「朱欒」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「朱欒」について
【表記】朱欒
【読み方】ざぼん
【ローマ字読み】zabon
子季語・関連季語・傍題・類語など
・うちむらさき(うちむらさき:uchimurasaki)
・文旦(ぶんたん:buntan)
・ぼんたん(ぼんたん:bontan)
・ざんぼあ(ざんぼあ:zamboa)
・ざんぼ(ざんぼ:zambo)
–
季節による分類
・「さ」で始まる冬の季語
・「冬の植物」を表す季語
・「三冬」に分類される季語
月ごとの分類
朱欒を含む俳句例
湾口に蝶の点滴ザボン売/原裕
橙朱欒鏡のなかの橙朱欒/小澤實
空港に朱欒輝き雨上る/高橋悦男
天草の海は平に花朱欒/有馬朗人
朱欒かげ老母の古き物語/石田波郷
年移る闇に大きな朱欒垂れ/森重昭
ザボン売十字虜囚の影を曳き/原裕
海風の日覆あほつ朱欒売/小林康治
朱欒叩けば春潮の音すなり/飯田龍太
絣織る音や遠くに朱欒熟れ/堤多香子
畳畳と照る白壁や朱欒割く/小池文子
男神祀る朱欒の実なりけり/小山森生
甲板へ朱欒投げやる別れかな/太田嗟
花朱欒島の空港つばらかに/西田キヨ
分旦の天然のいろ出し渋る/高澤良一
南国の五月はたのし花朱欒/杉田久女
海の藍ざぼんの緑赤とんぼ/三好達治
船長が船を降りゆく花朱欒/鈴木太郎
朱欒散り鉄砲丁水奔りけり/堀口星眠
老い深き南の国の朱欒売り/木塚真人
俳句例:21句目~
花朱欒香ふかぎりの朧なる/千代田葛彦
蚕ごもりや明方近く雨ざァと/田村了咲
大朱欒落ちて不知火海見ゆる/宮部鱒太
故弓かなし朱欒の花に日させば/荻真澄
教会の朱欒ちかづく石蕗の花/和知喜八
日輪も朱欒も黄なる国に来し/橋本鶏二
昼の月かゝりて朱欒老木かな/河野静雲
ふるさとは朱欒の市の頃なれや/上村占
ふるさとも南の方の朱欒かな/中村汀女
望郷の夫や朱欒の朱は曉け色/中村明子
朱欒みのる梢にひけり海の蒼/宿南かよ
元日の朱欒を剥けば日が眩し/永井龍男
大朱欒もぎ空間の生れけり/合田丁字路
朱欒一顆剥くほどの航島原へ/北澤瑞史
朱欒割りサド侯爵の忌を修す/有馬朗人
朱欒咲く樹下に海あり有馬領/高橋北斗
噴煙や地に熟れ朱欒青朱欒/山田みづえ
朱欒熟れ産み月という瞳の力/川田蓉子
城跡の朱欒をんなを嫌ひけり/長谷川双
朱欒黄に南蛮渡来図寺に古る/大橋敦子
俳句例:41句目~
泊船の水夫提げゆく朱欒かな/皆川盤水
爪を立てためらふ朱欒久女の忌/朔多恭
磊塊と朱欒盛られて籠歪む/松本たかし
ボタ山に人声絶えて朱欒熟る/天童さつき
ざぼんの厚き白き皮剥ぐ人の妻/右城暮石
幸せに浸るいで湯や花朱欒/中野/喜久枝
町なかを真清水走り朱欒の実/木村里風子
その奥に朱聯透け見ゆ朱欒園/千代田葛彦
朱欒掌に重し伴天連の海眩し/成瀬桜桃子
ふりそゝぐ日に戯れて朱欒もぐ/石田波郷
朱欒がるいるい颱風来つゝあり/横山白虹
大朱欒ふりわけかつぎ十夜婆々/河野静雲
べつとりと昏るる内海ザボン咲く/山下淳
花ざぼん匂ふ夜風を窓に入れ/田代八重子
花朱欒こぼれ咲く戸にすむ楽し/杉田久女
地球儀の海凝視めつつ朱欒剥く/原子公平
夜々かえり朝来る人の木の朱欒/和知喜八
夢に朱欒を抱き重りしが創痛す/藤田湘子
折れ曲るオランダ塀の朱欒かな/森永杉洞
朱欒採る一枝ごとにはねあがり/近澤杉車
俳句例:61句目~
朱欒剥く夢の朱欒もひとつ剥く/市川千晶
大朱欒据ゑてその木の苗を売る/林三枝子
見舞籠ざぼん其他のざぼんの香/石塚友二
遊ぶ如ざぼん机上に春立てり/殿村菟絲子
朱欒熟れ満月のごとぶらさがる/成瀬元一
朱欒咲く五月となれば日の光り/杉田久女
重なりて一つは日影ザボンの実/香下寿外
われが来し南の國のザボンかな/高濱虚子
子を連れて大きザボンと爆心地/和知喜八
朱欒咲く築地の内も坂ならむ/殿村菟絲子
朱欒の花生涯のよき旅に知る/殿村莵絲子
朱欒の樹僧の仰いで居たりけり/河野静雲
濤ひゞく朱欒の下に母は肥えぬ/藤田湘子
殉教の丘より下るザボン売り/梶山千鶴子
朱欒に刃絶壁のギリシャがみえる/澁谷道
ざぼんもぐ足ふんばりし庇かな/宮本都史郎
ざぼん売り居留地跡を守るなり/後藤比奈夫
ちぎりたる日附書きある大朱欒/田代杉雨堂
まぐはひは神ぞよろこぶ朱欒かな/岡井省二
危篤なる伯母に朱欒はあだに大き/森川暁水
俳句例:81句目~
味方となせる朱欒一箇を枕上ミ/沼尻巳津子
母へ買ふザボン月よりやゝ小さし/新田祐久
大き朱欒危篤の伯母に見するのみ/森川暁水
もぎたての朱欒の匂ひ日の匂ひ/田代八重子
冬来ると汲水場にかざす朱欒かな/西本一都
妻に朱欒焼酎をそのあとから出す/石川桂郎
羨まるる身とは思はず朱欒むく/石田あき子
朱欒苦く甘し春夜の貴人たり/長谷川かな女
朱欒割くや歓喜のごとき色と香と/石田波郷
朱欒剥くおのれひとりの灯下かな/浜田坡牛
朱欒抱きいつから老といふものか/古舘曹人
朱欒ただ残り一人の伯母も逝きぬ/森川暁水
雪の夜の指をあふるる朱欒の香/渡辺千枝子
風かをり朱欒咲く戸を訪ふは誰そ/杉田久女
春の夜のこの古机に匂ふ朱欒/長谷川かな女
ザボンより大きな梨をもらひけり/子規句集
ザボン吸いまっかな丘に登って睡る/三谷昭
朱欒など手品のごとく出しけり/佐怒賀正美
ザボン熟れ入日は海を染むるなり/影島智子
塗り盆のザボンひとつに曇りけり/山尾玉藻