「繭」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「繭」について
【表記】繭
【読み方】まゆ
【ローマ字読み】mayu
子季語・関連季語・傍題・類語など
・繭掻(まゆかき:mayukaki)
・繭買(まゆかい:mayukai)
・生繭(なままゆ:namamayu)
・繭干す(まゆほす:mayuhosu)
・白繭(しろまゆ:shiromayu)
・黄繭(きまゆ:kimayu)
・玉繭(たままゆ:tamamayu)
・新繭(しんまゆ:shimmayu)
・屑繭(くずまゆ:kuzumayu)
・繭籠(まゆかご:mayukago)
・繭問屋(まゆどんや:mayudonya)
・繭市(まゆいち:mayuichi)
・繭相場(まゆそうば:mayusoba)
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季節による分類
・「ま」で始まる夏の季語
・「夏の生活」を表す季語
・「初夏」に分類される季語
月ごとの分類
繭を含む俳句例
両側は繭売る家や夏柳/孤笠
繭嵩の筵の間に居/小澤碧童
真白に繭干す庭や雲の嶺/奚
白妙の繭はも軽し重しとも/杜藻
白繭にこもる踊の酣は/宮坂静生
繭を掻く町の外れに温泉寺/茅舎
麻糸も繭も結願天狗堂/西本一都
繭作る音充満し飯を食ふ/内野修
黒檀の机に對す繭の鉢/寺田寅彦
葛の風一握の繭巌に干す/藤田湘子
繭莚たたみ祭の人とほす/安養白翠
漂へる繭雲いくつ神の旅/吉田速水
薄々と繭を営む毛虫かな/高浜虚子
機糸に屑繭引くや釜始め/倉田萩郎
転寝や繭に埋まる壁の中/古舘曹人
屑繭に蠅たむろしぬ花葵/飯田蛇笏
屑繭を煮るや燕も二番雛/石塚友二
白繭のひかり二時打つ山の寺/龍太
朝日射し繭をねむらす大庇/桂信子
桑運ぶ繭百貫が一人手間/荒井正隆
俳句例:21句目~
繭の中うすもゝ色の骨一つ/森敏子
繭蔵の屏風隔てて婚衣裳/根岸善雄
簾透く灯の繭ごもる祭宿/鈴木貞雄
繭の香や乗換急ぐ北の駅/菅沼彦二
一筋の糸引出すや繭躍る/澤木欣一
秩父夜祭供物の繭の大袋/飯島晴子
繭の蝶放つ家あり星月夜/松瀬青々
繭買に小説本を返しけり/高田蝶衣
繭運ぶ雲の家族ら峠越え/武田和郎
花火爆ぜ天体繭のごときもの/原裕
繭を煮る臭ひや夜の登山口/笠原古畦
楸邨の眉は繭置く天の川/小檜山繁子
うす繭の中ささやきを返しくる/静塔
繭ごもる音のたのしき夕餉かな/史朗
お供への繭の蝶出し祠かな/岡崎芋村
白繭のいのちの韻を妣の国/白澤良子
繭倉の跡の立て札草は実に/守屋房子
飛騨蒼し花栗かをり繭匂ふ/前田普羅
新繭や大きな籠へ瀧落し/廣江八重櫻
この街に残る繭の香白木槿/木村蕪城
俳句例:41句目~
首振つて馬の機嫌や繭車/松原地蔵尊
繭かける山蚕に円周率無限/鈴木正治
夕刊がくるペン皿に繭一つ/菅原鬨也
一本の指に躍るや十の繭/角田よし子
山かげの歩み正しく繭ごもり/上村占
繭を煮て火が美しき北の国/岡田芝兆
繭あげて翁まなざし雨ざらし/松澤昭
桑の実の一枝を供へ繭供養/熊田鹿石
流木を焚けば熾んに繭祭/神尾久美子
山の奥から繭負うて来た/種田山頭火
繭やぶる虫の白昼博物都市/伊丹公子
繭の蝶すつる家あり薄月夜/松瀬青々
繭煮ゆる夜の匂いを忘れず/橋本夢道
白繭や母を思へば父なくて/河野邦子
繭白し蚕飼疲れの母午睡/瀧澤伊代次
琴糸に白繭の冷こもるなり/吉野義子
岩山に張りつく農家繭白し/相馬遷子
繭買のはりこむ寄附や夏祭/藤原如水
繭買の鳥打帽子褪せにけり/志摩陽子
簪をかさと落しぬ繭の中/若山野葡萄
俳句例:61句目~
繭買やおとなひかざす古扇/飯田蛇笏
仏壇も他宗かぶれや繭の主/大谷句佛
神饌に山鳥/箒/薪と繭/伊藤いと子
行水の繭売りし夜のしづかさに/汀女
前に笊左右にも笊繭を選る/加藤一牛
胎内のものの眠れる繭を掻く/石嶌岳
荷の繭の糸口は息ころすなり/渋谷道
悉く繭となりたる静けさよ/高野素十
夏の月蚕は繭にかくれけり/渡辺水巴
夏痩もせずに繭煮る女かな/尾崎紅葉
夏草や繭を作りて死ぬる蟲/村上鬼城
箕になだれ干繭の山美しく/江口竹亭
藪入の星あふれたり繭の国/三嶋隆英
天井に擦りし痕あり繭団子/藺草慶子
研白といふ美しき繭出荷/石橋/郷水
蓑笠に栗の花つけ繭売りに/前田普羅
天蚕の繭のみどりを機の糸/中川芳子
奉納の繭も慈姑も新嘗祭/三谷いちろ
父の言つめたき夜を繭光る/大井雅人
おのがじし影うすうすと繭ごもる/鶏二
俳句例:81句目~
繭出荷して疲れたる家の闇/大岳水一路
繭倉のほとり風呼ぶ花大根/鈴木蚊都夫
繭倉のうしろの山の居待月/町田しげき
さびさびと千尋の息す繭の中/平野冴子
さみだれや焙炉にかける繭の臭/ぶん村
そのむかし繭の金より授業料/有賀辰見
繭を煮る棒の類ひのもの多く/星野紗一
永からぬ野菊日和に繭を干す/堀口星眠
沸々と繭の煮えゐる真綿ひく/橋爪靖人
繭を干す裏も表も無き会話/猪狩セイジ
白繭の翳れば山河はたと暮れ/井澤正江
やや強き風が吹くなり今年繭/綾部仁喜
よく鍋に躍る白繭糸を引く/佐山滄々子
繭掻の茶話にまじりて目しひかな/鬼城
繭売つて生木に雫ふゆるなり/長谷川双
繭了へて山蚕ののこす落し文/澤田緑生
万といふ生命静かに繭こもる/三觜玲子
湯びたしの繭から糸を夏の月/小林京子
値段立つ繭天皇の祭かな/菅原師竹句集
光陰のながれてをりぬ繭の中/鈴木貞雄