「単衣」を使用した俳句についてまとめてみました。
季語「単衣」について
【表記】単衣
【読み方】ひとえ
【ローマ字読み】hitoe
子季語・関連季語・傍題・類語など
–
季節による分類
・「ひ」で始まる夏の季語
・「夏の生活」を表す季語
・「三夏」に分類される季語
月ごとの分類
単衣を含む俳句例
地下鉄の青きシートや単物/汀女
碁敵や単衣羽織の夕姿/尾崎紅葉
わが背の単衣とほしぬ樫の露/槐太
中空の鴉見送る単衣かな/岩田昌寿
単物飄然として郷を出づ/子規句集
灯吹く単衣の肩のほそりかな/種茅
絨緞に妻が引き出す単物/古舘曹人
夏羽織白き単衣を愛すかな/内藤鳴雪
太棹の語りの人の単衣かな/安原楢子
襟もとの白すこし見え単衣もの/実花
忘れものせし如軽し単衣著て/八木春
秋めくや素肌の単衣朝薄し/石塚友二
退院も近く単衣を送り来し/高濱年尾
哀歓はふたつ袂に単衣着る/井沢正江
女人高野単衣の妻を先に立て/長倉閑山
単衣着て松の木の間を出る心/島田青峰
父知らぬわが長身の単衣もの/松村蒼石
風もなく壁に掛けたる単衣哉/尾崎紅葉
焼酎の濃度をとこの黒単衣/柴田白葉女
水溜りあればひらひら単衣/中尾寿美子
俳句例:21句目~
娘の家に物差はなし単衣縫ふ/下村梅子
風はらむ単衣の袖の軽さかな/山本幸代
旅いつも来向へる中単衣着る/皆吉爽雨
巌門とひつぱり餠と単衣の子/神尾季羊
単衣きてまだ若妻や鶴を折る/星野立子
薄単衣やうやく不順抜け切りて/及川貞
耳につく虻の声のみ単衣裁つ/藤木清子
籏ことの得意の単衣藤大胆/殿村莵絲子
干し衣は紺の単衣のよく乾き/高浜虚子
母の忌や母の形見の単衣着て/森田雪子
単衣着て妻恋坂の影踏みぬ/徳田千鶴子
家にゐて何もせずゐる単衣かな/森澄雄
魂去りし父の単衣のたたまるる/堤高嶺
着やせする黒といふ色単物/山下寿美子
眼にしみし去年の単衣を又著たる/虚子
とりいでて小柄の母の単衣かな/石原舟月
ひろげ着る単衣の陵の走り消ゆ/亀井糸游
ぴんと張る両の袖山単衣着る/小原うめ女
休み海女汐着単衣の下に着て/猿橋統流子
単衣着てたゞの一個のわれなりし/芒角星
俳句例:41句目~
単衣着て常の路地抜け店通ひ/鈴木真砂女
単衣着て身めぐり水の湧く音す/稲垣黄雨
単衣着て風よろこべば風まとふ/中村汀女
愛憎のかくて薄るる単衣かな/鈴木真砂女
普段着の水母の単衣よかりけり/高澤良一
燈火吹く単衣の肩のほそりかな/原田種茅
墓洗ふ父の知らざる単衣着て/渡邊千枝子
肩より裾へ単衣の縞の走るよし/高浜年尾
背ふくれて単衣新しき媼かな/島村元句集
乳あらはに女房の単衣襟浅き/河東碧梧桐
単衣着の襟の青滋にこゝろあり/飯田蛇笏
いと軽げ折目正しき単衣召し/藤田つや子
かはたれのひかりのさむき単衣かな/有風
曾て見ざりし寛げる君や単衣物/楠目橙黄子
看護婦をやめるときめし単衣縫ふ/増子悦子
単衣着て晶子をわかき死とおもふ/矢島房利
松籟に単衣の衿をかき合はす/阿部みどり女
単衣の膝児が摘みて来る花溜る/上野さち子
単衣着て葉ずれの音の帯を巻く/能村登四郎
単衣着の多佳子を憶ひ悼みけり/下村ひろし
俳句例:61句目~
いくさ遠し遠しと思へ単衣縫ふ/山田みづえ
海女単衣緋の細帯を垂らし解く/猿橋統流子
龍之介かたみとありし単衣かな/車谷弘佗助
単衣著てみずら太子に近くゐる/加藤三七子
涼しさや帯も単衣も貰ひもの/竹下しづの女
単衣着て足に夕日のさしゐたり/橋本多佳子
単衣着て老いじと歩む背は曲げず/鈴木真砂女
単衣きりりと泣かぬ女と見せ通す/鷲谷七菜子
血の音のしづまるを待つ単衣着て/能村登四郎
単衣きてただの一個のわれなりし/細木芒角星
単衣着て若く読みにし書をひらく/能村登四郎
手紙書くひまのできたる単衣かな/久保田万太郎
たたみをる単衣の皺に夏ありや/飛鳥田れい無公
単衣きて軒あさき灯をむさぼるや/飛鳥田れい無公
単衣きて樹がはつきりしてはつきり苦境/中塚一碧樓