁相かな/尾崎紅葉
残る蚊や土もて埋めし窯のひび/吉田紫乃
残る蚊や払ひもやらぬへろ~矢/尾崎紅葉
残る蚊をかぞへる壁や雨のしみ/永井荷風
夢にまで秋の蚊羽音響かせし/稲畑広太郎
病人の手が秋の蚊をつかみけり/保坂伸秋
秋の蚊のやはらかに来て文具店/藤村克明
秋の蚊のよろめきながら止りけり/坂井建
秋の蚊の螫さんとすなり夜明方/夏目漱石
秋の蚊の鏡に触れて落ちにけり/田村京子
秋の蚊を払ふかすかに指に触れ/山口誓子
くはれもす八雲旧居の秋の蚊に/高濱虚子
それ以来泣かぬ女を秋蚊さす/堀井春一郎
残る蚊にはなしもなくて宵寝かな/森川暁水
秋の蚊のしふねきことを怒りけり/富安風生
秋の蚊のその一匹を獲たりけり/島村元句集
猿の白歯秋蚊に剥いで哀れかな/島村元句集
まだ秋の蚊をひそませて池ほとり/稲畑汀子
残る蚊と傘をひとつに政子の地/小島千架子
俳句例:41句目~
グッドバイは明るき別れ蚊喰鳥/小島千架子
秋の蚊の灯より下り来し軽さかな/高濱年尾
一夜二夜秋の蚊居らずなりにけり/正岡子規
畳這ふ秋蚊に憎しみ起りけり/長谷川かな女
別れ蚊の逃ぐるにあらず離れけり/藤本悦子
病み細り秋蚊一つとたたかへり/高田風人子
秋の蚊を手もて払へばなかりけり/高浜虚子
残る蚊もはたとなき夜や燭の風/河東碧梧桐
あぶれ蚊のほめかぬ壁を便りかな/上島鬼貫
秋の蚊を払へばほろと消えにけり/星野立子
打ち損じたる秋の蚊は追はずとも/柴原保佳
残る蚊の煤のごとくに降りて来し/星野恒彦
秋の蚊の微塵とびゐる嬉しけれ/長谷川零餘子
秋の蚊が火除けの護符に辿りつく/末光美登里
秋の蚊に悩まされつつ句碑なぞる/水野佐暉代
錦木の葉にからび飛ぶ秋蚊かな/長谷川零餘子
秋の蚊の跳ねて飛び去る畳かな/長谷川零餘子
あぶれ蚊や夜なべの灯吊る壁のもと/富田木歩
のこる蚊のひとこゑ過ぎし誕生日/秋元不死男
秋の蚊よこの子ばかりはさゝざらん/藤野古白
俳句例:61句目~
秋の蚊のほのかに見えてなきにけり/日野草城
取るものも取らず糸瓜と残る蚊と/佐々木六戈
残る蚊にありあふものをくすべけり/森川暁水
秋の蚊のゐるとも見えず刺されけり/井上和子
残る蚊によなべはじめのほどきもの/森川暁水
秋蚊鳴くよと聞けば灯影に現はれつ/林原耒井
谷戸ふかく来て秋の蚊にさゝれもし/荻江寿友
秋の蚊のあまり白さやこぼれ落つ/長谷川零餘子
かまつかのからくれなゐの別れ蚊屋/松本たかし
血は試験管にとつたあとの秋の蚊が鳴く/荻原井泉水