「夏書」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「夏書」について
【表記】夏書
【読み方】げがき
【ローマ字読み】gegaki
子季語・関連季語・傍題・類語など
・夏経(げきょう:gekyo)
–
季節による分類
・「け」で始まる夏の季語
・「夏の行事」を表す季語
・「三夏」に分類される季語
月ごとの分類
夏書を含む俳句例
日を以て數ふる筆の夏書哉/蕪村
紙の音衣の音して夏書寺/三浦美穂
夏書せん暗き一間の東窓/羅蘇山人
籠鳥の出遊ぶ夏書几かな/内田百間
箒取る汝に我は夏書かな/尾崎迷堂
空腹に板の響く夏書かな/佐藤紅緑
蓮池を前に夏書の机かな/数藤五城
磯振りや筵の上に夏書筆/加藤耕子
机毎香一ちゅうや夏書前/田畑比古
天平の佛の前の夏書かな/若林北窗
武士の袴いみじき夏書かな/嘯/山
朝夕の心経二巻夏書とす/織田澡石
金泥の筆先乾く夏書かな/大谷句佛
山彦を伴ふ窓に夏経かな/高田蝶衣
なつかしき夏書の墨の匂ひかな/蕪村
ふつゝかな我手悔みて夏書かな/士川
硯海に松の塵吹く夏書かな/橋本鶏二
椽側に机ひき出す夏書かな/会津八一
めかしさよ夏書を忍ぶ後ロ向/炭太祇
よ所目には夏書と見ゆる小窓哉/一茶
俳句例:21句目~
煩悩の頭を剃りて夏書かな/佐藤紅緑
百日の夏書の筆を供養かな/菅原師竹
人しらぬ不犯誓ふて夏書かな/召/波
仏堂に柱相へだて夏書かな/高田蝶衣
傾城の夏書やさしや仮の宿/榎本其角
卓ごとに一縷の香や夏書僧/梅山草舎
卯の花を窓にあつめて夏書かな/麦水
白几夏書の僧のかぶさりぬ/大石悦子
物積むも広き机に夏書かな/籾山柑子
心経の蜜多乱れし夏書かな/大屋達治
広縁に杣腹這へる夏書かな/西山泊雲
思ある夏書の墨や肘につく/松瀬青々
暁の山気身に沁む夏書かな/佐藤紅緑
夏書する首から上の心かな/籾山柑子
橘のかたみの衣に夏書せん/高井几董
夕雲を望む夏書の小窓かな/渡辺波空
蓮池にむけて夏書の机かな/河野静雲
青墨の香の芳しき夏書かな/井桁敏子
しのぶ艸顔に墨つく夏書哉/高井几董
弁当縁に杣深く入りぬ夏書寺/野村泊月
俳句例:41句目~
燈心の音に耳すます夏書かな/高田蝶衣
俗身にありて夏書の意を通す/古市絵未
屋根瓦こけづく里の夏書かな/室生犀星
仏弟子としての讃仏夏書かな/西浦綾子
清浄と夏書の一間塵もなし/河東碧梧桐
一穂の灯たやさずよ夏書の間/三輪未央
夏書して乏しきものを養へり/渡辺トク
松陰の遺硯いかしき夏書院/下村ひろし
訪ひ寄れば夏書の主の晝寝哉/会津八一
諤諤として茲に夏書の四千言/会津八一
百日の帯も解かざる夏書かな/松下紫人
雑炊の淡さ馴れ来し夏書かな/志田素琴
雨樋の鳴りとよもせる夏書かな/飴山實
常瑜伽と夏書の心現はれぬ/阿波野青畝
静かなる夏書や水の流動感/加藤知世子
颱風に積みし夏書が崩れだす/萩原麦草
客迎へ送りてうかと夏経ぬる/石塚友二
白蓮を活けたる下の夏書かな/赤木格堂
老アイヌ夏経し厚司うすぎれたり/林翔
正座すや夏書の僧の真向ひに/山本美代子
俳句例:61句目~
浴衣干す太き竿ある夏書かな/波多野爽波
癒ゆるべし夏書の写経賜はりし/加藤岳雄
知らぬ字の大きになりし夏書かな/大/魯
磨りためし墨に塵なき夏書かな/高浜虚子
長鋒をつかひこなして夏書かな/富安嵐生
荒塩を撒きて夏書の反故を燃す/小野静枝
まづ以てよく墨を磨る夏書かな/中村一志
一人来て夏書のあうら高重ね/赤松ケイ子
借りて住む寺に病後の夏書かな/羅蘇山人
夏書いま窓の杉の穂きりきりと/皆吉爽雨
金泥の淡きもしるき夏書かな/加藤三七子
夏書して内侍おはすや御簾の内/羅蘇山人
夏書して小窓あくれば田の景色/羅蘇山人
雨にして夏書に暮れし一日かな/羅蘇山人
夏書して己を匡すよすがとす/伴/縷紅女
夏書して舞の名妓でありしかな/稲畑汀子
夏書すとて一筆しめし参らする/夏目漱石
夏書すべく低き机をえらびけり/羅蘇山人
さまざまの女犯戒ある夏経かな/三星山彦
大御心に帰一のこゝろ夏経また/河野静雲
俳句例:81句目~
夏書する老の筆先たしかなり/藤原日佐子
納経所無人の扉反り麦の秋/長谷川かな女
母の忌を筆のはじめの夏経かな/木多静江
晴れやらぬ心に夏書はかどりぬ/宇野幸子
子が来ると夏書の筆を措きにけり/関戸靖子
夏書の筆措けば乾きて背くなり/橋本多佳子
蘆雪見て気晩おばえし夏書かな/阿波野青畝
虚子百句おろそかならず夏書かな/辻口静夫
洟かんでしまふ小僧の夏書かな/阿波野青畝
軒ふかくあきつたゞよふ夏書かな/梶井枯骨
夏書僧下駄つつかけて現れぬ/坊城としあつ
一ちゅうの香に始まる夏書かな/吉村ひさ志
夏書して絶えなんとする香をつぐ/羅蘇山人
墨の香にちちははのゐる夏書かな/梶浦さだ
心経に無の字の多き夏書かな/松田/トシ子
吐く息もおろそかならず夏書かな/谷口和子
南無南無と口ずさみつつ夏書かな/土山紫牛
客を謝すほどにても無き夏書かな/小澤碧童
まつすぐに一を引くなる夏書かな/高野素十
子等は留守夏書で果つる日曜日/中越津代子