「蚊帳」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「蚊帳」について
【表記】蚊帳
【読み方】かや/かちょう
【ローマ字読み】kaya
子季語・関連季語・傍題・類語など
・蚊袋(かぶくろ:kabukuro)
・古蚊帳(ふるがや:furugaya)
・麻蚊帳(あさがや:asagaya)
・木綿蚊帳(もめんがや:momengaya)
・青蚊帳(あおがや:aogaya)
・白蚊帳(しろかや:shirokaya)
・蚊帳の手(かやのて:kayanote)
・初蚊帳(はつかや:hatsukaya)
・蚊帳の吊り初め(かやのつりはじめ:kayanotsurihajime)
・蚊帳初め(かやはじめ:kayahajime)
・三隅蚊帳(みすみがや:misumigaya)
・近江蚊帳(おうみがや:omigaya)
・奈良蚊帳(ならがや:naragaya)
・蚊帳売(かやうり:kayauri)
・枕蚊帳(まくらがや:makuragaya)
・母衣蚊帳(ほろがや:horogaya)
・面蚊帳(めんがや:mengaya)
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季節による分類
・「か」で始まる夏の季語
・「夏の生活」を表す季語
・「三夏」に分類される季語
月ごとの分類
蚊帳を含む俳句例
暁の寝姿さむし九月蚊帳/暁台
濾落し朝かほ清し蚊帳の外/几董
古蚊帳に安全燈を枕元/清原枴童
蚊帳を出て物争へる翁かな/太魯
蚊帳の外に片足痒き寐覚哉/久宝
橘や蚊帳に碁を打つ老二人/田福
夕顔や早く蚊帳つる京の家/蕪村
蚊帳にある頭の影が壁に影す/篠原
蚊帳に憂き病も朝夕かな/会津八一
片隅に蚊帳の紅紐海女の昼/桂信子
侘しさの蚊帳に放つ螢哉/寺田寅彦
蚊帳の中の頭歩ける丸さかな/篠原
島山の如青蚊帳に襞のあり/上野泰
尼寺やよき蚊帳たるる宵月夜/蕪村
蚊帳越しの暁の月や海半/羅蘇山人
船宿や蚊帳に罵る夜明方/角田竹冷
蚊帳を出て又障子あり夏の月/丈草
幌蚊帳と灯る電球樹隠れに/三谷昭
人寝ねて蛍飛ぶなり蚊帳の中/子規
青山河蚊帳売人が倒れつつ/安井浩司
俳句例:21句目~
蚊帳越しに梁太き雨夜かな/西山泊雲
霍乱のさめたる父や蚊帳の中/原石鼎
芝に寝ば此風呂敷や枕蚊帳/服部嵐雪
ある筈もなき螢火の蚊帳の中/斎藤玄
蚊帳吊るや雨の軒なる釣忍/島田青峰
蚊帳の風表はしめて縁の人/高濱年尾
貧しさの蚊帳の設も候はず/寺田寅彦
蚊帳吊つて一つ船窓真青なり/中條明
蚊帳青き裏町寺のひと間借/桂樟蹊子
ほし合や寺は坊主の蚊帳隣/内藤丈草
昼蚊帳に雨ふる背戸の立葵/石原舟月
晩婚や蚊帳の縁の紅くして/山口誓子
蚊帳に寝て母在る思ひ風の音/杉本寛
玄関の大きくくらく蚊帳問屋/小澤實
指しやぶる音すき~と白き蚊帳/篠原
光らざるときの螢の蚊帳のぼる/篠原
暁や白帆過ぎ行く蚊帳の外/正岡子規
月のさす蚊帳の一側そそり立つ/篠原
病家族二つの蚊帳を高低に/石田波郷
涼しさや蚊帳の中より和歌の浦/漱石
俳句例:41句目~
蚊帳の月美人の膝を閑却す/尾崎紅葉
白蚊帳の丈山中に目を覚ます/藤井亘
古蚊帳の古さに戻り明けはなる/林翔
合宿に蚊帳より青き山迫る/那須乙郎
枕蚊帳に通ふ風あり針仕事/島田青峰
病人の蚊帳の高きを喜べる/西村雪尾
蚊帳取つて天井高く寝る夜かな/篠原
蒼海の落日とゞく蚊帳かな/杉田久女
駅柵に沿ふ窓昼の蚊帳たるむ/桂信子
風荒き夜の青蚊帳の中に入る/桂信子
青蚊帳の繃帯の足白帆の形/羽部洞然
母の蚊帳豊年の月さし渡り/小林康治
青蚊帳の男や寝ても躍る形/西東三鬼
白き紗に螢を盛るや蚊帳の上/寺田寅彦
蚊帳出づる妻と知りつゝ倖か/杉山岳陽
蚊帳は子のねむり操り帆前船/斉藤夏風
蚊帳はづし友を醫師として迎ふ/及川貞
蚊帳裾を色はみ出たる夏布団/西山泊雲
怒り妻蚊帳に大波立てて出し/櫻井土音
恙ある家人と寝たり蚊帳の果/小澤碧童
俳句例:61句目~
ふる蚊帳の中のあまりに月清し/原石鼎
まつくらな蚊帳の中より父の声/長田等
蚊帳の子に吹く朝風や魂祭/大谷碧雲居
鼠入つて四隅を落す蚊帳かな/正岡子規
見て居りし蚊帳の面を讃嘆す/永田耕衣
新涼の家々蚊帳をつりにけり/増田龍雨
日々に明けて悔なし蚊帳の中/鈴木花蓑
池水の涼しさうつる蚊帳かな/増田龍雨
瘧落てあさがほ清し蚊帳の外/高井几董
わが家の蚊帳に一夜をしまれよ/上村占
あたふたと蚊帳に潜りて嗚呼楽や/翠哉
蚊帳の中の私にまで月の明るく/山頭火
明方の蚊帳風しむは喜雨いたる/及川貞
明易やをさなのごとく蚊帳の中/原石鼎
三十年前に青蚊帳畳み了えき/池田澄子
野に伏せば蚊帳つり草も頼むべし/一茶
いとほしき児の寐汗や枕蚊帳/松下紫人
夜昼や夜は蚊帳のみ頼まるゝ/石塚友二
五尺の子蚊帳の月光抱え寝し/平畑静塔
昼蚊帳に乞食と見れば惟然坊/正岡子規
俳句例:81句目~
癩院の青蚊帳の夜は切なけれ/平畑静塔
夜鴉に空仰がるゝ蚊帳のもと/富田木歩
夢おぼろ寝あけば坐る昼の蚊帳/上村占
母衣蚊帳に蟻匍ふことも憤る/山口誓子
立膝し蚊帳に入り来る女かな/田中冬二
砂川の松見ゆる宿や蚊帳暑し/吉田冬葉
天井の金比羅札や蚊帳名残り/内田百間
天繭を蚊帳かけ守る峡の人/森久保美子
曲屋に青蚊帳吊りて教師なり/岸/のふ
蚊帳に寝て川や亢ぶる音の中/石塚友二
白蚊帳の雑草園に寝ねしこと/田村了咲
奥山に売られて古りし蚊帳かな/原石鼎
初蚊帳のしみ~青き逢瀬かな/日野草城
燈を消せば蚊帳を空気の流れそむ/篠原
朝涼の蚊帳はづさるゝ湖畔宿/高濱年尾
蚊帳釣草逞うなる四月かな/大須賀乙字
ごほ~と咳きて庵主蚊帳より/清原枴童
熱低く暁の豪雨を蚊帳にきく/中尾白雨
さす月もあな冷じの九月蚊帳/高井几董
蚊帳つるや雨一日の西明り/金尾梅の門