「蛭」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「蛭」について
【表記】蛭
【読み方】ひる
【ローマ字読み】hiru_
子季語・関連季語・傍題・類語など
・血吸蛭(ちすいびる:chisuibiru)
・山蛭(やまびる:yamabiru_)
・馬蛭(うまびる:umabiru)
・扁蛭(ひらびる:hirabiru)
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季節による分類
・「ひ」で始まる夏の季語
・「夏の動物」を表す季語
・「三夏」に分類される季語
月ごとの分類
蛭を含む俳句例
芹売や浮世を急ぐ蛭の足/探吟
蛭泳ぎ濁りと共に流れ去る/篠原
太陽の群をかくして蛭蓆/斎藤玄
人声に蛭の降るなり夏木立/一茶
山の陽は斜に白し蛭蓆/羽場桂子
山深し若葉の空に蛭の降る/几董
連翹や蛭ケ小島は石ばかり/林徹
蛭泳ぐ曇天遠く爆破音/右城暮石
山蛭や高野聖の笠の上/野村喜舟
死のごとき枝川の水蛭蓆/田中光峰
蛭のゐる処ときけど渉る/星野立子
人の世や山は山とて蛭が降る/一茶
白毫に山蛭宥し千手仏/つじ加代子
水口に高野聖と馬蛭と/佐々木六戈
古駅や塀沿ひ曲る蛭の川/飯田蛇笏
雲望む如身じろがず枝蛭/篠崎霞山
雨雲の風おろしくる蛭蓆/石田波郷
蛭のいる處ときけど渉る/星野立子
炎天の下さはやかに蛭泳ぐ/原石鼎
隠沼に花あげてゐし蛭蓆/一宮十鳩
俳句例:21句目~
蛭は美の想像力に匂い立つ/高岡修
月光や山蛭載せる鉈の上/安井浩司
蛭除けの塩携ふや山女釣/野原春醪
蛭蓆より目を返すこと懼る/岸田稚
山蛭の伸びる原生無風林/山口草堂
蛭肥えて芹ふし立ちぬ日向水/暁台
爆竹や蛭が小島の畑の中/角田竹冷
蛭神が吸う六歳の腓かな/永田耕衣
杖の尖洗へば泳ぐ蛭二匹/高浜虚子
縞蛭のラジオ體操第二番/高澤良一
蛭の如流るる水に霜の板/京極杞陽
蛭蓆見るや用なき雨具手に/上村占
溝川や蛭徒らに石を吸ふ/中山白峰
山蛭と半日父や母を待てり/北川邦陽
睡蓮に泳ぎ寄る蛭時澄んで/佐野良太
茅花の穂蛭の血止めに今もすや/綾子
蛭の池濁るは池の娯楽かな/永田耕衣
蛭泳ぐ筋金入のさびしさに/中原道夫
蛭蓆くぐり流れの拡がれり/川上朴史
蛭蓆念珠忘れて来たりけり/関戸靖子
俳句例:41句目~
蛭泳ぐ余呉湖の田螺蜷黒し/右城暮石
鳥羽玉の蛭を磨くや砂の上/尾崎紅葉
六甲の隠り沼にして蛭蓆/粟津松彩子
山の日の俄かにまぶし蛭蓆/瀬戸十字
山蛭の落ちて浜名の勅願寺/浜田小枝
山蛭や鉈目のふかき栂の幹/渡辺立男
川狩やしきりに痒き蛭の口/子規句集
彦山のつむりばかりや蛭蓆/村上麓人
村の裏よどみ漂ふ蛭むしろ/横山仁子
痩蛭の杭に吸ひつき山田哉/田口酔月
水尾立ちてしばしうごくや蛭蓆/辻桃子
蛭蓆咲く辺の霧のややうすれ/和田暖泡
山蛭の撞木の頭あなうとまし/福田蓼汀
苗取りの蛭には熱き血を与へ/津田清子
風明るく蛭に波ある躑躅かな/渡辺水巴
ひる蛭と嬰児に還り行く我は/永田耕衣
妻恋ひの目にびつしりと蛭蓆/村沢夏風
青き蛭縞を延ばしてへろ~と/羽田利七
大旱血を曳く蛭のしづみをり/飯田蛇笏
蛭の降る森逃げてきて昼寝覚/柴田奈美
俳句例:61句目~
蓮池や蛭游ぎいでゝ深き水/河東碧梧桐
蛇口の構造に関する論考蛭泳ぐ/小澤實
山蛭とからみ落つ鳥や木下闇/吉田冬葉
水の面の小暗きところ蛭蓆/尾高青蹊子
枯れせめぐ蛭ケ小島の葱の畝/宮津昭彦
蛭売の声もねむたき一つかな/高浜虚子
浮草を押しながら蛭泳ぎをり/高野素十
磯寄りに蛭田より髪ぬける父/安井浩司
しみじみと手洗ひ居れば蛭来る/中村汀女
雪とけて裏田に蛭を見る日かな/会津八一
眠たうてしばらくねむる蛭蓆/上野まさい
蛭の水面叩くがごとく手を洗ふ/石川桂郎
蛭の池埋め立てられし轍かな/日隈/翠香
蛭の紐蛙の眼よりたれにけり/相生垣秋津
我妹子が蛭の血を拭く蕗葉かな/松瀬青々
蛭の血の垂れひろがりし腓かな/富安風生
山蛭や秘して拝せぬ曼陀羅図/上田五千石
空遠し蛭はひそかにわれを吸ふ/佐野良太
引き寄せし菱につきくる蛭蓆/大野多美三
蛭落ちて足音ひとりのみならず/中岡穀雄
俳句例:81句目~
八十八夜ひとつ水縫ふ金の蛭/百合山羽公
山蛭がべたべた位牌おおすぎる/舘岡誠二
山みちを滑りて蛭に囲まるる/今井杏太郎
ひたひたと山に蛭ゐて恵比寿天/小島千架子
縞蛭に日のうつくしき清水かな/松根東洋城
蛭むしろ田に敷きつめて農婦痛む/鈴木華女
見下して蛭をさげすむことは易し/山口誓子
山蛭落つスティーブ教会森に古り/石原八束
蛭落ちて山雨の冷えの走りけり/鷲谷七菜子
むしけらのはしくれの蛭泳ぎだす/辻田克巳
蛭痩せの見ゆ泥稲の分蘗に/飛鳥田れい無公
われをよぶ父よあかるく蛭と泳ぐ/飯島晴子
ひらひらと蛭すみわたる種井かな/飯田蛇笏
ひらひらとひとりあるきの蛭美人/辻田克巳
山蛭の言い分も聞こうではないか/宇多喜代子
蛭ケ小島手にとるばかり草萌ゆる/佐野青陽人
お玉じやくし蛭を避けたる腹白し/島村元句集
もゝひきを脱げばころりと蛭落ちる/豊田一兆
髪の毛ほどの掏摸消え赤い蛭かたまる/赤尾兜子
蛭降ると聞けばか木蔭寒むさうな/飛鳥田れい無公