「夏炉」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「夏炉」について
【表記】夏炉
【読み方】なつろ
【ローマ字読み】natsuro
子季語・関連季語・傍題・類語など
・夏の炉(なつのろ:natsunoro)
・夏火鉢(なつひばち:natsuhibachi)
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季節による分類
・「な」で始まる夏の季語
・「夏の生活」を表す季語
・「三夏」に分類される季語
月ごとの分類
夏炉を含む俳句例
夏炉焚く気仙沼町町/黒田杏子
大夏炉銀鱗荘の主たり/高濱年尾
夏炉焚く煙の紫遊ばせて/羽部洞然
夏炉燃ゆ煙清浄火清浄/大橋桜坡子
夏炉焚く島の女の腕太く/田村恵子
夏爐焚き公教聖歌の樂流る/及川貞
旅人に脇本陣の夏炉かな/加藤斐子
夏炉焚く布一枚の懺悔室/藺草慶子
夏火鉢膝頭より大いなり/前田普羅
大夏爐樺太航路今は絶え/橋本鶏二
山の夜の炎衰へゆく夏炉/高木晴子
月山の頂にある夏炉かな/岸本尚毅
少年は夏炉に寄らず山の月/大串章
戸隠や夏炉に神皇正統記/西本一都
裏山の竹炭を継ぐ大夏炉/黒田杏子
夏爐の火一つ移しぬ莨盆/橋本鶏二
冷酒を山賊飲みに大夏炉/遠藤梧逸
東京都檜原村の夏炉かな/橋本榮治
夏の炉に傾きをりて何を待つ/上村占
大鍋を掛け円覚寺夏炉かな/皆川白陀
俳句例:21句目~
木曽谷の夏炉に坐る無口な奴/穴井太
頬杖や唐子の遊ぶ夏火鉢/大木あまり
家中の柱の見ゆる夏炉かな/中岡毅雄
飢ゑし世を昔語りに夏炉守/太田光子
山国の夏炉に落居ず檐の雨/原田種茅
月山の禰宜若かりき夏爐かな/小島健
月いまは山々渡り夏炉燃ゆ/大野林火
膠かけ鳩笛つくる夏炉かな/西本一都
急流のときに巌消す夏炉かな/中田剛
熊の皮敷きて父の座大夏炉/浜朝風子
大夏爐酒のめといふ酒を飲む/上村占
六十里越えの半ばの夏炉かな/小島健
旅人を仏間に招く夏炉かな/岩崎照子
考へぬことも哲学夏炉燃ゆ/橋本榮治
泊る客なくて夏炉に宿の者/北野民夫
合掌の屋根裏見ゆる大夏炉/原田青児
大江山近々とある夏炉かな/山田弘子
白樺を焚いて豊な夏炉かな/久米正雄
夏炉して翌檜のこと檜のこと/辻桃子
峰入の仕度ととのふ夏炉宿/恒川ひさを
俳句例:41句目~
杉山の若木ばかりや夏火鉢/大木あまり
ありがたや夏炉を前の茶碗酒/石川桂郎
夏炉辺の我に唱へと爪弾くよ/西村和子
山夜明掻けば夏炉に種火あり/岡田日郎
夏炉辺や当主素十の話など/つじ加代子
ぼのくぼに松風あそぶ夏炉かな/飴山實
山刀研がれて置かる夏炉の辺/田中英子
もてなしの夏炉走りの唐黍も/山口草堂
夏爐焚くまづ篁の揺れを見て/斎藤梅子
夏爐燃え仏の華にさるをがせ/木村蕪城
一炉焚き一炉焚かれぬ大夏炉/江本如山
二タ夏炉ありて涼しき大藁屋/西本一都
大夏爐水はしる樋を梁に吊り/橋本鶏二
別るゝ日夏炉切々焚きくるゝ/星野立子
夏炉なき冷や珈琲匂ひ来る/殿村莵絲子
夏炉に向き机が遺る詩が遺る/品川鈴子
山ホテル夏炉三階まで匂ふ/今井千鶴子
夏炉焚きくれ麦屋節唄ひくれ/大橋宵火
小海線野辺山駅の夏炉かな/鈴木しげを
夏炉焚くここ地の果の岬の宿/稲畑汀子
俳句例:61句目~
夏炉焚く佛法僧のとほき夜は/黒田杏子
夏炉焚く匂ひの中の旅まくら/徳重怜子
夏炉燃え仏の華にさるをがせ/木村蕪城
夏炉燃え草踏む音は父子山羊/友岡子郷
夏炉燃ゆ山も鳥音も霧がくれ/林原耒井
夏炉置く上時国家屋敷守る/松村小夜子
夏炉辺に電灯ひきし法事かな/杉田久女
旅の我夏炉を守れるかのごとく/森田峠
曲家の夏炉の燠に膝をつき/深見けん二
木曽山中松風をきく夏爐かな/加藤耕子
漆店こまかに掻きし夏炉かな/伊藤敬子
瀧びらき即ち夏爐びらきかな/黒田杏子
牧番屋果して夏炉燃えてゐし/高野火郷
行のごと夏爐が小さき尼の膝/古舘曹人
白鷺は夏炉に寄りし母のごと/栗林千津
眦に気になつてゐる夏炉かな/岡井省二
禅堂の粥かかりゐる夏炉かな/橋本鶏二
胃の荒れや灰に筋ある大夏炉/吉田紫乃
落人の祖谷の長とし夏炉守る/村上杏史
落石の話をしをる夏炉かな/藤田あけ烏
俳句例:81句目~
夏の炉の灰美しく用ゐけり/楠目橙黄子
見えゐしは屈葬の母夏炉の火/栗林千津
訪なふて雨の十勝の夏爐かな/松村蒼石
賽者等の焚くにまかせて大夏炉/矢津羨
鉄瓶の湯さめぬ程に夏炉に火/大森積翠
魂のはやここになき夏炉かな/長谷川櫂
山徐々に消えてつめたき夏火鉢/中田剛
岩焼き夏炉よごれてゐたりけり/水谷芳子
湯呑ひとつ濯ぐ音ある夏炉かな/依光陽子
夏炉焚き馬臭も塵もなかりけり/堀口星眠
夏炉焚き死に遅れしや癩われは/村越化石
低く来る蜂おそろしき夏炉かな/岸本尚毅
伊勢藤の混んで来たりし夏炉かな/岸田稚
手斧彫り馬屋を茶室の夏炉かな/石川桂郎
屋根の上に人声のする夏炉かな/高野素十
やや動く耳持ち老の夏炉焚く/鷲谷七菜子
小屋隅に私用の小闇夏炉もあり/香西照雄
夏炉焚きこきりこ節も唄ひくれ/吉本渚男
石置いて火を沈めある夏炉かな/橋本鶏二
神棚の下は戸主の座夏炉燃ゆ/吉川ハマ子