「硯洗」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「硯洗」について
【表記】硯洗
【読み方】すずりあらい
【ローマ字読み】suzuriarai
子季語・関連季語・傍題・類語など
・硯洗う(すずりあらう:suzuriarau)
・机洗う(つくえあらう:tsukuearau)
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季節による分類
・「す」で始まる秋の季語
・「秋の行事」を表す季語
・「初秋」に分類される季語
月ごとの分類
硯洗を含む俳句例
おもへたゞ硯洗ひの後の恥/園女
物好や硯洗ふて鮓の圧/尾崎紅葉
手を洗ひ耳洗ひ硯洗ひけり/柏禎
年々や硯を洗ふ墨の滓/佐藤紅緑
月詠みし重硯を洗ひをり/上村占
志存して洗ふ硯かな/池上浩山人
硯洗ふ良寛自得自在たり/田中水桜
髪梳いて硯を洗ふ歌娘/鈴鹿野風呂
生涯の一つ硯を洗ひけり/綾部仁喜
洗硯す晩年はかく寂びたらむ/林翔
高階に硯を洗う鈴の空/鈴木六林男
ゆく年の硯を洗ふ厨かな/三好達治
洗ひたる硯のせ行く掌/赤星水竹居
撫でたくて小春の硯洗ふなり/林翔
窪みたる硯の月日洗ひけり/森緑葉
硯面の歳月の疵洗ひけり/藤井凌雪
徐霞客の暴に洗ひし硯かな/尾崎紅葉
うき草に硯洗へり鵜匠の子/飯田蛇笏
御秘蔵の硯を洗ふ小姓かな/鈴木苔花
生涯の硯とおもひかつ洗ふ/竹本白飛
俳句例:21句目~
すり癖の残る硯を洗ひけり/福田寿子
疵数多の無銘硯も洗ひけり/岩本光曜
眉の辺に宵ある硯洗ひけり/岡井省二
硯洗ひ半日の閑あまりあり/横井迦南
何は置き硯を洗ひ清めんと/高木晴子
少しづつ山遠ざかり硯洗ふ/折井紀衣
高僧のかたみの硯洗ひけり/星野立子
摺り減りし硯洗へり業のごと/絵馬寿
洗ひたる硯に水の澄んでをり/上野泰
洗ひたる硯を磨れば墨の虹/三星山彦
塾閉ぢし妻の洗へる硯かな/綾部仁喜
大望を捨てんと硯洗ひけり/村松紅花
天に河地に川硯洗ひけり/飯沼三千古
洗ひもせで帳場硯や二十年/升本翠華
子の名前薄れし硯洗ひけり/下間ノリ
洗硯の後棒硯の事あらむ/相生垣瓜人
濤音の天より硯洗ひけり/菅原多つを
父と子に一つの硯洗ひけり/細川加賀
山水の迅きに洗ふ硯かな/大橋越央子
巌に灯して硯洗ふや女の童/会津八一
俳句例:41句目~
いにしへの硯洗ふや月さしぬ/加藤楸邨
硯洗ふ手もと小暗く噴井かな/石川桂郎
すり減りし父の遺愛の硯洗ふ/武田光子
ひとり洗ふ硯の上の咀華忌かな/齋藤玄
今年またひとつの硯洗ひをり/石川桂郎
硯洗ふ献句短冊着きたれば/殿村菟絲子
硯洗ひ野分の端に波郷病む/秋元不死男
句に生きて慾なき硯洗ひけり/田口雲雀
名を書くと硯洗ひし誕生日/八木三日女
硯洗ふ雲ながれてはとどまらず/岬雪夫
文弱のいのちの硯洗ひけり/上田五千石
家ひそかなるや硯を洗ひをり/石田波郷
筆硯を洗ふ朝涼おのづから/長谷川素逝
興福寺の筆あり硯洗ひけり/鈴木しげを
袖濡れて硯洗へり大三十日/水原秋櫻子
親と子のごとき硯を洗ひけり/八染藍子
愛用の名も無き硯洗ひけり/冨田みのる
我の手に帰したる硯洗ひけり/大石暁座
我永久に遺す硯を洗ひけり/深川正一郎
濁り川硯洗ひしのちに見る/百合山羽公
俳句例:61句目~
洗ひたる硯匂ふに任せけり/相生垣瓜人
深き秋もの言はぬ師に硯洗ふ/小池文子
洗ひたる硯の海といふところ/杉浦東雲
洗ひたる硯にほそき筆二本/高橋淡路女
洗ひあげて端渓と知る硯かな/柴原碧水
洗ひたる硯に侍る思ひあり/篠塚しげる
洗硯の一戸球磨川べりにあり/神尾季羊
手で洗ふ硯の裏や柚子の花/藤田あけ烏
硯二つ重ね沈めて洗ひけり/池上浩山人
硯洗うや虹濃き水の豊かなる/飯田蛇笏
洗硯の雲にかがやき戻りたり/矢野典子
硯洗ひ肉声もたぬ父の文字/水鳥ますみ
洗はるる大硯石にかへらんと/皆吉爽雨
硯洗ふは心を洗ふにもまさり/原コウ子
硯洗ふや落ち来る水の高きより/原月舟
硯洗ふや虹濃き水の豊かなる/飯田蛇笏
硯洗ふリラの花ある小さき闇/桜井博道
硯洗ふ天山山脈見ゆるまで/九鬼あきゑ
硯洗ふ妻居ぬ水をひびかせて/石田波郷
さざなみや硯洗ひし手をあらひ/長谷川双
俳句例:81句目~
午後の日の早くもかげり洗硯す/西村止子
君が名や硯に書いては洗ひ消す/夏目漱石
夫亡くて子ありて洗ふ硯かな/鈴木真砂女
十年の硯洗ふこともなかりけり/正岡子規
恍として洗はるるなる硯かな/相生垣瓜人
悪筆の硯洗ふはかなしきこと/後藤比奈夫
炉の名残墨交る朱硯洗ひけり/柴田紫陽花
洗ひたる硯に暫し待しにけり/相生垣瓜人
梅雨ぐもり写経の硯洗ひけり/高橋淡路女
硯洗ひ干す亭二三歩の斜面かな/飯田蛇笏
硯洗ふ墨あをあをと流れけり/橋本多佳子
旅の吾に妻や硯を洗ひをらむ/星野麦丘人
硯洗ふやりんりんと鳴る山水に/新田/豊
硯洗ふ蔵王真水をあふれしめ/小枝秀穂女
今年より吾子の硯のありて洗ふ/能村登四郎
家学われに絶ゆる硯を洗ひけり/池上浩山人
硯洗へば梶ながるるやさやさやと/飯田蛇笏
誰が持ちし硯ぞ今日をわが洗ふ/水原秋櫻子