季語/稗(ひえ)を使った俳句

「稗」を使用した俳句についてまとめてみました。

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季語「稗」について

【表記】稗

【読み方】ひえ

【ローマ字読み】hie

子季語・関連季語・傍題・類語など

・穇(ひえ:hie_)

・畑稗(はたびえ:hatabie)

・田稗(たびえ:tabie)

・稗刈(ひえかり:hiekari)

・稗引く(ひえひく:hiehiku)

季節による分類

・「ひ」で始まる秋の季語

・「秋の植物」を表す季語

・「仲秋」に分類される季語

月ごとの分類

9月の季語

稗を含む俳句例

新田に稗殻煙るしぐれ哉/昌房

稗飯や鴉と棲家隣り合う/中村里子

稗飯や一生托すめくら縞/服部松風

稗を干す人に流心石とばす/上村占

萱鳰があり粟鳰も稗鳰も/橋本鶏二

麦飯もよし稗飯も辞退せず/高濱虚子

飛騨越や稗の垂穂の霧雫/鈴鹿野風呂

雀の稗忘れものして戻る道/高澤良一

松籟の稗また稗を引きゐたり/斎藤玄

田の稗を抜く年々の繰返し/太田土男

黒き穂の稗畑かなし山深く/山口青邨

稗の穂や塀掛け渡す岨畑/ぜぜ-野径

坐りだこ囲炉裏に痛し稗の飯/光太郎

天高き下に稗抜く女かな/金箱戈止夫

子育ての終りに抱ふ稗の丈/影島智子

秋の田やはかり尽して稗二俵/尚白/

稗の穂にすがりて雨の雀かな/石橋梅園

粟稗のかげふむ里の月見かな/藤原保吉

稗刈らな股稗刈らな飛騨山に/前田普羅

ぬきんでて稲よりも濃く稗熟れぬ/篠原

俳句例:21句目~

ハツ~と啼かぬ虫とぶ薙の稗/前田普羅

一の沢二の沢稗田稔りけり/広江八重桜

稗抜いて障子灯りぬ一軒家/大峯あきら

乳房もて稲押し進む稗抜女/本間/一萍

稗抜くや月西国へゆくごとし/庄司圭吾

稗穂抜く人に夕鷺わたりけり/木村蕪城

笠ぬちの顔を略しぬ稗案山子/皆吉爽雨

粟稗の弓ため直ほす日和かな/水田正秀

粟穂稗穂や朝から樵酒びたり/荒井正隆

胎内を四、五日歩く稗生えて/西川徹郎

胸の辺の絣褪せけり稗抜き女/皆川白陀

道なべて舗装されても雀の稗/高澤良一

野稗の穂盾に雲の下りにけり/下村槐太

月てるや薙の稗畑まさやけく/前田普羅

畦にゐて抜くべき稗を確める/廣瀬直人

雀の稗傾ぐ夕日が穂を染めて/高澤良一

秋の田に抜きためて手の稗あをし/柳芽

雨がちに海女の遅れ田稗多し/石田波郷

鳥籠の稗ぬれてゐる雪解かな/永井龍男

仕事ともなく雲の田に稗ひきに/松瀬青々

俳句例:41句目~

この旅に稗抜きをよく見かけけり/森田峠

ぬきんでて伸びしは稗に紛れなし/榊東行

一抱へ稗をかゝへて笠が邪魔/渡辺/池汀

人さやぎ飛騨の山稗熟るゝとふ/前田普羅

抜き捨つる稗の根揃へては畦に/光永峽関

地上では子が親になり稗を抜く/安川貞夫

山鳩ひそと稗啄んで交りたる/中村草田男

戦ひは稗田粟田の案山子かな/坂本四方太

遠不二に稗の抜穂をかかへ佇つ/木村蕪城

稗抜き女穂波に没りてしまひけり/堀古蝶

飛騨人や刈りこそいそげ股稗を/前田普羅

日照雨来や峡田は稗を躍らしめ/石田波郷

稗抱へ田を遠泳のやうに来る/猪俣千代子

稔田に交りて稗のまんめんじん/高澤良一

野稗引くたび石舞台昏るるのみ/向山隆峰

稗もげに世の中よかれ最がみ川/広瀬惟然

飛騨人や股稗かしぐかんばの火/前田普羅

稗の月母児の寝屋はとざさるゝ/前田普羅

稗の穂や昔を今に木曽路古り/鈴鹿野風呂

稗枯れて月にも折るゝ響きせり/前田普羅

俳句例:61句目~

稗抜きて鍬を濡らさず戻り来し/茨木和生

稗干して午後はくづるる山の雨/大津希水

稗は穂にどこかに神の話し聲/河原枇杷男

股稗のその身重たく飛騨に伏す/前田普羅

稗抜きにぽつぽつ降りの笠匂ふ/西村公鳳

稗の穂の吹かれ穂稲の波のよ/佐々木六戈

抜きし稗うづ高きまで捨てゝあり/前田六霞

あかざ長け稗田の阿礼を祀る辺に/田中英子

稗草は飽かぬ草にてコップに挿す/山口誓子

稗刈れば霜はさやかに降りにけり/前田普羅

離官みち稗抜き捨てゝありにけり/清水忠彦

稗の穂は垂り稲はツンツンと/竹下しづの女

稗を抜くぶつきらぼうな顔が来て/茨木和生

稗みのる谷へ射す陽のうつくしく/浅見波泉

稗抜きのこごめば鼻もかなしげに/細谷源二

稗さわぐ日の押入れの中のたましい/西川徹郎

稗の穂のそれより低くしづかなる頭/岩田昌寿

今もきこえる稗搗く唄の顔あきらか/津沢マサ子

稗ぬきのきのふをはりし田のひまに/長谷川素逝

稗の葉の門より高きあつさ哉/一茶/年次不詳

俳句例:81句目~

秋さびしもののともしさひと本の野稗の垂穂瓶にさしたり/古泉千樫

粟稗にとぼしくもあらず草の庵粟稗にまづしくもなし草の庵/松尾芭蕉