「熱燗」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「熱燗」について
【表記】熱燗
【読み方】あつかん
【ローマ字読み】atsukan
子季語・関連季語・傍題・類語など
・燗酒(かんざけ:kanzake)
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季節による分類
・「あ」で始まる冬の季語
・「冬の生活」を表す季語
・「三冬」に分類される季語
月ごとの分類
熱燗を含む俳句例
氷鮒熱燗飲むが命なり/宗也
竹筒を焦し熱燗山祭/羽部洞然
熱燗や心の内を赤絵皿/星野紗一
熱燗を夫の催促咳一つ/杉田英子
熱燗に林火一辺倒の人/高澤良一
熱燗や狐日和を誰となく/中田剛
熱燗や炉辺の岩も焼加減/樋笠文
熱燗や性相反し相許し/景山筍吉
熱燗に饒舌続く旅の宿/天野美代子
熱燗や人が波郷を言へば泣き/林翔
俳諧と孫と将棋と熱燗と/里見宜愁
熱燗党麦酒党相半ばして/高澤良一
千悔万悔憎き酒を熱燗に/川崎展宏
熱燗や鶴を見にゆく話など/樋笠文
熱燗や虚々実々の話とび/下村非文
熱燗の今一本を所望かな/麻田椎花
熱燗や草叢に霧しづむまま/中田剛
熱燗や男同士の労はりあふ/滝春一
熱燗といえども私の涙以下/安田笙
熱燗の情も若干解し得し/矢津/羨
俳句例:21句目~
熱燗や灰ならしゐる吉野人/桂信子
熱燗に舌を焼きつつ談笑す/高浜虚子
熱燗や心おきなき友あらば/高濱年尾
熱燗に酔うて全く何をいふ/高澤良一
熱燗や捨てるに惜しき蟹の甲/龍岡晋
熱燗や禁酒守りて久しかり/禰畑汀子
熱燗や笑はせゆきし年始客/河野静雲
山茶花に此の熱燗の恥かしき/泉鏡花
放流了へ熱燗を酌む漢たち/石川文子
熱燗や耳にとびつく指の先/近衛節子
熱燗や耳遠ければ笑ふのみ/槫沼清子
熱燗や討入り下りた者同士/川崎展宏
熱燗の一杯だけは妻のもの/湯田芳洋
熱燗の余勢をかつて人物評/高澤良一
熱燗を一気に呷り口火切る/高澤良一
熱燗を二十分間つきあふと/京極杞陽
熱燗にして鹿笛を聞くばかり/飴山實
熱燗を嗜み臘虎の襟を立て/久米正雄
熱燗の故の涙と晦ましぬ/深見けん二
熱燗を置くや指先耳に当て/吉屋信子
俳句例:41句目~
熱燗に侍りし妻の二十年/瀧澤伊代次
燗酒のたちまち酔ひし旅衣/石塚友二
熱燗の閉店ちかき置かれやう/大牧広
熱燗や左手はまだふところに/森澄雄
熱燗に応へて鳴くや腹の虫/日野草城
熱燗やガラス戸重き岬茶屋/添野光子
熱燗や人にもありし隠し味/大井戸辿
熱燗や余生躓くばかりなる/石原八束
熱燗や口先で妻褒めあげて/谷口稠子
熱燗や夜は音ひそむ石屋町/渡邊牢晴
熱燗に胸広きかな赫きかな/久米正雄
つまづきし話のあとを熱燗に/松尾緑富
一升瓶ごと熱燗に村歌舞伎/相蘇としお
熱燗やこの人優しく頼りなく/川合憲子
熱燗やいつも無口の一人客/鈴木真砂女
熱燗や放蕩ならず忠実ならず/三村純也
夫に熱燗ありわれに何ありや/下村梅子
熱燗や雨の匂ひを言ひながら/石田郷子
熱燗がしみる毀れてゆくものに/蔦悦子
熱燗や爾汝の交はり五十年/小川斉東語
俳句例:61句目~
熱燗の夫にも捨てし夢あらむ/西村和子
熱燗し獄を罵しる口ひらく/秋元不死男
熱燗を異国に酌みてルビー婚/河本好恵
熱燗や四十路祝はず祝はれず/根岸善雄
熱燗や吐きし一語は神涜す/成瀬櫻桃子
熱燗の女にしても見まほしき/高浜虚子
熱燗や会ふだけで足る兄弟/大見川久代
熱燗の湯気が煙のごときかな/岩田由美
熱燗や恐妻家とは愉快なり/高田風人子
熱燗に少し気弱になりし父/吉田きよ子
熱燗に成人の子の黙しゐる/菊地美恵子
熱燗や弱気の虫のまだ酔はず/松本幹雄
熱燗に濡れて疑雨集又わぬし/加藤郁乎
熱燗やまなこのなかにそよぐ草/中田剛
熱燗や海が言はせし母のこと/北澤瑞史
熱燗に酔うていよいよ小心な/高野素十
熱燗に限る限ると注ぎ合ふも/高澤良一
熱燗や羽交ひの鴨をみし夜は/長谷川櫂
熱燗や生涯さかな売るあぐら/尾村馬人
熱燗をつまみあげ来し女かな/中村汀女
俳句例:81句目~
熱燗を十年ぶりの帰朝子と/鈴木洋々子
熱燗や女なかなか負けてゐず/下村梅子
熱燗もほど~にしてさて飯と/高浜年尾
燗酒にさようさようと応ず人/高澤良一
熱燗やふるさと遠き人と酌み/西沢破風
熱燗に好色者ひとりありにけり/岡本松浜
熱燗に少しは毒のあるさかな/佐野まもる
熱燗に泣きをる上戸ほつておけ/高浜虚子
熱燗に焼きたる舌を出しにけり/高浜虚子
熱燗に胸しびれさす生くる限り/小川星火
熱燗のさはられぬほど父懐かし/辻田克巳
熱燗の酔のさむれば意気地なく/井上哲王
熱燗や彼にはたして闘志ありや/下村梅子
熱燗や忘れるはずの社歌ぽろり/朝日彩湖
熱燗や恋に不慣れでありしころ/行方克巳
熱燗にいまは淋しきことのなし/橋本鶏二
熱燗やともに貧しきゆゑ親し/成瀬桜桃子
熱燗や手酌いかしき一二杯/久保田万太郎
熱燗やわれに流離のうたもなし/行方克巳
熱燗やまだ素顔なる泣きぼくろ/澤田緑生