「麦」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「麦」について
【表記】麦
【読み方】むぎ
【ローマ字読み】mugi
子季語・関連季語・傍題・類語など
・穂麦(ほむぎ:homugi)
・麦の穂(むぎのほ:muginoho)
・大麦(おおむぎ:omugi)
・小麦(こむぎ:komugi)
・皮麦(かわむぎ:kawamugi)
・裸麦(はだかむぎ:hadakamugi)
・燕麦(えんばく:embaku)
・オート麦(おーとむぎ:otomugi)
・ライ麦(らいむぎ:raimugi)
・黒麦(くろむぎ:kuromugi)
・麦畑(むぎばたけ:mugibatake)
・麦生(むぎう:mugiu)
・麦の波(むぎのなみ:muginonami)
・痩麦(やせむぎ:yasemugi)
・早麦(わせむぎ:wasemugi)
–
季節による分類
・「む」で始まる夏の季語
・「夏の植物」を表す季語
・「初夏」に分類される季語
月ごとの分類
麦を含む俳句例
郭公穂麦が岡の風はやみ/麦水
草山や南をけづり麦畑/夏目漱石
麦熟れて夕真白き障子かな/汀女
麦畑の広く明るし花曇/鈴木花蓑
藪畔や穂麦にとどく藤の花/荊口
傾ける地の雲の峯麦畑/京極杞陽
雨歇間麦畑赤む向ひ島/滝井孝作
匍初めし穂麦の中の胡瓜苗/篠原
曙や麦生が翳す春の露/石塚友二
窓外に視線やはらぐ麦畑/桂信子
太陽の三時の色の麦畑/高澤良一
茫々と麦生つゞけり胸の病/誓子
麦熟るる島へ診療船来る/山崎一角
廂まで熟れ麦迫り白き飯/栗生純夫
落日の荘巌麦の穂が囃す/桜木俊晃
つとに起きて見れば花散る麦畑/湖
麦畑の眩しき晴や三ヶ日/野村喜舟
遠山もなき麦畑の菫かな/野村喜舟
青穂麦より男出づ女出づ/右城暮石
旅の顔上げて穂麦の風疾/村沢夏風
俳句例:21句目~
熟れ麦のにほふ夕べを雨来らし/貞
光りて青き麦生戦前戦後なし/昌寿
春近したゞ麦畑の夕日影/尾崎迷堂
昼顔の咲くや砂地の麦畑/子規句集
暖かや走り穂見ゆる麦畑/松藤夏山
門前の穂麦の丈の整ひし/秋月城峰
枯葭の隔つ荒磯と麦畑と/高濱年尾
開帳の幟穂麦の中に立つ/島田芳恵
正月や袂振りゆく麦畑/金尾梅の門
迫り来て直に塀なる穂麦かな/篠原
子供らの夕べの顔や穂麦中/正一郎
いざともに穂麦喰はん草枕/松尾芭蕉
若者の頭が走る麦熟れゆく/西東三鬼
母の日のひばりのあがる麦畑/轡田進
雪影のいざない小麦集落地/対馬康子
面干にすく~里の穂麦かな/松瀬青々
麦畑そのまま江に浸りゐる/京極杞陽
沖遠く穂麦流るる馭者の夢/小川軽舟
麦畑出て堰のあまたの白水泡/中拓夫
麦畑歩いて愛と戦のこと/鈴木六林男
俳句例:41句目~
五月すでに父と子裸麦育つ/中島斌男
仏飯の湯気麦畑に日があたり/桂信子
修道女わが眼に触れて麦畑に/澁谷道
麦畑継ぎ目なく風送るなり/高澤良一
化粧田や付てよびぬる裸麦/井原西鶴
青麦の穂のするどさよ日は白く/篠原
青麦の穂はかぎろへど母いづこ/篠原
麦の穂の不揃ひ風の奔放に/佐藤愛子
麦の穂の中の校舎や午の鐘/島田青峰
夏海へ燈台みちの穂麦かな/飯田蛇笏
大旋風生まるることも麦畑/高澤良一
麦の穂はのびて文福茶釜道/富安風生
麦の穂や畦に並んで午餉人/島田青峰
麦の穂を挿しある銀の花瓶かな/篠原
オルガンの曲療園は麦熟れて/有働亨
天辺の流氷が揺れ麦熟れる/坪内稔典
寺山や穂麦にたわみ竹実る/飯田蛇笏
浪の声島山の麦熟れにけり/臼田亞浪
市中の穂麦も赤み行春ぞ/芥川龍之介
門先や踏みしばかりの麦畑/松藤夏山
俳句例:61句目~
穂麦中帽子尖れる父の所在/津田清子
提灯に穂麦照らされ道左右/西山泊雲
穂麦風顎紐掛けて機関助手/斎藤朗笛
空海のふるさと小麦熟るる頃/乾燕子
練兵のあとかたもなく麦畑/中川宋淵
旅芝居穂麦がもとの鏡たて/與謝蕪村
花籠に挿し添ふ穂麦二三茎/西島麦南
暮れゆくや海光荒き穂麦原/臼田亞浪
蕎麦あしき京をかくして穂麦哉/蕪村
角刈の如く麦畑桐咲く丘/田川飛旅子
麦畑をにらみゐるなり二日灸/野村喜舟
うつうつとさらさらと青麦畑/矢島渚男
熟れ麦の香や海へ行く道下る/井本農一
麦の穂や灯の瞬きに暮るゝ里/島田青峰
ふるさとは穂麦に溺れ雀の子/富安風生
空曇り大麦を搗く杵ほてる/廣江八重櫻
父の眸や熟れ麦に陽が赫つとさす/龍太
猟犬の嗅ぐ香うすれし青麦畑/右城暮石
凍てゆるむ麦生畑の早桃はも/飯田蛇笏
雪国の蔵座敷見ゆ穂麦中/阿部みどり女
俳句例:81句目~
麦畑が市の果なせり宣伝車/米沢吾亦紅
穂麦の列閲しゆくぞよ平教師/香西照雄
麦の穂にあたたかき雨父が見ゆ/中拓夫
大麦の穂の濁りゆく月夜かな/中島月笠
麦畑に風少しある淑気かな/高橋淡路女
青麦生右眼つむれば茫々たり/石川桂郎
夭折もすでに望めず穂麦立つ/馬場駿吉
麦熟れて雉子の卵のかへる時/細見綾子
穂麦原徐州へ汽車の向きまる/桂樟蹊子
麦の穂の出揃ふ頃のすが~し/高浜虚子
手に熱き穂麦や今宵娶るべく/岸本尚毅
斜面の麦畑光がのぼるのぼる/北原白秋
麦畑の起き伏し冬日わたるなり/瀧春一
麦熟れてあたたかき闇を満す/西東三鬼
明易く穂を揃へたる小麦かな/中島月笠
月下の穂麦煌々婚期定まらず/宮慶一郎
麦熟るる匂ひ合歓咲く内灘ヘ/沢木欣一
鉢巻が日本の帽子麦熟れたり/西東三鬼
穂麦原日は光輪を懸けにけり/臼田亞浪
真晝野の光り琥珀に麦熟れぬ/内藤吐天