「悴む」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「悴む」について
【表記】悴む
【読み方】かじかむ
【ローマ字読み】kajikamu
子季語・関連季語・傍題・類語など
・悴ける(かじける:kajikeru)
・こごゆ(こごゆ:kogoyu)
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季節による分類
・「か」で始まる冬の季語
・「冬の生活」を表す季語
・「晩冬」に分類される季語
月ごとの分類
悴むを含む俳句例
悴みて影を失ふ水の上/松澤昭
悴みて千人針の糸くくる/井上雪
八十九歳の悴む御尤/粟津松彩子
飽食の紙袋割り悴む手/鈴木康允
悴みて少年人の靴磨く/岸風三楼
炎天下廃磔像に悴むか/小林康治
屯田の訛悴むことやなし/齋藤玄
悴むや岩に魑魅の水の音/古舘曹人
悴める妻毎日の髪結へり/森川暁水
悴みて桶に水くむ月詣り/脇坂啓子
悴かみて躓く心又一歩/橋本うた子
悴めば花かと潤み白きもの/上村占
悴めば祈る形に指組まれ/竹内千花
悴みて踏みて鶯張は憂し/亀井糸游
悴みて印押す手術承諾書/毛塚静枝
悴みし手に水はじき水仕事/上野泰
悴む手女は千も万も擦る/山口誓子
悴みし指がもの言ふ袋糶/堀/康代
悴みし掌の鉛筆より蝶生る/穴井太
霊柩車他郷に送り悴める/宮坂静生
俳句例:21句目~
身長一九〇センチ悴めり/大野朱香
八千の鶴に餌をまき悴めり/原和子
石女の妻悴みて役立たず/森川暁水
悴みてけふこの女醜さよ/中杉隆世
天網にかからぬ蝶の悴めり/原和子
悴みて高虚子先生八十一/高浜虚子
悴む手こする太陽赤き下/村越化石
悴む手なだめ藍糸絞りきる/太藤玲
法廷に指の悴む男女かな/山口誓子
悴める手を暖き手の包む/高浜虚子
悴みの溶けゆく泪春煖炉/殿村莵絲子
悴みて掴みにくくて一円貨/辻田克巳
悴むや手に息かけて松葉杖/山口恵子
悴むや鞄へひとの金満たし/皆川白陀
悴める姿に牛を曳きゆきぬ/下村槐太
悴める掌のかたちして枯柏/高澤良一
悴んでくる手拳にしてしまふ/石井保
意志伝へくれぬ指先悴みて/稲畑汀子
柩傾ぎわが町人の血悴かむ/古舘曹人
一徹の父を見送り悴めり/山崎千枝子
俳句例:41句目~
水底の文字悴まず虹の石/後藤比奈夫
父の喪の盛装となり悴むか/小林康治
二人ゐて二人悴みゐたりけり/小澤實
牛売りし札数へをり悴みて/三宅句生
人形がこなす苦役に悴めり/渡辺恭子
厄介な孫のふぐりの悴める/清水基吉
取りおとす参籠の箸や悴みて/原柯城
竹馬に仕上げて青し悴みぬ/永井龍男
地の塩の孤を悴みが呪縛す/石原八束
考へてゐるひとところ悴める/岸田稚
西行の清水掌にうけ悴めり/巌谷小波
身はおろか心の中も悴みぬ/下村梅子
悴みて妻に一円借りにけり/白岩三郎
運転の始動悴み解けるまで/稲畑汀子
心中に火の玉を抱き悴めり/三橋鷹女
長病みの母云ふ骨も悴むと/渡辺恭子
悴みて心ゆたかに人を容れ/富安風生
牛百頭鳴き流れゆく大洪水/悴山紀一
悴みて扉を押す力余りたり/右城暮石
骨拾ふ箸ままならず悴みて/岡安仁義
俳句例:61句目~
悴みて旅は迎への人まかせ/皆吉爽雨
鳥獣のうちの我なり悴めり/斎藤梅子
悴みて水の切先そらし得ず/岡田和子
悴みし手に残業の鍵の束/長谷川史郊
悴みし手より警棒放されず/田崎令人
空青しかじかむ拳胸を打つ/西東三鬼
悴みて洋奴たりゐし歳月よ/小林康治
悴みて短き一語ともならず/山本紅園
悴みて秀野恋ひゆく雑木山/関戸靖子
悴みてこれを限りの手紙書く/森田峠
悴みて糸の縺をとくすべき/成瀬正俊
悴める手に死に給ふ髪を梳く/都筑智子
悴みて手袋ぎらひ足袋ぎらひ/太田育子
ちゝはゝの遺せし吾や悴みて/杉山岳陽
悴んでをりし両手を預かる手/黒川悦子
梧桐一本二階障子の悴めり/柴田白葉女
われらみな生の側にて悴めり/小坂順子
をんな坂下りはじめの悴みぬ/渡辺恭子
オルゴール切れて人形悴みぬ/吉原文音
一些事に躓きしより悴めり/石田あき子
俳句例:81句目~
悴むや注連を引きあふ陰の石/古館曹人
一村悴み浮城のごとく赤城山/北野民夫
悴かめるこの一瞬もわれの生/相馬遷子
悴める手に母の手の大きかり/千原叡子
坂くだる足音までも悴みて/渡辺/和子
太陽に悴める手をむけても見/三好雷風
悴める手のすべりがち棺担ふ/岡安仁義
悴める手で書く現場日誌かな/大野審雨
病む夫に耳悴みて仕へけり/石田あき子
氷河期の人類と共に悴かみぬ/相馬遷子
悴める手は憎しみに震へをり/高浜虚子
悴みて瞑りて皇居過ぎゐしか/石田波郷
白鳥になりたきひとと悴めり/仙田洋子
石階に悴める手ぞ十字切る/下村ひろし
悴かめる一光年の途中かな/上野まさい
悴める手を病む母に握らるる/鈴木昌江
税務署を出て悴みし犬に会ふ/前山松花
悴む手銃の重さを記憶せり/千代田葛彦
膝の上の悴む手では嘘は云へぬ/岸田稚
被告悴け判官網をうつごとし/飯田蛇笏