「年越」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「年越」について
【表記】年越
【読み方】としこし
【ローマ字読み】toshikoshi
子季語・関連季語・傍題・類語など
・年越す(としこす:toshikosu)
・大年越(おおとしこし:otoshikoshi)
・年移る(としうつる:toshiutsuru)
–
季節による分類
・「と」で始まる冬の季語
・「冬の時候」を表す季語
・「仲冬」に分類される季語
月ごとの分類
年越を含む俳句例
年越や几の上に母の銭/石田波郷
年越の黒き爪切る百姓女/森竜南
綿虫と漂ひ年を越えゐしや/塘柊風
裏窓の涙を溜めて年移る/青野敦子
年移る闇に大きな朱欒垂れ/森重昭
残る柿ながめ年越す観世音/下田稔
冷凍の肉の一塊年を越す/池田秀水
年越や鏡の前の胼ぐすり/皆川白陀
年を越す父の薬の枕辺に/岡本高明
年移る山々鎧ふもの落とし/館岡沙緻
間伐の標を付けて年越す杉/津田清子
きのふ見し雪嶺を年移りたる/森澄雄
船宿に年越蕎麦の届きたる/鈴木貞雄
白鳥座翼張りつめ年を越す/鷹羽狩行
母の年越えて蕗煮るうすみどり/綾子
林檎柿蜜柑年越す一つ籠に/野澤節子
メモしたる年越患者回診す/松岡巨籟
年越の火屑の袖に暗きもの/古舘曹人
形見分果せず亦も年を越す/重永幽林
庭苔に胞子びつしり年移る/高井北杜
俳句例:21句目~
常住の闇へ年越し詣かな/恩田侑布子
年越しの鐘撞く衆に川漁師/中川志帆
年越すや力こめたるおのが臍/石嶌岳
年を越す艀上下に微動して/池田秀水
年を越す鉢の金魚に被せ物/高澤良一
年越の老を囲みて児孫かな/高浜虚子
魂抜けし炭団法師と年越せり/高澤良一
黒豆が箸から逃げる年越す夜/三浦ふみ
わが余生さらに余命へ年越さな/原柯城
一眼の視力頼りに年を越す/吉田満梨女
年を越す火傷切創己が手は/加藤知世子
年を越す自信出来しと闘病記/細江大寒
年移るモンローといふ蘭の花/沢木欣一
年移る杉の枝打ちせしままに/岡井省二
年越して立つ枯芒おそろしき/平井照敏
年越に蕎麦打つ家の習ひかな/伊東牛歩
年越の女中おとしと詣でけり/石田波郷
神木に揺れて鬼の子年を越す/茂里正治
年越や夜に入るほどに又の燗/小澤碧童
押へ押へ焚火の紙屑年越す店/桜井博道
俳句例:41句目~
炉の母に年移りゆく榾をつぐ/倉田紘文
猪垣の月光年を越えむとす/千代田葛彦
耳掻きの絮毛の煌と年を越す/中嶋秀子
脇宮は梯子掛けながし年移る/宮武寒々
花温室の新月くらみ年うつる/飯田蛇笏
鈴かけの鈴賑やかに年を越す/田中南耕
霧氷咲く石鎚山に年移りをり/吉野義子
ややこしきは皆先送り年を越す/高澤良一
炭窯が火を蔵しゐて年を越す/三好あさ子
無事に年越せしと告ぐる初電話/吉田きみ
嬰のごとくにころがされ年移る/長谷川双
思いきり捨てて年越す月の下/落合よう子
たつぷりと火種を埋めて年移る/菖蒲あや
遺句集の序に苦しみて年を越す/深谷雄大
年越の耳あらふこと残りけり/鍵和田釉子
かくてまた父の亡き年移りゆく/大橋敦子
風の向きに伏し枯草の年移る/鈴木六林男
餅焼きて年越し行務の肩ほぐす/河野南畦
板の間に置きて壜酒年を越す/榎本冬一郎
あをあをと年越す北のうしほかな/飯田龍太
俳句例:61句目~
ポケットの胡桃鳴らして年を越す/加藤楸邨
年を越す星の目くばせありしより/井沢正江
年越蕎麦待てばしきりに救急車/水原秋桜子
し残したこと年越してやればよい/高澤良一
しばらくは藻のごときとき年を越す/森澄雄
くらやみに年を越しゐる牛の息/木附沢麦青
宵寝して年越蕎麦に起こさるる/水原秋桜子
聖書通読詩篇まで来て年を越す/田川飛旅子
見なれたるものにも年の移るなり/有泉七種
拾はれし仔犬一と吠え年越すよ/百合山羽公
「永遠の子供」と呼ばれ年越すか/成瀬桜桃子
ふるさとの出湯に年越し蕎麦すすり/臼田亜浪
木瓜の枝のこんがらかつて年越せり/高澤良一
ぎくしゃくとしたまま年を越しにけり/高澤良一
菊枯れしまま年を越し雨にうたれをる/栗林一石路
老妻/年越して縫い上げた綿子/これを着よと云う/荻原井泉水