「蘭」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「蘭」について
【表記】蘭
【読み方】らん
【ローマ字読み】ran
子季語・関連季語・傍題・類語など
・秋蘭(しゅうらん:shuran)
・蘭の秋(らんのあき:rannoaki)
・蘭の花(らんのはな:rannohana)
・蘭の香(らんのか:rannoka)
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季節による分類
・「ら」で始まる秋の季語
・「秋の植物」を表す季語
・「仲秋」に分類される季語
月ごとの分類
蘭を含む俳句例
蘭の香や蝶の翅に薫物す/芭蕉
食櫃に匂ひも移せ蘭の花/伽孝
椽側にさし入月や蘭の花/涼莵
いづゝから日本風ぞ蘭の花/一茶
蘭の香や角ふりもどす蝸牛/桃隣
大いなる蘭の鉢あり応接間/虚子
蘭の香に老も若きも寐覚哉/白雄
蘭の花暮色の冷えにゐて匂ふ/虎雄
秀づると見えし紫蘭の花/後藤夜半
蘭の香や浮世に遠き謦も鳴る/月渓
紫の淡しと言はず蘭の花/後藤夜半
遺言を守る十年や蘭の花/前川素泉
竃舌蘭の花刈るなかれ御墓守/篠原
五年物十年物や蘭の鉢/保田白帆子
唐人の巻物見るや蘭の鉢/寺田寅彦
蘭の香やここはどこの冬の雨/澁谷道
蘭の香にはなひ待つらん星の妻/其角
乱るゝは風の当字や蘭の花/横井也有
蘭の香に遊ぶ日はなし菊の花/千代尼
蘭の香やかけかへて見る床の軸/荷風
俳句例:21句目~
蘭の香や異国のやうな三日の月/一茶
蘭の香や聖教帖を習はんか/夏目漱石
蘭の香や菊より暗きほとりより/蕪村
蘭の香も閑を破るに似たりけり/青蘿
蘭の香や雑穀積たる船の底/高井几董
蘭の香や君がとめ奇楠に若も又/炭太祇
つと入や蘭の香にみつ一座敷/松瀬青々
のうれんにおく蘭の香のこもり哉/青々
蘭の香やくらき所に亭主ゐる/松瀬青々
幼な子が鼻よせて嗅ぐ蘭の花/細見綾子
蘭の香の父晩年の部屋に憑く/野澤節子
蘭の花の風に祀りて吉備津彦/宮津昭彦
蘭の香は薄雪の月の匂ひかな/松岡青蘿
蘭の花師の恵来を謝して酌む/高田蝶衣
蘭の花幽かに揺れて人に見す/西東三鬼
蘭の香や女詩うたふ詩は東坡/正岡子規
茶殻染めの腰衣干しぬ蘭の花/吉田冬葉
蘭の香や糸なき琴のしらべより/松岡青蘿
室咲きの栄光といふ蘭の花/渕野/なぎさ
既望は葉がくれに見る蘭の香ぞ/松岡青蘿
俳句例:41句目~
蘭の花はみだら晩学稚気多く/小野蒙古風
蘭の香はほしいままなるものならず/綾子
蘭の香やたふとい方とご不浄に/筑紫磐井
見舞はれて蘭の香にふと涙かな/毛塚静枝
われをにくむ人に贈らむ蘭の花/会津八一
雨ばかりなれば蘭の香人につく/細見綾子
蘭の香や暖爐焚かざるきのふ今日/及川貞
われ等みな名もなき山の蘭の花/会津八一
南十字星またたき蘭の花睡る/成瀬桜桃子
蘭の香や窓には冬のいわし雲/水原秋櫻子
蘭の鉢に南天の実のこぼれたる/寺田寅彦
むせび泣くあまりに高き蘭の香に/渡辺恭子
蘭の香や眉じり細くひきをはる/鷲谷七菜子
けざやかに秋蘭花のおびたゞし/高橋淡路女
蘭の花にかはらぬ水の水さびかな/子規句集
蘭の香や派手を承知のアロハ買ふ/城/太郎
蘭の香や詩を読みて又た夜を寐ず/荻原井泉水
蘭の香の言葉のはしにただよへり/米澤吾亦紅
蘭の香やむかし洋間と呼びし部屋/片山由美子
抱きおこされて妻のぬくもり蘭の花/折笠美秋
俳句例:61句目~
イブの夜も暮れて蘭の花抱けば人待つこころ微熱持ち初む/又江啓恵