「雁」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「雁」について
【表記】雁
【読み方】かり
【ローマ字読み】kari
子季語・関連季語・傍題・類語など
・がん(がん:gan)
・かりがね(かりがね:karigane)
・真雁(まがん:magan)
・菱喰(ひしくい:hishikui)
・酒顔雁(さかつらがん:sakatsuragan)
・小雁(こかりがね:kokarigane)
・白雁(はくがん:hakugan)
・黒雁(こくがん:kokugan)
・灰色雁(はいいろがん:haiirogan)
・四十雀雁(しじゅうからがん:shijukaragan)
・沼太郎(ぬまたろう:numataro)
・山七面鳥(やましちめんちょう:yamashichimencho)
・野雁(のがん:nogan_)
・姫雁(ひめがん:himegan)
・雁の列(かりのれつ:karinoretsu)
・雁の棹(かりのさお:karinosao)
・雁字(がんじ:ganji)
・雁陣(がんじん:ganjin)
・雁行(がんこう:ganko)
・雁が音(かりがね:karigane_)
・初雁(はつかり:hatsukari)
・雁渡る(かりわたる:kariwataru)
・雁来る(かりきたる:karikitaru)
・天津雁(あまつかり:amatsukari)
・雲井の雁(くもいのかり:kumoinokari)
・小田の雁(おだのかり:odanokari)
・落雁(らくがん:rakugan)
・病雁(びょうがん:byogan)
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季節による分類
・「か」で始まる秋の季語
・「秋の動物」を表す季語
・「晩秋」に分類される季語
月ごとの分類
雁を含む俳句例
雁の声朧々と何百里/支考
飛雁の影や凡そ十三夜/成文
雁や父の声のみ月明に/雅人
箱王が指す雁や暮の鐘/秋色
天上に鳶の木赫と雁渡/原田喬
雁や骨壷にある花結/古舘曹人
草木より人飜る雁渡し/岸田稚
夕映の津軽海峡雁渡る/岩城湍
病雁の夜寒に落て旅ね哉/芭蕉
雁門や鯨さばしる五月雨/露沾
雁渡るひかり帆綱は鋼綱/原裕
堤の雁のさき下がりなる/山店
風鐸の天楽となる雁渡し/原裕
雁金や竿になる時猶淋し/去来
今生と思へぬ声に雁渡る/林火
居風呂に入時寒し雁の声/太無
明月や一声くもる天津雁/許六
雁高し芭蕉を破る風の爪/麦南
雁を飛ばす火種の鶏頭花/齋藤玄
天心の青迅からむ雁渡/平井照敏
俳句例:21句目~
雁陣は今お挙に納まりけり/調泉
ふり売の雁ン哀れなり夷講/芭蕉
あら波や或は低き雁の列/原石鼎
繋留の湖の釣舟雁渡し/松本悦子
白雁や野馬をおどす草の露/許六
海港に展く空港雁渡し/倉橋弘躬
まだ雁がゐて織絣染絣/長谷川双
雁がねの竿に成る時猶淋し/去来
雁のへだてぞ佳けれ筆硯/齋藤玄
荒磯や初雁渡るしほけぶり/樗良
月落て雁なく淀の水車/羅蘇山人
初雁や比良で追つく帆懸舟/木節
雁渡し山脈力集め合ふ/村越化石
草山や潮じめりにかへる雁/成美
黒き身の己を恃み残る雁/下田稔
渡るなり大橋ように雁の声/幽山
雁の声蓮尽く破れたり/子規句集
雁ゆくや古き映画の二本立テ/敦
雁や噛みしめてゐる飯の味/秩父
大板に走る鉋や雁渡る/加納野梅
俳句例:41句目~
故郷へ雁に壱歩が銭分けん/酒堂
稲主に啄をかくすや小田の雁/毛
雁渡る渤海といふ黄昏に/日原傳
弔旗垂れ雁来月端紐育/高澤良一
巡礼の目玉釘づけ雁の道/齋藤玄
青空を雁が流れぬ厚氷/橋本鶏二
病雁の夜さむに落て旅ね哉/芭蕉
初雁や銀短冊の五六枚/野村喜舟
雁坂の方は雲なり藤袴/村沢夏風
初空や雁の大棹一文字/佐藤国夫
雁渡る月下に黝き防砂林/柊愁生
越前は雲繞る国雁渡し/堀口星眠
雪をよぶ雁や年立つ鄙の空/青々
満たぬまま保つ平安雁夕ベ/林翔
雁の腹見すかす空や船の上/其角
必よあとなる雁が先になる/白雄
峠まで一本の道雁渡し/草間時彦
雁啼くやひとつ机に兄いもと/敦
雁や歳月沈む石の下/櫛原希伊子
岬端の礁泡だつ雁渡し/伊藤ふみ
俳句例:61句目~
雁や蔵の匂ひの服裏地/栗林千津
雁北に秩父は雲の中なるや/麦南
初雁の盛鹽したる車寄/古舘曹人
病院も寺も一と谷戸雁渡る/龍男
沖までの潮の濃淡雁渡し/柊愁生
行雁の思切りたる高さかな/紅葉
夢になくわが衰へや軒の雁/成美
雁鳴くや御殿々々の鎖し頃/自笑
漆黒の円空仏や雁渡し/田阪笑子
雁や祝婚にわれ弔に妻/川村紫陽
雁の足は屑屋の足ならむ/齋藤玄
雁の道はなかりき水景色/齋藤玄
雁鳴いて村娘かと観世音/有働亨
岩船の塔婆襖や雁渡し/落合水尾
阿蘭陀の文字か横たふ旅の雁/宗因
縄文の遺跡の空を雁渡る/山下佳子
雁去りしあと教会の避雷針/長田等
門の雁我帰つてもねめつける/一茶
初雁の信濃にかゝる夜は寒し/暁台
初雁の空の薄墨流しかな/根岸善雄
俳句例:81句目~
海の碧藍に変れり雁の頃/田中英子
海坂の藍の深さや雁渡し/水原春郎
海底の岩にわが影雁渡し/西村公鳳
雁仰ぎをり人間は泪の木/香取哲郎
雁一つ竿の雫となりにけり/士朗/
初雁や声あるものを見失ひ/千代尼
渚嗅ぐ犬と逢ひけり雁渡し/飴山實
雁をわが白息の上に見し/杉山岳陽
銅鐸のしらべをはこぶ雁渡し/原裕
鉦提げて村人集ふ雁渡し/篠崎圭介
雁わたる薄墨使ひはじめの夜/原裕
鹿渡嶋や雁も磯なの暇乞/水田正秀
北山杉風の相聞行く雁と/渡辺恭子
鶏頭に後れず或夜月の雁/夏目漱石
雁わたるむかひは平野久法寺/山店
又来たと鴉おもふや小田の雁/支考
てのひらの六道を雁渡りゆく/蝶丸
双塔の影を一つに雁渡し/加古宗也
こめかみに未完の稿と雁渡し/原裕
首ゆりつ運動場を雁わたる/飴山實