「甘藍」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「甘藍」について
【表記】甘藍
【読み方】かんらん
【ローマ字読み】kanran
子季語・関連季語・傍題・類語など
・キャベツ(きゃべつ:kyabetsu)
・玉菜(たまな:tamana)
–
季節による分類
・「か」で始まる夏の季語
・「夏の植物」を表す季語
・「初夏」に分類される季語
月ごとの分類
甘藍を含む俳句例
七日喪の霜の甘藍呟きぬ/岸田稚
鳥交る甘藍渦を巻返し/広瀬とし
初市へ農夫甘藍光らせて/森水仙
甘藍の畑に犬の顔高し/岸本尚毅
雷や蒼々として大玉菜/楠目橙黄子
女優ゆき甘藍畠いろ強き/下村槐太
甘藍の縦断面に瞠目す/相生垣瓜人
八荒の畑を甘藍めくれ飛び/森田峠
青嵐甘藍ゆらぐとも見えず/林原耒井
夕映の甘藍蝶を去らしめず/木下夕爾
甘藍の渦の真上の月の出よ/中村千絵
月の下千々に蝕む玉菜かな/林原耒井
甘藍をだく夕焼の背を愛す/飯田龍太
初霜や甘藍緊まり極まれば/林原耒井
甘藍の渦まくちから潤ふ日/成田千空
甘藍にてんと虫飛べり巴里祭/安住敦
時鳥野に甘藍の渦みだれ/水原秋櫻子
温室をかこむキャベツの畠かな/篠原
甘藍の玉巻くまへの青さかな/佐川広治
甘藍や潟のいづこも波照りて/川口哲郎
俳句例:21句目~
甘藍をひらいて見れば星の修羅/杉田桂
切売のキャベツ銅婚麗らかに/斉藤夏風
病者には千切キャベツ針の触/辻田克巳
郭公鳴き甘藍の玉昏れなやむ/木下夕爾
雲まぶし甘藍出荷せし野なり/木村蕪城
収穫すキャベツ白磁に蔬菜籠/飯田蛇笏
露ながら玉菜かゝへて童子哉/中川宋淵
夏キャベツ盛り沢山に勝烈庵/高澤良一
学守るスト校庭一隅玉菜巻き/川口重美
晴耕の夫抱へくる大キャベツ/河本好恵
梅雨しぶく獄の菜園玉菜肥ゆ/森川暁水
キャベツ畑鬱然たるは雲過ぎをり/林翔
母となる日へ甘藍の巻き太る/田中菅女
嬬恋に玉菜すすぎの雨いたる/田中忠男
甘藍に影なす妻の立てるなり/杉山岳陽
甘藍のきざまれし嵩否定せじ/下村槐太
甘藍の一片をさへあますなし/加藤楸邨
甘藍の玉つきそめて郭公啼く/飯田蛇笏
甘藍の玉むすばるや蝶くるひ/飯田蛇笏
休暇果おのが頭ほどの玉菜軽し/香西照雄
俳句例:41句目~
裸涼みキャベツ畑は「青海波」/香西照雄
甘藍が敢て結ばぬことをする/相生垣瓜人
菅平しか知らぬ母キャベツ取る/三輪浅茅
若者の汗が肥料やキャベツ巻く/西東三鬼
巻き急ぐ甘藍母として生きむ/石田あき子
累々たる焼跡の甘藍はやあらず/石田波郷
秋冷の嬬恋キャベツ老が漬け/古賀まり子
満載のキャベツ嬬恋村を出る/秋山ふみよ
キャベツ切る音の軽さも新婚か/橋本榮治
甘藍を胸にかゝへて山羊つれて/西島麦南
玉巻きし甘藍の上の怒濤かな/竹内/二峰
甘藍を抱き来るは妻にあらずや/杉山岳陽
甘藍の剥がるゝいのち光りけり/林原耒井
雷の下キャベツ抱きて走り出す/石田波郷
鉄扉開けば甘藍ずらり玉結ぶ/八木三日女
重き白装キャベツ畑に霧を撒く/大高弘達
甘藍の珠くもるなり霧のあと/藤原たかを
ルルド道甘藍畑もかがやけり/下村かよ子
農婦若し抱きし甘藍きしませつ/細谷鳩舎
五月雨や玉菜買ひ去る人暗し/芥川龍之介
俳句例:61句目~
キャベツむき女の部屋は厨なり/八牧美喜子
真二つに切りてキャベツの朝の冷/丹羽啓子
きりきりと甘藍は頭を白め巻く/八木林之介
脱衣場のごとく荒れ甘藍畑了る/田川飛旅子
すこやかな固さに五月玉菜なり/上田五千石
病む犬の好むキャベツを刻みけり/沼尻ふく
大寺を囲みてすべてキャベツ畑/小寺美佐子
霧去つて玉菜れいろうと月に在り/林原耒井
キャベツ切口真白層なし颱風来/小檜山繁子
キャベツ大盛りはしばしに街眠る/伊東達夫
風邪抜けず大脳形のキャベツ剥ぐ/品川鈴子
トタン棲み玉菜の霜葉ギシギシと/香西照雄
包むものばかりの玉菜吾子は亡し/香西照雄
受験子の夕餉のキャベツ大盛りに/館岡沙緻
甘藍もつややかに夏立ちにけり/相生垣瓜人
春昼やキャベツ一枚づつ剥がし/鈴木真砂女
女の胸擁くは甘藍つめたからむ/軽部烏頭子
かゝなべてキャベツ玉巻く春は老ゆ/石塚友二
さみどりのいまはましろくキャベツ剥く/篠原
キャベツに怖る畸形の頭蓋原爆忌/川辺きぬ子
俳句例:81句目~
キャベツの如く頭腐らせ待ちぼうけ/西口昌伸
白鳥の翅もぐごとくキャベツもぐ/能村登四郎
新樹夜冷キャベツも小脇に透る冷え/古沢太穂
甘藍やどこかでもかたつむりうまれ/下村槐太
芽キャベツが転がるまたも点呼する/二村典子
厨初夏きちきち剥がすキャベツの葉/西島麦南
玉菜の芯から微かな鶏鳴広漠たり/中村草田男
朝霧へ常にほのめき捲くキャベツ/加藤知世子
キャベツ買へり団地の妊婦三人来て/草間時彦
キャベツ買う月は今夜もぺちゃんこ/天野素子
父母なる日月甘藍は肥ゆ内側より/磯貝碧蹄館
高原の日近く巻きし大キャベツ/長谷川かな女
貧厨にどかとキャベツを裾ゑにけり/菖蒲あや
ひたすらに日と露を巻く玉菜かな/阿部みどり女
山の子に星もキャベツも蹴れとばかり/篠田悦子
厨楽し泣くキャベツ押しつけて刻む/田川飛旅子
キャベツ抱き行けばうたへる春の川/柴田白葉女
主婦の手提にキャベツと雑誌湿りあふ/津田清子
いてふ日に葉ふるへど玉菜巻かぬなり/林原耒井
河童絶えし村よりキャベツ蹴り上げる/松本勇二