「砧」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「砧」について
【表記】砧
【読み方】きぬた
【ローマ字読み】kinuta
子季語・関連季語・傍題・類語など
・衣打つ(ころもうつ:koromotsu)
・擣衣(とうい:toi)
・夕砧(ゆうきぬた:yukinuta)
・宵砧(よいきぬた:yoikinuta)
・小夜砧(さよきぬた:sayokinuta)
・遠砧(とおきぬた:tokinuta)
・砧の槌(きぬたのつち:kinutanotsuchi)
・砧盤(きぬたばん:kinutaban)
・藁砧(わらきぬた:warakinuta)
・紙砧(かみきぬた:kamikinuta)
・葛砧(くずきぬた:kuzukinuta)
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季節による分類
・「き」で始まる秋の季語
・「秋の生活」を表す季語
・「三秋」に分類される季語
月ごとの分類
砧を含む俳句例
蝶の昼艶深くなる砧盤/原裕
砧打つ星の真下に外厠/春樹
山家鳥虫歌の情砧かな/龍岡晋
灯火に風打付ける砧かな/青蘿
砧更て月は葎に隠れけり/成美
遠砧この川越ん橋もがな/白雄
白壁にひゞく蘇州の水砧/森田峠
生家には諭吉が母の砧槌/森田峠
西風の里や大勢砧打つ/中川富女
箒編む黍殻をうつ寒砧/西本一都
宵々の砧もうとし初しぐれ/我則
月代や芭蕉林に砧打つ/沢木欣一
藍滲む宮古上布の砧盤/飯島晴子
猿引は猿の小袖を砧哉/松尾芭蕉
小夜砧隣のむすこ戻りけり/春蛙
松茸の笠のびびれる砧かな/徐寅
灯明の灯をかき立て砧かな/許六
紙砧うつ戸毎水温む里/吉田冬葉
日盛や門前に打つ箔砧/前田普羅
渡守の妻が砧や川向ひ/寺田寅彦
俳句例:21句目~
其姿思ふぞ月に打つ砧/尾崎紅葉
砧打つ臼の上なる灯かな/左衛門
砧打つ新垣幸子星月夜/黒田杏子
年歩む大樟の根の砧石/岸原清行
遠景に王陵まろき水砧/原田青児
門前の姥が砧や妙心寺/松瀬青々
砧女に大いなる月や浜社/飯田蛇笏
高雄路や紅葉の下の砧盤/野村泊月
奥笠置雪にとざされ葛砧/橋本鶏二
星落つる籬の中や砧うつ/高浜虚子
砧打つて都の月ぞ瓦屋根/尾崎紅葉
玉川や夜毎の月に砧打つ/正岡子規
砧盡て又のね覚や納豆汁/榎本其角
灯を細め寝つけば響く砧かな/杉風
うき我に砧うて今は又止ミね/蕪村
打ちみだれ片乳白き砧かな/泉鏡花
砧打二人となりし話し声/日野草城
砧盤あり差出す灯の下に/高浜虚子
山彦の打てもどしに砧かな/紫貞女
淋しさに来れば母屋も砧かな/孤舟
俳句例:41句目~
砧打て我にきかせよや坊が妻/芭蕉
山里の砧の音も宵のほど/松藤夏山
日暮から長屋へやつて砧かな/如元
旅に出てどこかで砧見し記憶/立子
砧打つ里にぞ舟は着きにける/吾空
砧打つ二人となりし話声/日野草城
御所方も夜寒につづく砧かな/ふぢ
寒雁のほろりとなくや藁砧/原石鼎
けい~と夜鴉渡る砧かな/内田百間
藁砧置きあるままに雪囲/竹腰八柏
左手の槌のはじむる藁砧/後藤夜半
晴山に高々と昼砧かな/楠目橙黄子
夜咄の夫呼び戻す砧かな/藤野古白
杣が妻戸口に打てり葛砧/橋本鶏二
砧打つ人の替りし音変り/塩田月史
月に透く浮靄よろし遠砧/高田蝶衣
憂き我に砧打て今は又止みね/蕪村
葛砧梅に沈みて一戸あり/橋本鶏二
月の出や扉を砧にて抑へ/吉田紫乃
雨そふて悲しさつるゝ砧かな/鳴鳳
俳句例:61句目~
餅花や幾代を土間の砧石/倉田晴生
さきがけし簷端の梅や葛砧/橋本鶏二
さぞ砧孫六やしき志津屋敷/榎本其角
その音の藁砧とは知らざりし/上村占
どたばたは婆の砧と知られけり/一茶
昼砧雨の中行く馬上かな/楠目橙黄子
ひとつやの一つ砧に月ひとつ/中勘助
まつさをの藁に砧や注連作/柏崎夢香
みちのくの果に砧を聞く夜かな/渋亭
むつ言の枕にひゞく砧かな/尾崎紅葉
久に来し新羅の古都や遠砧/山地曙子
乱るゝや二挺砧の一つより/島田青峰
佐田をとふ夜川に遠の砧哉/加舎白雄
何おもふ砧俄にうちやみぬ/松瀬青々
元朝の音のすなはち海苔砧/青木重行
出しぬけに砧打ち出す隣哉/正岡子規
声澄みて北斗にひびく砧哉/松尾芭蕉
夢ゆるくうつゝせはしき砧かな/大魯
ほこほこと男が打てる藁砧/大石悦子
寂しさを砧にきかで紙衣哉/横井也有
俳句例:81句目~
寂光院の道問へば置く藁砧/松藤夏山
島に来て湖忘れゐしわら砧/桂樟蹊子
月の浜どの家の打つ砧かな/咲寿一樹
寝よといふ寝ざめの夫や小夜砧/炭太
月落ちて枕にひゞく砧かな/羅蘇山人
月夜にて音の正しき藁砧/藤井冨美子
相住や砧に向ふ比丘比丘尼/黒柳召波
砧うてば破れ了りぬ鮓の石/千家元麿
砧てふところのなまへ衣被/田中裕明
砧の灯芋の嵐にいき~と/阿波野青畝
砧一つ小夜中山の月夜かな/飯田蛇笏
砧女や箆美しきうしろ髪/軽都烏頭子
砧打つカンテラの影法師哉/寺田寅彦
砧打つ音の居眠り加減なる/茨木和生
砧打てば砧打ちけり川向ひ/松村鬼史
砧槌立てて身にしむ咄かな/橋本鶏二
神送り出して宮司の藁砧/ふけとしこ
秋の猫砧の上をまたぎゆく/鈴木花蓑
紙砧をりをり石の音発す/橋本多佳子
紙砧子守わらべの立つ戸より/及川貞