「懐炉」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「懐炉」について
【表記】懐炉
【読み方】かいろ
【ローマ字読み】kairo
子季語・関連季語・傍題・類語など
・懐炉灰(かいろばい:kairobai)
・懐炉焼(かいろやけ:kairoyake)
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季節による分類
・「か」で始まる冬の季語
・「冬の生活」を表す季語
・「三冬」に分類される季語
月ごとの分類
懐炉を含む俳句例
温石を焼きし渚に舟繋ぐ/久保武
草庵に温石の暖唯一つ/高浜虚子
温石や人にすすむる武玉川/龍岡晋
温石を手首に結へ大根引/高濱年尾
流氷や旅の鞄に紙懐炉/奈良千代子
温石の百両握るふゆの月/黒柳召波
一点が懐炉で熱し季節風/日野草城
窈窕と春や懐炉を常抱く/大石悦子
懐炉掌に黒川村の能終る/巌谷小波
父の忌の朝より母の懐炉灰/石川桂郎
家々に柿温石を抱くごとし/太田土男
若き日の女犯の罰の夏懐炉/河野静雲
夫婦して同じ病の懐炉かな/菱川柳雨
喝采に少しずれたる紙懐炉/吉田寿子
下腹の懐炉のほかの春寒し/永井龍男
銀懐炉恋たんのうす奴かな/飯田蛇笏
銀懐炉まだなきがらの懐に/長谷川櫂
牛飼の胴巻ふくれ銭/懐炉/太田土男
寒菊を懐炉を市に求めけり/臼田亞浪
息づくに背の懐炉火梅の坂/皆吉爽雨
俳句例:21句目~
紅裏の少し焦げたる懐炉哉/星野麦人
温石や衾に母のかをりして/小林康治
短い人生もう懐炉入れてゐる/八坂洵
松風の中なる人の懐炉かな/岸本尚毅
午過ぎの机に書記の懐炉かな/野村泊月
古妻の懐炉臭きをうとみけり/日野草城
名刹の朝まだき訪ふ懐炉かな/宮武寒々
背に腹に懐炉を入れて吟行す/筒井淳介
愛情のほのぼのとある銀懐炉/飯田蛇笏
風邪引けば散薬をのむ懐炉哉/小澤碧童
柴又を一人あるきの懐炉かな/青木綾子
探梅の臍に懐炉の火の一点/伊丹三樹彦
懐炉して心優しくなりて居り/小泉礼子
懐炉二つ残る寒さを歩きけり/前田普羅
夜祭を見にゆく懐炉配られて/下山宏子
懐炉肩に怒らせ行くよ良寛寺/巌谷小波
母なくて夜々の温石妻も抱く/細谷源二
温石にひたと硯の主泣く/長谷川零餘子
温石の抱き古びてぞ光りける/飯田蛇笏
三十にして我老いし懐炉かな/正岡子規
俳句例:41句目~
使ひ捨て懐炉買ひため年用意/角川春樹
腰にせる懐炉大事に松も過ぎ/岸風三樓
入れて来し懐炉があつし映画館/及川貞
八月の懐炉仕入れて飢饉年/八牧美喜子
懐炉すら坑内の掟と許されず/佐藤秋月
懐炉抱き名刺持たざること久し/新津静香
手燭して懐炉の灰をさがしけり/羅蘇山人
旋盤に目据え懐炉の火を育つ/米沢吾亦紅
爪先に懐炉を入れてハイヒール/相馬沙緻
登校の子の隠し持つ懐炉かな/月足美智子
竹情の温石花意の懐炉かな/菅原師竹句集
老骨の背中に入るゝ懐炉かな/池内たけし
肩に手を置かれて腰の懐炉かな/池田澄子
茶の席に懐炉をだきて加賀の国/中山純子
うつそみの懐炉抱きて墓をがむ/木村蕪城
温石がころがり出でし父の老い/今瀬剛一
をかしさや糸に連らなる懐炉灰/野村喜舟
温石のただ石ころとなりにけり/野村喜舟
温石の冷えて重しや座業了ふ/木附沢麦青
他郷にて懐炉しだいにあたたかし/桂信子
俳句例:61句目~
夜をもどる勤めかばんに懐炉灰/大島民郎
懐炉さめて上野の闇を戻りけり/正岡子規
懐炉してこたびは雨の法然院/仲村美智子
懐炉して臍からさきにねむりけり/龍岡晋
懐炉にて焼きし火傷の深かりし/平野信義
温石を焼く火とぼしき夜更かな/鎌倉静林
竹情の温石花意の懐炉かな/菅原師竹句集
懐炉冷えて上野の闇を戻りけり/正岡子規
暖のすけとは熱からぬ懐炉の名/後藤比奈夫
句をえらみてはちかむ死か銀懐炉/飯田蛇笏
優曇華に夏はも懐炉あてて病めり/森川暁水
自刃の間懐炉もつとも熱かりし/北見さとる
文才をいささかたのむ懐炉かな/上田五千石
京に着く頃には懐炉ほつこりと/波多野爽波
中尊寺までの懐炉を買うてをり/下條杜志子
鶴を追ふ旅の懐炉は背にもえて/赤松ケイ子
懐炉抱きおのが一語にこだはりし/河野南畦
日のいつか昇りゐたる懐炉かな/藤田あけ烏
隅つこの座もよし温石ぬくめいる/富田潮児
年老いぬ懐炉を買つてくれしより/長沢石猿
俳句例:81句目~
碁好き和尚懐炉を借りて戻らるゝ/野村喜舟
神鹿のひづめさびしき懐炉かな/大木あまり
少婢は馴れて母の夜の懐炉匂はす/喜谷六花
晩成を期してもみたる懐炉かな/三田きえ子
笑はれて懐炉抱く夜の初時雨/長谷川かな女
子を打ちて懐炉はみ出す母の腰/平井さち子
老妓ともいはるゝはずよ懐炉負ひ/下田実花
むら肝のおとろへを知る懐炉かな/阿波野青畝
みぞおちの懐炉があつし川を見る/田中午次郎
懐炉入れて淋しく試験受けにけり/五十嵐播水
明けくれの身をいたはれる懐炉かな/高浜虚子
使ひ捨て懐炉死ねば即座に剥がさるる/栗林千津
懐炉あつしレンブラントの絵を過ぎて/大木あまり
朝の木ほつそり濡れてゐる窓に懐炉をはたく/大橋裸木
懐炉ぬくとく校正とどかうりなく終へて戻る/大橋裸木
温石のさめぬうち也わかなつみ/一茶/文政元年戊寅