「蛾」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「蛾」について
【表記】蛾
【読み方】が
【ローマ字読み】ga
子季語・関連季語・傍題・類語など
・火取蛾(ひとりが:hitoriga)
・火取虫(ひとりむし:hitorimushi)
・火虫(ひむし:himushi)
・燈蛾(とうが:toga)
・火蛾(ほが:hoga)
・燭蛾(しょくが:shokuga)
・夏虫(なつむし:natsumushi_)
・夏の虫(なつのむし:natsunomushi)
・鹿の子蛾(かのこが:kanokoga)
・夜盗蛾(よとうが:yotoga)
・夜蛾(やが:yaga)
・毒蛾(どくが:dokuga)
・天蛾(すずめが:suzumega)
・尺蛾(しゃくとりが:shakutoriga)
・蓑蛾(みのが:minoga)
・木蠹蛾(ぼくとうが:bokutoga)
・枯葉蛾(かれはが:karehaga)
・刺蛾(いらが:iraga)
・斑蛾(まだらが:madaraga)
・蝙蝠蛾(こうもりが:komoriga)
・螟蛾(めいが:meiga)
・葉巻蛾(はまきが:hamakiga)
・夕顔別当(ゆうがおべっとう:yugaobetto)
・背条天蛾(せすじすずめが:sesujisuzumega)
・内雀(うちすずめ:uchisuzume)
・与那国蚕蛾(よなくにさんが:yonakunisanga)
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季節による分類
・「か」で始まる夏の季語
・「夏の動物」を表す季語
・「三夏」に分類される季語
月ごとの分類
蛾を含む俳句例
誘蛾燈一燈農事試験場/京極杞陽
短夜や鏡の下の火取虫/北原白秋
荒神や燈明皿の火取虫/角田竹冷
雀蛾の桃色の胴旋回す/石塚友二
戸隠の火蛾の白毫朱眼かな/風生
すさまじや早瀬の舟に燈蛾/梅室
誘蛾燈灯す夫見ゆ廚窓/西山泊雲
月光に燭爽かや火取虫/飯田蛇笏
子が眠り団欒終る灯蛾の下/林翔
一灯もなき山中の火取虫/檜紀代
火取虫羽音重きは落ちやすし/楸邨
短夜や鏡の面の蛾の卵/東洋城千句
楽迅し翅に眼のある蛾も来り/篠原
諦めも処世の一つ火取虫/伊東白楊
大き蛾は大き円もて燈に迫る/清子
廓町白昼の火蛾影のなき/吉田紫乃
雀蛾も海越えて来ぬ宵祭/岡井省二
君が魂の蛾ぞ美しの籠枕/岡本松浜
覚え悪き学問の子に火取虫/北川草
稿の外にて誘蛾灯涼を呼ぶ/森澄雄
俳句例:21句目~
誘蛾燈遮りたるは人影か/高野素十
藍甕の深さ一丈火取虫/藤田あけ烏
山風に闇な奪られそ火取虫/原石鼎
昆虫の死臭はげしや誘蛾燈/瀧春一
蛾と蜂の一戦二戦夕永き/堀口星眠
火取虫書よむ人の罪深し/正岡子規
小松山越ゆる火の穂に蛾の心/石鼎
定刻打鐘楼青き蛾を孕む/和田悟朗
本山の長き廊下に蛾の躯/関森勝夫
六条の蛾か夕顔に纏はるは/稲岡長
誘蛾燈朝の蛙の一つ鳴く/松藤夏山
母が巻く目醒時計蛾の羽音/草田男
冬の蛾が朝夕べと羽休め/高木晴子
蛾を追ふて兼六園の夕雀/高澤良一
裏返る大蛾に朝の湖はあり/桂信子
冷かに燭蛾とまりぬ膝の上/淡路女
冷房の空気を昼の蛾横切る/菅裸馬
暮れかねて白樺淡き蛾を放つ/星眠
大山祇の放つ金の蛾薪能/野沢節子
蛾殺す女意味なく蟻殺す/辻田克巳
俳句例:41句目~
誘蛾燈山大尽の庭に燃え/萩原麦草
化身めく白蛾の翔ちて溺谷/毛塚静枝
飛ぶ蛾族落日すでに力なし/相馬遷子
浮き沈みつつ流れゆく大蛾あり/龍太
縞奇しき蛾や幻の舞踏会/下村ひろし
誘蛾燈土より寒く灯りけり/萩原麦草
収獲季聖祭壇に蛾があそぶ/大島民郎
誘蛾燈の水を乱すは蛙かや/西山泊雲
烏瓜宵の蛾よりも花淡し/水原秋桜子
楽きけり白蛾はほそき肢に堪ヘ/篠原
青蛾ゐて甘菜の花に南吹く/飯田蛇笏
きれぎれの夢の中へも蛾の翅音/湘子
火蛾群るる捜索隊の投光器/友田直文
けぶりつつ蛾の翅泛ぶ冬泉/堀口星眠
誘蛾灯命の爆ぜる音のして/奥田杏牛
誘蛾灯つゞき夜道は遠きもの/今村青
誘蛾灯すでに末世の星懸る/山口誓子
さしわたる月に呆けぬ誘蛾灯/瀧春一
雀蛾と雀と露の地に撃つも/皆吉爽雨
破れたる翅もたゝむ蛾の踊/前田普羅
俳句例:61句目~
鏡面の貌にとまる蛾旅また旅/桂信子
黄に青に灯蛾染め分けつ発電所/林翔
櫟の蛾昏睡夫は空翔ぶや/石田あき子
夕雨や片すゝけして誘蛾燈/西山泊雲
とまりし蛾蘭の花より来向へり/誓子
夕顔を驚かしたる大蛾かな/豊原青波
夜に入りし白樺雨の誘蛾燈/花谷和子
蜩どき蛾の毒痒く腕に燃え/宮津昭彦
酌婦来る火取虫より汚きが/高濱虚子
はち切つて焔二尺の誘蛾燈/萩原麦草
蛾も青を被て山中の一燈に/野澤節子
遠方より朋有り森の火取虫/高澤良一
遊行忌の羮の碗蛾をとどむ/宮武寒々
結界や梅雨の桔梗と一灯蛾/石塚友二
蛾の羽音しべに残れる烏瓜/橋田憲明
火取虫光輪放ちつつ飛べり/高澤良一
白蛾の目玻璃に紅彩原爆忌/原田孵子
山の蛾がふらす銀粉九月果つ/桂信子
死体室灯して白き灯蛾を見る/瀧春一
轍あと深くかげりぬ誘蛾燈/山口誓子
俳句例:81句目~
蛾の微光おのれ昂り母寝落つ/桂信子
火取虫掴み損ねし灯の貧し/高澤良一
まなざしの四十男や火取虫/永井龍男
山の蛾の速さ駅長無帽で立つ/朔多恭
蛾に暗し昼の/火の根に/人柱/林桂
火取虫湯舟の底の青きこと/如月真菜
蚕の蛾産卵の羽ふるひつつ/長谷川櫂
山繭の蛾を飼ふ籠や夏木宿/吉田冬葉
納棺の仏へ名残り灯虫舞ふ/三浦庚子
火取虫男の夢は瞑るまで/能村登四郎
誘蛾燈闇より黒き吉野川/加藤知世子
薪能火蛾金粉となりにけり/細川加賀
灯蛾羽蟻恋の寮生失せやすし/金子潮
火取虫窓辺の闇は壁のごと/高木晴子
簡単な夫婦にあらず火取虫/永井龍男
幽冥へおつる音あり火取虫/飯田蛇笏
薪能悪霊に火蛾つきまとふ/金子千侍
落葉松の幹に点れる誘蛾燈/品川鈴子
誘蛾燈畔も一寸さがる刻/廣江八重櫻
火蛾落つる燈下に湖の来る/高濱年尾